法務・安全保障課題を評価・解釈・展開予測するプロセスにおいて、クライアントは、委任する弁護士の取扱いについて、決めておかなければなりません。
すなわち、弁護士を、
1)パートナーではなく、サプライヤーとして、
「法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測」について
共有しない状態で、展開作戦にふさわしい予算環境を提供しないまま、機械的・事務的に対処させるのか、
2)サプライヤーではなく、報酬リスクを負担するパートナーとして、
「法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測」について
共有する状態で、展開作戦にふさわしい予算環境を提供し、正常な環境と士気を以て戦略的に対処させるのか、
ということです。
弁護士としては、(1)なのか(2)なのか確認できるまでは受任を差し控えることとなるでしょう。
弁護士の取扱いを決めることに慎重になるあまり、時間を費消しては、貴重な機会を逃しかねませんので、注意が必要です。
さて、受任した弁護士は、与えられた前提で、クライアントの指示に従い、その範囲と限度において最善を尽くします。
ところで、
「弁護士として、(A)という悲観想定での展開予測を行ったものの、クライアントが、(B)という楽観想定を選択し弁護士に(B)を前提とした課題対処を求めた場合です。
そして、弁護士の想定(A)が現実化し、(B)が悪手となって、損害が重篤化した場合、たとえ弁護士として課題対処に関わったとはいえ、もともと、間違った想定が原因で発生した災いであり、責任は、楽観想定を選択したクライアントに帰すことになります。
したがって、法律上はもちろんのこと、事実上も道義上も、弁護士としては責任を負担しかねることとなります。この点は理の当然であることを、クライアントは了承ておかなければなりません。
というように、見ている風景が違うと、作戦計画も、作戦士気も、動員予算も、まったく違ってきます。
もちろん、(1)は(1)として構いません。
弁護士を(1)のサプライヤーとして委任するのか、(2)のパートナーとして委任するのかは、クライアントが決めることですし、弁護士は与えられた前提で最善を尽くすだけです。
ただ、弁護士として困るのは、展開予測において、(A)という弁護士の悲観想定と(B)というクライアントの楽観想定、予測がズレる場合です。
同床異夢だと、不幸な事故が起きます。
クライアントは、弁護士からの報連相(報告、連絡ないし相談)をしっかり、きっちり読んで理解しなければなりませんし、わからなければ、わからないと言う勇気も必要です。
特に有事の際は、事件や事案のフェーズは刻一刻と変化し、気づけば、
「こんなはずではなかったのに」
と後悔するクライアントも少なくありません。
満足する結果を享受するクライアントの多くは、弁護士を(2)のパートナーとして処遇し、弁護士としっかり連絡を取り合い、すべてにおいて、時間を費消させすぎずに(A)という悲観想定をしつつ決断し、合理的試行錯誤(PDCA)を遂行しています。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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