01824_定年後の従業員との雇用関係解消

定年後の従業員を再雇用することなく、退職勧奨によって雇用関係解消をする場合、承諾書をつかうという手法があります。

その効果は大きいですが、つかいかたを誤ると、紛議の元となりますので、内容はもとより、その扱いには慎重を要します。

すなわち、従業員より承諾書を徴求できると、潜在的紛議は消失したものと評価されますが、承諾書を徴収できないとなると、潜在的紛議が残るということを意味します。

無論、承諾書を徴求できたとしても、その後、従業員が翻意して、錯誤で取り消すなどとして、紛争になる可能性はなくはありませんが、その場合でも、承諾書が有力な証拠になると推測されますので、企業側は有利にことを運べると推察します。

さて、受諾の見通しが不透明である場合、当該従業員に承諾書を送り、相手方からの自発的サインバックを待つ、というのは、良い方策とはいえません。

理由としては、

1 そもそも、相手方において、たとえ雇用関係解消に同意していても、サインするメリットがなく、自発的な行動を期待することが困難

2 加えて、相手方において、もともと、雇用関係解消に不同意であり、争う気であれば、退職勧奨があったことの証拠が相手の手許に残り、不利に援用される危険がある(「もともと会社は労働者を嫌悪・忌避し、退職させたがっていたのであって、縷縷説明する理由も、すべておざなりのものであって、更新拒絶の濫用である」といった主張を展開し、その際の証拠として利用される危険がある)

というものです。

したがって、承諾書を徴求する際は、

1 対面で

2 その場で徴求を試みる(できれば、現金で、承諾料代わりの退職給付を受け取らせて)

3 だめなら、承諾書を撤収する(「退職勧奨」の証拠を隠滅し、後日の紛争の際に、「会社は労働者を嫌悪・忌避し、退職させたがっていた」などと援用されないようにする)

ということが推奨されます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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