01823_理解しているつもりでも、全く成立していない「弁護士との対話」

クライアントが弁護士に不満を募らせることがあります。

弁護士が対応しているにも関わらず、未だ解決していない、あるいは、解決に時間がかかりすぎている、と感じるような場合、弁護士の見ている風景と、クライアントが見ている風景が違うことがあります。

たとえば、弁護士が年単位で時間がかかるとみる一方で、数か月以内には解決するだろう、と考えるクライアントもいます。

たとえば、流れが変わったから作戦変更を唱える弁護士、他方で、何も変わりがないからと作戦続行を命令するクライアントもいます。

もっともやっかいなのが、弁護士の目的と、クライアントの目的がずれている場合です。

そもそも、当然の理として、何か問題を解決するためには、多くの段階を踏まなければなりません。

そして、それぞれの段階には、それぞれ目的があります。

弁護士はクライアントの課題を俯瞰しつつ、段階一つひとつを打破するための方法論をいろいろと披瀝しますが、クライアントには、弁護士さえ入れば一気呵成に解決できると信じて疑わない方が少なくありません。

弁護士がクライアントに披瀝するのは、まずは、圧力の契機、強制の契機となるようなものです。

クライアントに依頼されれば、その
「圧力の契機」なるもの
を実践していきます。

そこで、懸念されるのは、
「圧力の契機」の検討依頼
が、いつのまにか、
「絶対的に圧力として作用することを保証せよ」
という話にすりかわり、
圧力が機能しなかった場合、
「約束に違反した」
などと詰問されるような事態です。

さらに、
「圧力などではない。これは聖戦だ。絶対負けられない戦いである。負けたら許さない」
とエスカレートする場合です。

弁護士のいう方法論は、あくまで、目的に近づくための方法論として、合理的に考えられる
「圧力の『契機』」
であり、これがどの程度作用するかは、やってみなければわかりません。

それは、クライアントの望む確実な勝訴・勝利ではない、ということなのです。

このようなことを、クライアントにわかりやすく噛み砕いて説明する弁護士もいれば、ふわりとオブラートに包むようにして話す弁護士もいます。

たとえ話で説明する弁護士もいれば、判例を並べみせる弁護士もいます。

いずれにせよ、弁護士との対話を重ねなければ、望む目的に近づけないことは想像に難くありません。

不満を募らせるよりも、対話を重ねましょう。

そういう意味では、クライアントにとっては、弁護士の話すことを正しく理解することが、問題解決の肝、であるともいえましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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