01861_有事状況において持つべきマインドセット_ストレスから逃げない、他人も自分も信じない、正解や「正解を知っている(と称する)怪しげな人間」を探そうとしない

有事状況は、苛酷です。

ストレスと不安で死にそうになります。

また、トレードオフ課題(あっちを立てればこっちが立たず、肉を斬らせて骨を断つ、といった趣きの、目的達成のために多大な犠牲を伴う決断が迫られる課題)が波状的に突きつけられ、もたもたしていると、どんどん状況が悪化し、機会損失が増大します。

有事がために、人によっては、持病が悪化し死に至ることすらあり得ます。

命は大事です。

というか、私個人としては、有事ごときより、美容と健康の方が大事とも考えます。

「有事」
といっても、議論しているのは、ビジネスや権利や財産の話であり、いってみれば、銭カネです。

命や健康まで取られる話でもなく、たかが、銭カネですし、だいたいの有事は
「身から出た錆」
といったものであり、自己責任、因果応報、自業自得の話です。

ストレスや不眠で死んでも、あるいは美容と健康を失ってまで有事と戦うかどうかは、その人が何が大事にするか、という価値判断となります。

美容と健康を維持した状態で、過酷な有事もうまいこと切り抜けられる、というのは、あまりにも愚劣な妄想です。

「美容と健康を維持した状態で、過酷な有事もうまいこと切り抜けられる」
という常識を持っているとするならば、この常識をも壊さなければならないのです。

有事対処においては、
「自分以外、誰も信じない」
「さらにいえば、自分すらも信じない」
というマインドセットが必要となります。

このような過酷な気構えが必要です。

なぜなら、自分の常識すらアテにできないのですから。

「自分に代わって有事にうまく対応できる人、『その人に頼んでおけば、ストレスもなく、何もかもうまいこと処理し、何もなかったことにしてくれるようなプロフェッショナル』がいるはずであり、そんな『空想上の魔法使い』を探さなければ」
という感覚を持っていたとするならば、この感覚すらも廃棄しなければなりません。

「その人に頼んでおけば、ストレスもなく、何もかもうまいこと処理し、何もなかったことにしてくれるようなプロフェッショナル」
などいません。

絶対いません。

仮に、そういうことを臆面もなく述べる人間がいるとすれば、詐欺師です。

危機に陥った素人に
「耳に心地良い虚構」
を吹き込んでを食い物にするような詐欺師ではなく、知性と経験と誠実さをもつ弁護士であれば、
「有事には正解などありません。大事を小事に、小事を無事に近づけるため、ストレスフルなPDCA(合理的試行錯誤)を繰り返すだけです。そのような試行錯誤すら、知性と経験を要求される過酷な営みなのです。そして、有事における相応の対処が可能な知的資源や事務資源を有する人間は、レア中のレアといえます。正解のない課題に直面したときに、もっとも忌避しなければならない態度は、『正解を探す』『正解を知っていると称するバカが詐欺師を探す』というものです。カネと時間と労力の無駄であり、さらに言えば、貴重で希少な機会を不可逆的に損ないます。正解のない課題に直面したときに出来ることは、最善解を追求すること、すなわち、現実的な目標(落とし所)を設定して、そこに至るために、ダメージコントロール(損害軽減措置)を含む、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技を創出、整理、選択、実施、見極め、ゲームチェンジという合理的試行錯誤(PDCA)を継続するだけです」
と、助言するでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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