01870_事業承継の本当の姿

オーナー経営者が、老いを意識したり病気になったりすると、
「事業承継」
を口にします。

ところが、ほとんどのオーナー経営者の言動をみるかぎり、本音は、
「事業承継」
ではなく、
「院政を敷くこと」
です。

「事業承継」
とは、
「会社の譲渡」や「経営の移管」
であり、
「院政を敷くこと」
とは異なります。

文字通り、手放した後の会社については、意識から追いやることが素直かつ自然です。

一方で、
「院政を敷くこと」

「経営を委ねるが、委ねた先が変なことや愚かなことをしないかきちんと見定める」
ことです。

たとえば、使っていた家や車を、中古市場で、売却した後、売主が、買主のところにやってきて、
「買主が家や車をどのように使っているか」
ということを確認し、逐一ダメ出しする、という事態を想定してください。

それは、
「譲渡」
ではなく、
「手放す気などサラサラなく、手元に置いているのと変わりない」
という話になります。

さて、一般論でいいますと、老いたり病気になったオーナー経営者は、
・経営権を保持する

・院政を敷く

・院政によるリモート支配をしつつ、後継候補を「自分のコピー」のように人格改造する

・人格改造が終わっても、院政を続ける(裏切ったりすることがあるので、監視期間を置く)

・たいてい、後継候補者に裏切られる

・裏切られたら、また、別の後継候補の人格改造を始める

・死ぬ3秒前まで院政を続ける

・死んでから、ようやく院政をやめる(というか、続けられなくなって院政が終了する)
という営みをトライします。

そうこうするうちに、会社は劣化し、後継候補者が次々に脱落し、にっちもさっちもいかなくなり、会社を売りに出す(たいてい足元をみられて二束三文で買い叩かれる)ことになる、というのが、
「事業承継」
の本当の姿です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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