01930_不安の思考ループ

楽観バイアス・正常性バイアスが克服でき、不安を感じることができたとしても、問題が正しく認知できない相談者が少なくありません。

メタ認知ができず、状況評価、状況解釈、展開予測がうまくできないと、以下のような思考秩序のもと、思考ループに陥りがちです。

不安を感じる

問題を認知しようとする(問題認知の際に、主観ないしバイアスが邪魔して正しく認知できないので、外部専門家を活用して、メタ認知支援を受け、問題認知にはトライし、問題がぼんやりわかり始める)

問題認知して、状況解釈や展開予測にトライする(やはり外部専門家の支援を得る)

(何も手を加えずに状況放置した場合の)残酷な結末や不愉快な帰結が判明する

他方で、そこから何らかの状況改善のための資源動員をした場合の現実的な展開予測(シミュレーション)をしてみるが、「一発逆転」的な希望する解決を得られることはなく、「大事が無事に」「損害軽減」「将来的な改善」という成果がせいぜいである、という想定が判明する

結局、「何もせずに(あるいは外部専門資源を投入せずに、素人が手軽な対処をして)悲惨な大事に至る」か、「さんざん資源動員(コストのかかる外部資源動員)をして、大事が小事になったり、損害が軽減される程度の成果しか得られない」か、という選択(現実)を突きつけられる

「一発逆転」による主観的に希望する成果を得られる余地がない、ということを知らされる

不愉快になる

問題の認知が間違っている(専門家によりメタ認知や状況解釈や展開予測が狂っている)、と考え始める。そんな悲惨な状況ではないし、そんな悲観的なことにはならないし、相手もそこまで悪くないだろうし、神様はいるし、正義は勝つし、どこかでうまいことやってくれるお手軽で都合のいい専門家がいてくれるやずだ、自分たちは幸運なはずだ、絶対うまくいく、助かる、というやや強引な認知転換を試みる

展開予測や改善の営み(コスパが悪いし、自分の思い通りにならない)が気に入らないので、問題がなかった、問題が軽度で対処可能だ、と思い込もうとする

主観で思い込んで、一瞬、問題がなくなる

しかし、不安はなくならない

不安になる

最初に戻る

このようなループです。

この思考ループに陥ると、時間を浪費し、機会をなくし、最後はすべてをなくします。アナロジーとしては、下記のような事例がイメージできましょう。

CTスキャンで肺に真っ黒な影が映る

そういえば、調子が悪いし、何度も咳き込むし、血反吐が出る

不安になる

超高額のクリニックを勧められる

精密検査も超高額、手術や治療はさらに高額

「で、そんな高額な検査や高額な治療をやったら、完全に治るのか?」と質問する

「一定のステージまで進んだガンは治らない。ガンは絶対治らない。当院で『ガンの治療』と称しているのは、延命措置のこと。絶対死ぬが、死ぬ時期が、1ヶ月が半年、半年が1年になるのは、それなりの価値と意義がある。逆に言えばその程度の価値しかない。ただ、費用は超高額だ」と回答される

「高い金をかけて、調べて、体を弄った挙げ句、治らないし、せいぜい延命程度」という現実を理解する

不愉快になる

この医者はヤブだ、使えない、と思う

というより、そもそもガンではないし、ガンではない自分をガン呼ばわりする医者が狂っている、と思い込むことにする

そうすると、脳内から問題が消失して、なんだか元気が出てくる

その直後、咳き込む、血反吐が出る

CTスキャンの画像をみてみる

やっぱり肺が真っ黒

不安になる

このような事例において、
「一発逆転は可能です。信じる者は救われます。良き結果を信じて、私達と頑張りましょう」
という専門家がいたとします。

「ガンは治ります。末期でもステージ4でも治ると思います。いや、治るべきです。神様はいます。私にまかせてください。がんばります。治してみせます」
という医者がいたとします。

この専門家や医者は、バカか詐欺師のどちらかだと思いませんか?

末期ガンが治る、と心の底からそう考え、本気でいっているなら、その時点で、シビれるくらいのバカでしょう。

末期がんが治らない、という常識はわきまえていながらも、
「ガンは治るべきです。頑張って治しましょう」
なんて言うのは、詐欺師です。

仕事が欲しい、お金が欲しい、過酷な現実を見せたくない、夢をみさせてあげたい、気持ちよくさせてあげたい、希望をもたせたい、可哀想、つらそう・・・理由なんかどうでもいいです。

治らないガンを治ると誤信させて、治療費を頂戴して、治療という名のまやかしを行うのは、どんな理由があろうと、詐欺師です。

たとえ、資格ある医師が、治療行為とみえる営みをしていても、
「ガンが治る水」
「神の贈り物の霊水」
「聖人の恵みの聖水」
「ガン細胞を消すスーパー酵素」
を売り歩く怪しげな業者と、やっていることは変わりません。

結局のところ、現実は厳しい、ということです。

さて、誠意のある弁護士はどうするでしょう。

「状況認知選択課題」
「状況評価・解釈選択課題」
「展開予測選択課題」
「対処方針選択課題」
のいずれの選択課題においても、顧客が愚劣な選択(先延ばし、先送り、神頼み、性善説というコストのかからない妄想ともいえる選択)に固執する場合であっても、顧客の選択を最優先します。

顧客ファースト、という理念のもと、常に顧客の選択を尊重するのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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