01921_デューデリジェンス(DD)をする際の弁護士の構築する課題_内部DD編

DDとは、M&Aを行うにあたってのプロセスの1つであり、契約前に、買収する企業が対象企業について徹底的に調査を行うことをいいますが、単に、
「適当かつ相当な調査」
という言葉としてつかわれることもあります。

さて、社内で何か問題が起こったとき、相談を受けた弁護士は、内部DDにあたり、その課題を列挙します。

1 DDをやって、現状を明らかにすること自体に、大きな障害が想定される=一大事件である

2 関係者が、DD実施に対して拒絶あるいはサボタージュで対抗してきた場合のカウンターアクションの想定(懲戒処分や配置転換)と権限移譲と責任負担

3 DD実施(あるいはその前提としての環境整備・構築におけるアクション)による影響
(1)労働紛争
(2)(担当者が引き継ぎを拒否した状態で不在となったことを契機とし、これを口実とした)取引の消滅、損害賠償の請求による、売上減、損失計上(状況を奇貨として弁済拒否等)
※証拠が得られない可能性あり
(3)上記による経営責任の追及
(4)プロジェクト中断
※影響3と同時に搦手から責められる
(5)敵対勢力からの想定困難な嫌がらせ(反社会的暴力や、関係者・担当者への個人攻撃)とそれに対する経営者(プロジェクトオーナー)の断固たる防衛意思と防衛行動が期待できない

以上を不退転の決意で乗り越える意思を経営者(プロジェクトオーナー)が持つ、という前提の下、内部DD実施の稼働体制・責任体制・予算体制が合理的に構築できるか

経営者(プロジェクトオーナー)によっては、弁護士の想定する1~3の課題を、 次のように受け止める方も少なくありません。

1 内部DDなんて、関係者から聞けばいいだけ。簡単に遂行できる

2 関係者はDD実施には協力してくれるし、サボタージュもないし、カウンターアクションなどそんな大事(おおごと)にするまでもない

このように、経営者(プロジェクトオーナー)が楽観的であると、そのDD自体が完了するどころか、暗礁に乗り上げ、不十分な結果に終わりかねません。

結局のところ、内部DDの可否は、以下の3点に集約されるといっても過言ではありません。

・社長(プロジェクトオーナー)は、DDの重大性の認識をしているか? 
・社長(プロジェクトオーナー)は、覚悟あるのか? 
・社長(プロジェクトオーナー)は、腰折れしないか?

弁護士と経営者(プロジェクトオーナー)の視点が合致してはじめて、ようやく、内部DDができる、というわけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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