相手が、合意ないし確認事項に関して文書を交わそうと言ってきたとき、まず、すべきことは、
「相手が言わんとすることは何であるか」
を吟味することです。
それには、その文書を交わすことについて、当方・相手、それぞれのメリット・デメリットを分析します。
そして、当方・相手方、それぞれの利益・損失の金額、将来に生じるであろう利益・損失の金額を算出してみることです。
1 文書を作成することにより、当方は、どんなメリットが生じ、また、どんなデメリットが生じるか?
2 文書を作成することにより、相手方は、どんなメリットが生じ、また、どんなデメリットが生じるか?
3 文書を作成しても、双方ともに、何のメリットもデメリットも生じず、中立であるのか?
1’ もし、当方にメリットがあるなら、作成に協力する(ハンコを押す)のもいいでしょう。
2’ もし、当方にデメリットが生じるなら、死んでもハンコを押さない、が正解です。
3’ もし、中立なら、まずは、作成拒否で、逆に、「ハンコを押したら、いくらくれる?」という問いかけをするのが正しいです。ハンコを押しても、相手が1円もくれないなら、あっかんべーで、作成は一切拒否すべきでしょう。
ここは、あえて、淡々と、
「文書を交わさない」
と返してみたら、相手はどのように反応するでしょうか?
それでも、なお、相手が、
「どうしても文書がほしい、ハンコがほしい」
というのであれば、それは、何を意味すると思いますか?
それは、現時点では、
「『ハンコをついてあげる』当方が優位である」
ということが判明した、ということなのです。
交渉をすすめるには、このように、彼我について分析することが肝要です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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