02050_企業法務ケーススタディ:外国転売を疑う大量購入者への対応策

<事例/質問>

ある客が、店舗に来店し、外国にいる知り合いらしい人とやりとりをしながら、製品を大量購入しています。

同じものを大量購入しているわけではなく、数個ずつ購入していますが、あらゆる商品を購入していきます。

もし、外国での転売をしているなら、抑止する方法はあるでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

売買契約は当事者間の意思の合致が必要であり、基本的には誰にモノを売るかは自由です。

したがって、単純に
「売らない」
という選択肢も考えられます。

例えば、
「当店では、○○点以上のお買い上げはご遠慮いただいております」
といった対応が考えられます。

ただし、法律上のリスクとして、独禁法違反
「単独の直接取引拒絶」
があります。

公正取引委員会ウェブサイトによれば、売主が独自の判断で特定の相手に対して販売を拒否することは、原則として独禁法違反にはなりません。

しかし、市場における有力な事業者が競争者を市場から排除するような場合には、独禁法違反となる可能性があります。

例えば、以下のような状況です。

・Aと競合する製造業者(輸入業者)Xがいる。
・Aは、自分の商品を売る相手BがXとも取引することを嫌がり、Xの市場成長を阻止したいと考える。
・AはBに対して
「Xと取引するなら、うちの商品は売らない」
と言う。
・BはXから商品を買いたいが、仕方なくAに従う。

このような状況であれば、独禁法違反の可能性が生じます。

そのような事情がない限り、原則として
「誰にモノを売るのかは自由」
となります。

しかし、定価で購入している客から
「なぜダメなのか」
「不合理だ」
とネット上で騒がれるリスクもあります。

その場合に備えて、次のようなストーリーを準備しておくことをおすすめします。

1 当店の商品は非常に少量で、多種多様な品揃えをしています。
2 商品の回転率が早く、見逃すと同じ商品に出会えないことが多いです。
3 多くのお客様から「あの商品はもうないのか?」と問い合わせを受けますが、いつも「もう売れてしまいました」と謝っています。
4 しかし、一部の方が当店の商品を大量に購入し、その後、オークションサイトなどで定価以上の価格で販売している事例がいくつか発見されています。
5 一般のお客様は「あの商品を買おうか迷っている間に他の人に買われてしまい、後で高値で売られているのを見て悔しい思いをする」という状況に陥っています。
6 当店は、そのような転売目的での大量購入者よりも、一般のお客様を大事にしたいと考えています。

このような背景説明を準備しておくことで、転売抑止の正当性を示すことができます。

業界の慣習やお客様の傾向を考慮し、最も納得しやすいストーリーを作成することが重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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