02076_初回法律相談の主眼

初回の無料法律相談では、相談者に
「法常識と一般常識のギャップ」
を、よく理解してもらうことに主眼が置かれます。

これは医療で言えば、
「自分の病状や病気の概要を、極めて大雑把に認識した」
というレベルに過ぎません。

すなわち、医療という比喩を用いると、
・詳細な病気のメカニズムや
・治療ないし改善すべき課題の特定や
・治療方針(治療方針がいくつかの選択肢に整理出来る場合、各選択肢の功利分析を含む)の策定・把握や
・治療実施
といったところまでは、初回法律相談においては、全く到達しません。

法的なトラブルに関しては、そもそも課題の発見・特定すらできていないまま、ゲームのルールもよくわからないまま(あるいは”知ったかぶり”が災いして)、シビアな状況に追い込まれる方が多い、という特徴があります。

そのような状況を考えると、初回法律相談において、
「法律上の問題の発見・特定ができた」
こと自体は、相応の価値がありますが、これで解決したと安心するのは危険です。

病院で問診を受けただけで
「自分が病気に罹患していることがわかって一歩前進した」
と安堵するのと同様です。

法的なトラブルに関しては、問題の全体像や具体的な対応策にはまだ到達していない段階であり、それがそのまま問題の解決につながるものではなく、問題の本質に取り組むには引き続き検討が必要である、ということです。

また、
「ハインリッヒの法則」
にもある通り、1つの重大事故の裏には29の軽微な事故があり、さらに300の異常が潜んでいるとされます。

この視点から見ても、事業を営む場合、
・ガバナンスの不全
・労働関係(ヒトの取引)の問題
・モノすなわち各種調達取引にまつわる問題
・カネにまつわる問題
・チエやノウハウに関わる問題
・営業取引にまつわる問題
・債権回収にまつわる問題
・会計税務にまつわる問題
その他各種取引プロセスにおいて、
「現状、顕現せざるも、その萌芽が発生している法的に異常な状態」
が存在することも十分想定されるところです。

今後、継続して、相談者の企業経営のありかたや法務の取組の現状を弁護士が把握して、問題ないしその萌芽が発見された場合に、状況に即応し、問題の特定と改善する体制が必要とも考えられます。

無論、
「営業を重視して管理や法務を軽視する」
というスタンスで、法的なリスクマネジメントを充実しない形で経営を継続する方向性も純論理的にあり得ましょうが、事業を可及的永続的に存続させる観点からは、採用しえない方向性と考えられます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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