契約書確認は、ビジネスの現場で頻繁に求められる業務です。
しかし、時には驚くほどのスピード感を持って対応を求められることがあります。
この
「緊急対応」
には、実は見えないリスクや課題があります。
緊急契約書確認で起きるリスクや課題
1 表現やロジックの不備がある
クライアントから示される契約書は、表現が不明確でロジックに欠陥や不備があるケースが、多く見受けられます。
2 新規作成に近い作業負担
そのため、
「言いたいことは分かるが、それを明確に表現するには相当行間を埋めなければならない」
という状況となります。
結果として、事実上の新規作成扱いとなり、当事務所指定のタイムチャージやドキュメンテーションチャージ(ラッシュチャージ込み)を頂戴することになります。
3 情報不足を補うための補完
意図や目的や背景についてしっかりとしたカウンセリングを前提としたものではないため、現時点での極めて曖昧で不明箇所の多い前提意図を、弁護士側が忖度し、推測や想像力で補完することとなります。
「リスクを極力抑制しながらクライアントの意図に沿ったもの」
を提供することが求められる弁護士側は、時間とリソースを大きく費消することとなります(他の業務は後回しになります)。
4 現場での修正が前提となる
以上のような状況で作成された契約書(事実上の新規作成扱いとなる)は、当然のことながら、クライアントの現実的なビジネスゴールや、相手方との交渉関係まで把握できるものではなく、実際の使用にあたっては、現場の責任者の適宜の修正等を前提とするものとなります(言わずもがなですが、クライアントには、最初に了解を得ます)。
契約書を「正しく使う責任」
弁護士が作成する契約書は、依頼時点での条件や背景に最適化された
「逸品」
です。
以下は実際に起きた事件です。
あるクライアントが、過去に、特定の状況と特定のゴールにのみ最適化されたものとして当方より提供した契約書を、当方に了解なく、新しい事案において書式として援用し、しかも、全く違った状況や全く違ったゴールであるにもかかわらず、援用した担当者において、所要の修正を図らずそのまま流用しました。
結果、契約相手から
「これを作った法律家はビジネスを知らない。こんな一方的な契約書は、この取引に見合っていない」
と、言われたクライアント(オーナー経営者)からクレームが当方に寄せられる、という事態となりました。
契約書は「ビジネスを守る盾」
契約書は単なる法律に基づく文書ではなく、
「クライアントの意図や目的や背景についてしっかりとしたカウンセリングを前提」
とし、 意図を言語化し、リスクを排除しつつ、目的を達成するために作られた
「盾(特定の状況と特定のゴールにのみ最適化されたもの)」
です。
ビジネスを大きく実現している経営者は、契約書確認に関わるプロセスにおいて、弁護士に時間的な余裕を与え、
「盾(特定の状況と特定のゴールにのみ最適化されたもの)」
を効果的に活用しています。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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