02116_契約チェックからトラブル対応まで!顧問弁護士の役割と活用ポイント

会社の顧問弁護士は、契約のチェックからトラブル発生時の対応まで、企業の法的な安全を守る重要な役割を担います。

その業務は、大きく
「日常的な法務サポート」

「トラブル対応」
に分かれます。

たとえば、企業経営を船の航海にたとえると、顧問弁護士は
「海図を読む専門家」
です。

普段は、安全なルートを確認し、危険を避けるアドバイスをします。

しかし、嵐に巻き込まれたり、座礁しそうになったときには、適切な回避策を講じ、最悪の事態を防ぐ役割を果たします。

1 日常的な法務サポート(平時の業務)

顧問弁護士が企業の経営に深く関わる場面の1つが、契約書のチェックです。

契約書はまず、企業内の担当部署が作成し、それを法務部門が確認します。

その後、顧問弁護士が法的な視点からバックチェックを行い、問題がなければ最終決裁へと進みます。

ただし、顧問弁護士が判断するのは
「契約が法律的に適切かどうか」
のみです。

契約内容が会社にとって本当に有利なのか、ビジネスとして妥当なのかといった
「経営的な合理性」
のチェックは、別途、経営本部が行います。

これは、医師が
「この薬は厚生労働省の基準をクリアしているか」
を確認するだけで、実際に患者に処方するかどうかは、症状や体質を考慮する別の判断が必要になるのと同じです。

2 トラブル対応(緊急時の役割)

企業が経営を続けていると、法的なトラブルに直面することもあります。

その際の顧問弁護士の役割は、トラブルの性質や緊急性に応じて変わります。

(1)事件発生時の初動対応

・緊急性が高い場合は、企業の担当者が直接顧問弁護士に連絡を入れます。
たとえば、突然の刑事事件や重大な訴訟リスクが発生した場合などです。

・それ以外のケースでは、まず法務部が状況を整理し、
「5W2H(いつ、誰が、どこで、なぜ、どのように、いくらの問題があるか)」
の情報をまとめ、24時間以内に顧問弁護士へ報告します。
その後、トラブルの深刻度に応じて、24時間以内から5営業日以内を目安に相談を進めます。

(2)法的選択肢の整理と分析

トラブルに対して少なくとも3つの視点から対応策を検討することになりますが、顧問弁護士は、その助言を行います。

・一般企業目線(ビジネス的にどの選択肢が最適か)
・法律専門家目線(法的に何が可能か、どのようなリスクがあるか)
・オーナー経営者目線(会社の方針や経営リスクを考慮した選択肢)

それぞれの選択肢にはメリット・デメリットがあります。

経営陣の判断が難しい場合や、オーナー経営者から依頼があれば、顧問弁護士はそれらを整理し、経営陣が判断しやすいようにアドバイスを行います。

(3)意思決定のプロセス

トラブル対応の最終的な判断は、案件の規模や影響度に応じて変わります。

顧問弁護士は、企業の意思決定をサポートし、適切なルートで進めるよう助言します。

・売掛金の回収など、比較的少額(●00万円以内)でビジネス上不可避なトラブルは、企業の法務部長が決裁します。顧問弁護士は、依頼があれば、その際の法的リスクを説明し、必要な手続きをサポートします(場合によっては有償となります)。

・●00万円以上の案件や、少額でも事業の根幹や風評リスクが関わる場合は、取締役会や経営本部が判断します。顧問弁護士は、求めに応じて、選択肢を整理し、それぞれのリスクを明確に伝えます(場合によっては有償となります)。

・会社の存続に関わる重大な事件や刑事事件の場合は、オーナー経営者への報告が必要になります。
ここで重要なのは、
「稟議決裁のルートを守ること」
です。
顧問弁護士は、依頼があれば、本部長を通じてオーナーに正式な報告が行われるようサポートし、ショートカットや非公式ルートによる混乱を防ぎます。

3 まとめ

顧問弁護士の役割は、単に法律相談に応じるだけではありません。

企業の経営判断を法的な側面からサポートし、トラブルの未然防止や危機管理を担う重要な存在です。

企業経営は、航海のようなものです。

日々のルート確認(契約チェック)をしながら、安全な航行を続けることが大切です。

そして、もし嵐(トラブル)が起こったときには、経験豊富な専門家(顧問弁護士)のアドバイスを受けながら、最適な舵取りをする必要があります。

日常の予防と緊急時の的確な判断。

その両方を支えるのが、顧問弁護士の役割なのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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