02120_契約書の曖昧な一文がトラブルの火種に。「書いていないこと」もリスクになる。

先日、顧客から雇用契約書のチェックを依頼されました。

契約書を確認してみると、契約更新に関する記述が少し曖昧な表現になっていました。

企業側の意図としては
「更新は確約しない」
つもりだったのでしょうが、文面だけを見ると、社員側が
「当然更新されるものだ」
と思い込む可能性があるものでした。

こうした曖昧な契約書が原因で、後になって
「そんなつもりじゃなかった」
「言った・言わない」
と揉めるケースは少なくありません。

企業側は
「更新はしないつもりだった」
と主張し、社員側は
「ずっと働けると思っていた」
と反論する――どちらの言い分にも一理あるように見えてしまうのが厄介なところです。

契約書は、普段はただの紙切れですが、トラブルが起きたときには、会社と社員の双方を守る盾になります。

しかし、その盾が曖昧な表現で作られていたら、いざというときに役に立ちません。

たとえば、家を建てるときに
「地震に強いかどうかは、まあ大丈夫なはず」
と適当に設計したら、大地震が来たときにひとたまりもありません。

契約書も同じで、
「まあ伝わるだろう」
と思って適当に書くと、いざ問題が発生したときに会社のリスクとなります。

特に雇用契約では、最初に社員が
「この会社で長く働ける」
と期待してしまうと、契約終了時に
「話が違う」
と揉めやすくなります。

だからこそ、
「更新は確約しない」
ということを明確に記載し、余計な期待を持たせないことが重要なのです。

契約書は、書いてあることだけでなく、書いていないことも問題になります。

「普通はこう解釈するだろう」
という前提に頼るのではなく、誤解の余地を残さない形で文章を作ることが、後々のトラブルを防ぐカギになります。

曖昧な契約書は、将来の火種になりかねません。

だからこそ、最初にしっかりチェックしておくことが大切なのです。

特に、契約書作成や契約書チェックを弁護士に依頼せず、社内ですべて対応しがちな中小企業では、このような事例が少なくありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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