00187_企業法務ケーススタディ(No.0142):店舗でDVDを放映しても大丈夫っしょ!

相談者プロフィール:
株式会社ズームアウト 代表取締役 羽嶋 辛一(はしま しんいち、40歳)

相談内容: 
すいません先生、ひとつ質問なのですがよろしいでしょうか。
一応確認です。
いえね、大丈夫だとは思うんですよ。
大丈夫とは思うんですが、慎重を期してお尋ねさせていただこうと考える次第です。
実は、私、副業でサウナを経営しておりまして。
いや、そりゃ必要じゃないですか、清水の舞台から飛び降りる気持ちでフリーアナウンサーになったはいいものの、保険は必要ですからね。
局アナ時代によくサウナでリラックスしていたことを思い出して経営しだしたんです。
そしたら、レジャーにお金を使わない時代でしょう、意外にヒットしちゃって。
それで、なんていうんですか、お客さんのさらなるリラックスのために店内のモニターにお洒落映画とか流してるんですけど、場所柄、映像関係の人間とかよく来るんですよ。
そいつがね、
「羽嶋ちゃん、これレンタルビデオ屋から借りたやつなんじゃないの?
そういうのって客に向けて流すの著作権法違反らしいよ」
なんて、サウナの中なのにセーターを肩にかけながら注意してくるんですよ。
確かにレンタルDVDなんですけどね、借りたDVDを誰と見ようと自由じゃないですか。
家族と一緒に見たって問題ないでしょ?
サウナのお客さまなんて、私はみんな家族のように思っているからこそサービスで流してるってのに。
大丈夫ですよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:著作権法上の「著作権」侵害とは
レンタルビデオ屋から借りたDVDは、著作権法上
「映画の著作物」(著作権法2条3項等)
として保護されます。
そして、著作権法は、このようなDVDに関して、
「複製」
「上映」
「公衆送信等」
「頒布」
等の行為をすることを禁じています。
すなわち、著作権法は、著作者に対して、細かい具体的な権利(前記の禁止行為に対応する「複製権」、「上映権」等)を付与しており、
「著作権」
とは、これら権利が集まったいわば
「権利の束」
をいいます。
この点、これら細かい権利を検討することなく、
「よくわからんが著作権を侵害しとる!」
なんて主張する大雑把な方がいらっしゃいますが、裁判所で通る論理ではありません。
著作権の侵害認定にあたっては、具体的な場面で
「一体、何権が問題なのか」
を適切に選択し、
「それぞれの具体的な権利の定める要件をなぜ侵害しているのか」
を慎重に検討する必要があるのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「映画の著作物」特有の保護
映画の著作物に特に認められている権利が
「頒布権」
です。
これは、映画の製作者や制作会社が映画のフィルムをコピーすることや、コピーしたフィルムを独占的に譲渡・貸与できる権利です。他の著作物とは異なり、市場にどの程度流通させるべきかという部分までコントロール可能な点が、映画の著作物の大きな特徴です。
すなわち、多額の費用が必要な映画製作においては、投下資金の回収の機会を保護する必要性が高く、実体としても、映画フィルムを映画館に貸与することでフィルムの流通をコントロールしていることが、映画にのみ頒布権が認められている根拠となっています。
流通をコントロールするためには、映画館での視聴、レンタルビデオ屋でDVDを貸す、最終的に、市場でDVDを売るといったステップを踏むことで、その都度資本回収を最大化できる組み合わせを探ることが重要です。
映画会社は、投下資金の回収政策を慎重に策定し慎重に頒布を行うため、その資金回収計画を乱すことは許されません。
映画会社は、このような強力な
「頒布権」
を用いることで、
「誰にどのような期間・方法で見せることを許諾するか」
をコントロールし、レンタルビデオ屋で一般に借りることができるのは、
「家庭で家族や友だちと少人数で一定期間だけの鑑賞が許されているDVD」
に過ぎません。
したがって、このDVDを使って、公に上映するとか、さらに誰かに貸与するとかいったことは上映権ないし頒布権を侵害することになるのです。

モデル助言: 
アウトですねー。
家庭での視聴用にレンタルが認められているに過ぎないDVDをサウナの客向けに上映するなんて、上映権の侵害になりますよ。
レンタルDVDを家族みんなで鑑賞することができるのは、家庭という極めて閉鎖的なスペースでの視聴であり、
「公に」
なされるものではないため、
「上映」
概念に該当しないのが理由です。
「客は家族」
なんておっしゃっていますが、ちょっとその抗弁は立たないですね。
羽嶋さんは不特定多数の客に向けて鑑賞させていますし、このこと自体で対価を得ていないにしても、サウナ屋のサービス向上につなげているんですから非営利目的上映(著作権法38条)として許されることもありません。
どうしてもサウナで用いたいというのであれば、多数の人間に対して上映することが許諾済みの
「業務用DVD」
というものがこの世にはありますから、これを利用するべきです。
そもそも2時間もサウナに入っている客なんていないでしょう?
ここは思い切って
「リラックスさせない」
という戦略はどうでしょうか。
お客さんの入りも順調ということですし、音も映像も一切なしで、下手にリラックスさせて客を長居させるのではなく、客の回転率を挙げることを目指してみませんか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00186_企業法務ケーススタディ(No.0141):災害支援で債権を放棄・免除するときの税務リスク

相談者プロフィール:
マジカル・マジック株式会社 代表取締役 茂木井 審司(もぎい しんじ、38歳)

相談内容: 
先生、その節はお世話になりました。
お陰さまで、最近では、最新手品グッズ
「スマートフォン用耳型携帯ケース」
の売れ行きもよくて、最悪だった昨年度とは違って、何とか、黒字になりそうな感じです。
それで、今回の相談なんですけど、実は、うちのお得意先にマキセ物販っていうのがあるんですが、昨年、その会社、巨大台風が直撃した際に強風で倉庫の屋根と壁が吹っ飛んじゃって、商売どころじゃなくなっちゃったんですね。
まぁ、昔、世話になったこともあったし、少しでも被害の回復に役に立てばと思って、すぐに、うちの売掛金の一部を免除したんですよ。
他人にいいことすればそのうち自分にも返ってきますしね。
そしたら、この前、今期の決算の打ち合わせの時、先代の茂木井司郎(もぎいしろう)の頃からお世話になっている高齢の税理士の爺さんが、
「売掛金の免除なんかしたら、こっちも税金が掛かるの知らなかったのかい?
坊ちゃん、情けは人のためならず、なんてことはないんだよ」
なんて、ドヤ顔でいうんですよ。
大体、困っている会社を助けてやったのに税金が掛かるなんて、そんなアホな話あるわけないじゃないですか。
先生のところは、税金関係も詳しいんですよね!?
ひとつ、爺さんにバシッといってやってください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:法人税の考え方
一般に、企業の1年間の活動実績を計測する
「企業会計」
では、法人の1会計年度における
「収益」(売り上げ等)
から、それを得るために掛かった
「費用」(売上原価や販売管理費等)
を差し引いて、
「利益」
を算出することになります。
これに対し、企業の
「担税力」
を計測する
「税務会計」
では、上記の
「利益」と「収益」
に対し、公平な課税目的やさまざまな政策に鑑みた各種の調整を行うことになります。
このような調整を行った後の
「収益」
を税法上は
「益金」
といい、調整を行った後の
「費用」

「損金」
と呼びます。
そして、法人税は、大まかにいうと、
「益金」
から
「損金」
を差し引いた
「所得金額」
に所定の税率をかけることで算定されますが、少しでも法人税を安くしたい企業にとってみれば、いかにして
「損金」
の額を多くにするかについて苦心することになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:法人間の贈与や債務免除の考え方
個人が個人に対し金銭等の贈与を行う場合、金銭等の贈与を受けた側(受贈者)には贈与税という税金が掛かりますが、金銭等の贈与を行った側(贈与者)には贈与税は掛かりません。
これに対し、企業などの法人が、特定の法人に対し金銭等の贈与を行う場合、まず、金銭等の贈与を受けた側(受贈者)は、法人の純資産がそれだけ増加しますので、前記の
「益金」
として扱われ、法人税を算定する対象となります(受贈者が個人の場合は、原則として、法人からの贈与は一時取得として所得税の対象になります)。
他方、金銭等の贈与を行った側(贈与者)ですが、個人への贈与の場合も法人への贈与の場合も、
「損金」
として算入することが制限されます。
この結果、課税される額も大きくなります。
なぜなら、企業などの法人による贈与等を
「損金」
として無制限に認めてしまうと、
「損金」
を自由に大きくして税金の支払を回避することを許してしまうことになります。
そこで、法人税法は、このような贈与等を
「寄付金」
として、
「損金」
として算入することに一定の制限を設けています(法人税法37条以下)。
なお、個人や法人への
「金銭債権の免除」
といった“消極的な”贈与も、前記と同様の考えから、債務者の資産状況や支払能力等からみてその全額を回収することが不可能であることが明らかな場合などを除き、
「損金」
への算入が制限されております(法人税基本通達9-6-1、同9-6-2)。

モデル助言: 
茂木井さんの会社も、マキセ物販に対する売掛金の一部を免除したとのことですが、前記のとおり、法人税上の
「寄付金」
として認定されてしまうと、
「損金」
として算入できなくなる結果、法人税の額が
「でっかくなちゃった」
となってしまう可能性があります。
でも、それでは、せっかくの好意が報われなくなってしまいますよね。
そこで、政策的な観点から、
1 震災や台風などの災害を受けた得意先等の取引先に対し、
2 その復旧を支援することを目的として、
3 災害発生後相当の期間内に、
4 売掛金などを免除した場合には、
その免除した額について、
「寄附金」
とは認定せずに、
「損金」
として算入することが認められています(法人税基本通達9-4-6の2)。
どうやら、マキセ物販は茂木井さんの会社にとって
「得意先」
のようですので、
1 巨大台風の直撃が「災害」に該当し、
2 茂木井さんの会社が「復旧を支援することを目的」として、
3 災害の発生後、「相当の期間内」に、
4 売掛金などを免除してあげたことが
認められれば、
「損金」
として認めてもらえるかもしれません。
あ、御社の税理士さんがご高齢で、このような細部にわたる通達まで知らなそうで心配だ、というのであれば、一応、事前に税務署に確認しておくこともお勧めしますよ。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00185_企業法務ケーススタディ(No.0140):農地って簡単に買えるの?

相談者プロフィール:
株式会社ピーチアロマ 代表取締役 百木 さほり(ももき さほり、60歳)

相談内容: 
お久しぶりね、先生。
私の会社、今まで熟女向けの香水を作ってきたところだけれど、オンナの美しさは健康から、美しい香りはカラダの中からってことで、業務を拡張して、無農薬の有機野菜を売ることにしたの。
「香水の畑から採れた野菜」
なんてステキじゃない?
農業なんて私未経験だし、ウチの会社の役員連中は、土に触ったことすらないようなお坊ちゃんばかりだけれども、何とかなるわよ。
それで、香水を大量にまいても怒られないような、山奥の畑を物色してたら、私の友人の竹林直人ってヤツが、
「オレはもう農業をやめて、都会に出る!
先祖代々引き継いだ畑を全部オマエに売ってやってもいい」
なんていうのよ。
まあ、渡りに船、ってことで買いたたいてやろうと思ったら、竹林のヤツ、
「アンタ失敬だな!」
なんていって、なかなか安くしてくれないのよ。
ちょっと先生のほうで竹林と交渉して、うーんと安く買ってくれないかしら。
成功したら、水代わりに香水をまいた畑で採れた野菜、毎週送ってあげるからさ。
この野菜を食べたら、きっと先生、モテモテになるわよ!

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:農地法とは
私的自治の下では、私人同士、自らの所有する財産を自由に交換して、それぞれの経済的な合理性を追求することができるのが大原則です。
土地という財産についても、私人は自由に売買の対象とすることができるのが原則であり、当事者間で
「売った」
「買った」
との意思が合致すれば、所有権が移転するはずです。
ところが、農地法は、この大原則を大きく修正しています。
不動産登記上
「田」「畑」
とされているものや、判例上は、不動産登記にかかわらず、現に耕作されている土地等は農地法上の
「農地」
とされて、自由な売買や賃貸借、さらには、農地から宅地への転用等が規制されています。
農地法は、第2次世界大戦後に行われたいわゆる
「農地解放」
により、大地主から小作農らに対して格安で農地が売り渡された後、再度農地が大地主に戻ることがないように、
「耕作者自らによる農地の所有」(農地法1条)
を目的として制定されました。
農地法は、土地を所有して他人に耕作させる大地主ではなく、
「汗水たらして実際に耕作する農民」
に農地を所有させて、
「耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図」(同条)
ろうとしているのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:農地は簡単には買えない
農地法3条は、農地について所有権を移転したり、賃貸借をする場合には、原則として、農業委員会という、各市町村に置かれる行政委員会の許可を受けなければならないと規定しています。
そして、農地法は、所有権や賃借権を手に入れようとする者が、
「農作業に常時従事する者」
でない場合や、
「農業生産法人」
以外の法人である場合には、農業委員会は、許可を出すことができないと定めています。
つまり、農地法は、
「自分で真剣に耕作をする者以外が農地の所有権や賃借権を取得することはまかりならん、気合の入った者だけが、農地に関する権利を手に入れることができるのだ」
としているのです。
そして、農地法は、当事者間で農地の売買や賃貸借契約が締結されたとしても、農業委員会の許可がない限り、
「その効力を生じない」(3条7項)
と規定しており、当事者間の意思の合致(売ります、買います)があったとしても、売買契約が効力を発しないという、強力な規制を行っています。
さらに、農地法64条1号は、農業委員会の許可なく勝手に所有権を移転したり、賃借権を設定した場合には、
「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」
という刑事罰まで用意しているので、注意が必要です。

モデル助言: 
今回の土地は
「農地」
のようですので、貴社がこの土地の
「所有権」
を手に入れるためには、
「農業生産法人」
の要件を満たすことが必要です。
勝手に売買契約をしても契約は無効ですし、刑事罰を科せられるリスクもありますよ。
株式会社が
「農業生産法人」
となるためには、原則として株主の4分の3以上が農業に常時従事する者等であること、さらに、役員の過半数が農業に常時従事する者であることなどが農地法で求められています。
これらの要件を実際に満たすことは、結構大変ですよ。
貴社はまだ農業分野のノウハウもないようですし、いきなり農地を購入して初期投資をするのはどうかと思いますね。
2009年に農地法が改正されて、農地の賃貸借であれば、
「取締役のうち1人が農業に常時従事すること」
などの、比較的充足しやすい要件を満たせば、株式会社でも農地を借りることができるようになったところです。
まずは賃貸借で様子を見てから、本格的な投資を御検討なさったらいかがですか。
というよりも、農産物なんて日持ちしないので在庫として保持できず、売れ残ったらおしまいです。
香水のような賞味期限と関係ない商品の感覚で取り扱ったら大変な目に遭いますよ。
まずは業務提携とかOEM生産を考えるべきじゃないでしょうか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00184_企業法務ケーススタディ(No.0139):逮捕されたら、そりゃ、普通、速攻で懲戒解雇でしょ!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
加藤コミュニケーション株式会社 代表取締役 加藤 浩壱(かとう こういち、51歳)

相談内容: 
先生よぉ、出ちまったよ、うちの会社からインサイダー取引をやった奴が。
うちも上場企業として
「インサイダー取引やると大変なことになるから、やめとけ」
って、口を酸っぱくしていってきたし、先生の教えどおり、できるだけ早期に重要情報は開示してきた。
でも、物事には秘密にせざるを得ないものってあるでしょ。
築き上げた広告代理店事業を磐石にすべく、株価低迷中のSNSやってるしょぼいIT企業にTOBをかけたんだけど、さすがにこんな話、事前に開示できやしない。
そしたら、 TOB の実施担当者が、よりにもよって親名義で対象企業の株を購入しやがってさ。
俺が
「何てことしやがんだ!」
って怒ったら
「違うんです。ここ10年くらい株なんてしてませんし、田舎の親が偶然にも対象企業の株を買っただけなんです! 本気でインサイダーするならもっと儲けてますって!」
なんて言い訳がましいことばっかり。
で、マスコミが嗅ぎつけて新聞沙汰になるし、そいつは逮捕され、昨日はとうとう起訴で、ウチの評判だだ下がり。
不起訴ならまだしも、起訴ってことは裁判沙汰だし、ほぼ有罪ちゅうわけでしょ。
もうダメですよ。
犯罪者を雇い続けるなんてことしたら、わが社の信用は地に落ちます。
問答無用で明日解雇しますけど、OKですよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:刑事上の有罪はいつ決まる?
本件では、会社がインサイダー取引の嫌疑がかかっている従業員を有罪に違いないと決めつけた上で、そそくさと解雇を行なおうとしています。
ところで、多くの企業は、就業規則上、
「“有罪”となった場合に解雇可能」
という定めを有しています。
では、いつ
「有罪」
と定まるのでしょうか。
刑事手続き上有罪となるのは、
「刑事裁判において裁判所から有罪判決が出され、上訴等の不服申し立て手続きが尽きて、有罪判決が確定したとき」
です。
逆に、誰しもが有罪と宣告されるまでは無罪と推定される、すなわち
「推定無罪」
として扱う必要があるのです(ちなみに、日本商事のインサイダー事件では、高裁と最高裁を行ったり来たりして、事件の結論が出るまで約9年間かかっています)。
世間では、
「逮捕者イコール犯罪者」
といった報道がなされます。
しかし、マスコミがどのように報道しようが、法律上は、厳然たる
「推定無罪」
の状況にあるのであり、
「有罪」
と決めつけて懲戒解雇することは、労働法上不当解雇となると考えられます。 

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:起訴休職制度の検討
それでは、企業は、懲戒解雇をすることができないにもかかわらず、逮捕されたり起訴されたりしている従業員に対して、給料を支払い続ける他ないのでしょうか?
このジレンマを解消するため起訴休職制度があります。
すなわち
「刑事裁判が確定するまで従業員としての身分を保有させながら一時的に業務から排除して、企業の対外的信用の確保と職場秩序の維持をはかり、労務提供の不安定に対処して業務の円滑な遂行を確保する」
制度です(日本冶金工業事件)。
要するに、刑事訴訟の被告人となった従業員を職場で働かせると会社の信用等に甚だしいダメージを与えるとか、従業員の間の不和を生じ職場環境が悪化するような場合、これを防ぐために白黒はっきりするまで休職させておこう、というのが起訴休職制度です。
具体的には、休職事由の1つとして
「刑事上の訴追を受けたとき」
と就業規則に定め、当該従業員を職場で働かせることの不利益等を検討した上で、休職処分をすることになります。
そして、このように
「従業員を職場に出てこさせない」
という休職処分については、一応、
「就労拒否」
の一場面として給料の支払義務の存否が問題となりますが、労働法上、
「使用者には何ら帰責事由がない以上、賃金や休業手当の支払い義務も発生しない」
と解釈されます。

モデル助言: 
まず、判決がどうなるのか不明であるにもかかわらず、マスコミ報道に乗せられて
「推定有罪」
として懲戒解雇とすることは違法です。
その上、最終的に
「無罪だった」
なんてことになると、不当解雇時からの給料プラス法定金利を支払う羽目にもなりますよ。
前述した起訴休職制度ですが、今回は、インサイダーという会社のコンプライアンス体制に大きな疑念を抱かれかねない事件が発生しています。
御社は上場企業として、また、広告代理店業務を行う上で、対外的な信用が第一といえるのですから、白黒はっきりするまでの間は従業員を休職処分とすることが可能です。
弁解を続けている件の従業員など、さっさとクビにしたい社長の気持ちも十分わかりますよ。
しかし、それでも判決が下りるまでは
「起訴休職処分」
という手続きを経るのが労働法上必要です。
先般、経済産業省でインサイダー事件の逮捕者が出ましたが、このときもいきなり解雇とはせずに、起訴休職処分としているでしょう。
休職処分自体は適法ですから、万が一後に無罪となってもさかのぼって給料を支払え、なんて話にもなりません。とにかく拙速は禁物です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00183_企業法務ケーススタディ(No.0138):競売申立てをすると脅された!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
航行理工株式会社 代表取締役 田中 曲樹(たなか きょくじゅ、40歳)

相談内容: 
ウチは戦後65年間、町工場をやってきました。
人工衛星や宇宙船に使われる部品もウチで作ってたりして、ウチの技術力は銀行さんたちからは高い評価をいただいてます。
ついこないだ、リスケもさせていただきました。
実は、資金繰りに困って、金融コンサルタントの遠藤とかいうヤツから、500万円を借りて、いわれるがまま、ウチの工場がのっかってる土地に第4順位の抵当権を設定しました。
そうしているうちに返済日が来てしまったわけなのですが、遠藤からは、
「貸した500万円と利息をとっとと返せ。
返さないんだったら、ウチは抵当権者やから、正々堂々と抵当権を実行させてもらいまっせ。
そしたら、おたくの工場も困るでしょ?
せっかく銀行さんたちにリスケもしてもらってるんだから、親や親戚から借りてでも返したほうがええと思いますけどな」
なんて、いわれているんです。
第1順位から第3順位の銀行からは合計で1億借りているんですが、この土地の時価は5千万円しかありません。
遠藤のヤツが抵当権実行しても、遠藤のところには入らないんですがねえ。
せっかく銀行と交渉してゲットしたリスケがもったいないですから、ここは、親や親戚に土下座してお金を借りて、遠藤に返さないといけないんですかねえ。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:抵当権とは
抵当権とは、不動産の占有を移転しないまま、債務の担保とした不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利をいいます。
平たくいえば、不動産を借金のカタに入れるが、時が来るまではそのまま使うことが許されるけれども、借金が払えないと(つまり、債務不履行が発生した場合です)、抵当権が実行=競売にかけられてしまって、抵当権者がその代金をもっていってしまう、という制度です。
この抵当権には第1順位、第2順位と、順位付けをすることができて、順位が優先する者から、登記簿上記載された額に達するまで、債権を回収できます。
例えば、第1優先順位の抵当権者が1千万円、第2優先順位の抵当権者が500万円の抵当権を持っている場合で、その土地が1200万円で実行=競売されたとすると、第1優先順位の抵当権者は1千万円全額を回収し、第2優先順位の抵当権者は200万円しか回収できません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:無剰余取消しとは
抵当権者としては、不動産の価格が低迷している時点では、
「もうちょっと待ってみて、不動産価格が上がってから、競売を実施したい」
という希望を持つことがあります。
この場合、自分に優先する抵当権者が競売を実施するのであれば、自分に優先する抵当権者が既に存在することを覚悟して抵当権者となったのですから、まだ諦めがつくかもしれません。
しかし、自分に劣後する抵当権者(つまり、自分の後から、抵当権者となった人です)が、後からやってきて、かつ、自分の債権額全額が弁済されない、不利な時期に、あえて抵当権を実行(競売の開始)してしまう場合には、優先する抵当権者としては、
「ナニ余計なことしてるんだよ!」
ということになりますし、後からやってきた抵当権者に余計なことをされるリスクを敬遠して、抵当権者となる者がいなくなってしまうことになりかねません。
そこで、法律は、
「自分が抵当権を実行しても、自分のところには配当がまわってこない場合」
(つまり、自分に優先する抵当権者も、債権全額を回収できない場合です)
には、
「無剰余」(余りが無いこと)
として、抵当権の実行を禁止しているのです。
無剰余なのにあえて実行を申し立てると、裁判所から、
「無剰余取消」
をされて、競売手続きが取り消されます。

モデル助言: 
今回のケースでは、遠藤さんに優先する第1~第3順位のところで土地の代金がすべて取られてしまいます。
この状況では、第4順位の遠藤さんのところは、抵当権を実行しても、1円も回収できません。
これは、
「無剰余取消」
の典型例ですから、裁判所は遠藤さんが抵当権を実行しようとしても、
「無剰余取消」
をするでしょうね。
ただ、この
「無剰余取消」
には例外がありますが、
1 「優先債権者の同意」
は、せっかくリスケをした銀行さんたちが応じるとは思えませんし、
2 「剰余を生じる見込みがあることを証明する方法」
つまり、この土地が1億円以上で売れることを証明するのは、不可能でしょう。
あとは
3 「優先債権の見込額の合計を超える額を申し出て、その額を超える買い受けの申し出がなければ、自分で買い受けることを申し出たうえ、同額の保証を提供する必要」
つまり、優先する銀行さんたちの債権額を面倒みてやる場合には、銀行さんたちの利益は害さないから、抵当権実行でもなんでもやってくれ、というものがありますが、遠藤さんが経済合理性を無視してそこまですることはないでしょうね。
ですから、基本的には、遠藤さんからの内容証明はタダの脅しでしょうから、放っておいていいのではないですか。
気になるなら、これら1から3を調べてみましょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00182_企業法務ケーススタディ(No.0137):ドライバーに仕事させ過ぎて、事故になったけど、流石に、「社長が逮捕」とかないでしょ!?

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
ゼブラー運送株式会社 代表取締役 相加 鷲男(あいか わしお、50歳)

相談内容: 
先生、何だか納得いかないことがあるんですよ。
確かに俺は、若い頃やんちゃしていましたけど、今では、故郷の徳島県を中心に、大型トラック5台使って、真面目に運送業を営んでいるんです。
でも、この前、ウチの若いのが、東京まで建築資材を運んでいる時に、東名高速で高速バスや乗用車と玉突き事故を起こしちゃいましてね。
まぁ、幸い、死者は出なかったものの、そいつが自動車運転致傷罪で逮捕されてしまったから、お陰で、そいつの“穴”を埋めるために、俺も含めて残った連中で運転シフトを倍にしなければならなくなったし、みんな、今まで以上に睡眠不足ですよ。
で、最悪なことに、そいつ、警察の取り調べで、
「シフトがきつく、いつも睡眠不足でトラックを運転させられていた」
とか余計なことをしゃべっているみたいなんです。
この前なんか、俺が警察署に呼ばれて、
「運転手の業務管理は一体どうなっているんだ!」
とか
「無理やり運転させていたんだろう!」
とかって思いっ切り怒られたし、マスコミに叩かれるは、クライアントからは大目玉を食らうは、もう踏んだり蹴ったりです。
運転中の事故の責任ったって、使用者責任とかっていう民事責任なんてのは知ってますが、刑事事件に問われるのは、事故った本人だけでしょ?
会社がとばっちり受けるはずないですよね!?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:過労運転の禁止
道路交通法は、
「何人も、(中略)、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」
と規定し、これに違反した者に対しては、
「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」
を科すなどして、過労運転等を禁止しています(道路交通法第66条、第117条の2の2第5号)。
「自動車」
というものは、時には数トンもの荷物を積んで、時速100キロ超で移動する鉄の塊なわけですから、ちょっとした体調不良や疲れがその運転に及ぼす影響は大きく、その影響が招来する事故の規模も、時としてトンデモナイ大事件となります。
そこで、法は、罰則を設けてまで、このような
「正常な運転ができないおそれがある状態」
での運転を禁止し、トンデモナイ大事件を未然に防ごうとしているのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:過労運転の下命
ところで、便利とはいえ、存在自体に危険をはらむ自動車ですから、その運転者だけに
「運転するときは体調管理をしっかりせよ」
といった義務を課しても、自動車の運転が会社の業務として行われているような場合には業務命令を拒否することもできませんので、これでは実効性を欠いてしまいます。
そこで、道路交通法は、自動車を実際に運転する
「運転者」
だけではなく、運送会社など、業務上、自動車を使用する(させる)者などに対しても、
「その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、『過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転すること』を命じたり、これらの行為をすることを容認したりしてはならない(道路交通法75条4号)」
ことを義務付け、いわゆる
「過労運転の下命」
を禁止しているのです(これに違反した場合、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます〈道路交通法117条の2の2第7号〉)。
実際に、昨年の6月、大阪府茨木市の名神高速で2人が死亡するなどした玉突き事故で、
「大型トラックの運転者が、過労で正常に運転できない恐れがあると知っていたにもかかわらず、愛知県豊橋市から兵庫県たつの市への建材の運搬などを命じた」
として、勤務先である運送業者の所長らが、道路交通法上の
「過労運転の下命」
を理由に逮捕されるといった事件が発生しております。
この事件では、大型トラックの運転者は、週のうち6日間は1日約700キロの運転をし、車内での寝泊まりを余儀なくされていたとのことで、業務管理上の問題も指摘されております。

モデル助言: 
「過労運転の下命」
は、2007年9月の道路交通法改正によって、それまでの
「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」
から
「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」
に一気に厳罰化されていますし、もはや、
「運転の際の体調管理は自己責任。事故を起こすのも自己責任」
として言い逃れすることはできません。
ゼブラー運送さんも、随分、無茶な運転シフトを組んでいたようですね。
確かに、長距離トラックの運転手が体力商売だということも、他の運送業者との競争に勝ち抜くためにはやむを得ないということも理解できます。
しかし、今回の件はこっぴどく怒られただけで済んだからいいものの、逮捕された従業員の“穴”を埋めるために、さらに運転シフトを倍になんかしたら、今度こそ、ホントに
「過労運転の下命」
を理由に逮捕されますよ。
早く、新しい従業員を募集するなどして、業務体制を改善してください。
それと、あまり過酷な業務体制を継続していると、今度は、労働災害の防止のための危害防止などを怠ったとして、労働安全衛生法違反として、労働基準監督署にもにらまれてしまいますよ。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00181_企業法務ケーススタディ(No.0136):この作品の著作権は会社のもの? 制作者個人のもの?

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社ジャンルブレイカー 代表取締役 本川越 龍也(ほんかわごえ たつや、35歳)

相談内容: 
数年前までは地味なイタリアンのオーナーシェフだった私も、先生も知ってのとおり、深夜番組に出るようになってから、
「辛口の評価と芸人とのカラミができる料理人」
としてブレイクし、現在では、新しく立ち上げた会社で、さまざまな商品をプロデュースするようになってんだよね。
ちなみに、どう?
その
「コーラ&プリン」。
プリンの甘さの中にコーラの刺激を閉じ込めながら、コーラのカラメルをも利用しようって意欲作。
そうそう、今日は、プロデュース商品の上に、唐がらしをベースに俺のイケてる顔をデフォルメしたキャラクター
「ピリ辛たっちゃん」
の著作権について相談しに来たんだ。
このデザインは、日本で仕事を探していた中国人デザイナーに会社の手伝いをさせたときに作らせたものなわけ。
多分そいつが、俺が売れるようになったのを知って、コンビニとかで商品を見つけたんだろうね。
「“ピリ辛たっちゃん”は、昔私がデザインしたもの。
著作権は私にあるから使うな。
使いたかったら、金払え」
なんて連絡が来たんだよ。
「正規の従業員なら著作権は会社のモノだけど、私は、観光ビザで訪日してただけだし従業員の訳ないんだから私のモノ!」
とかいってんだけど、著作権ってそういうものなんですか?
給料払ってたのに、そんな言い種ありなの?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:職務著作とは
職務著作(法人著作)とは、従業員が創作した著作物について、使用者である企業に
「著作者」
の地位を直接与える制度です(著作権法15条)。
特許法にも類似の制度(職務発明)がありますが、こちらはあくまでも
「発明者」
は発明を行った当該従業員であり、
「職務発明と認められる場合には会社が相当な対価を従業員に支払って特許を承継する」
にすぎず、法人がいきなり
「著作者」
となる職務著作とは大きく異なっています。
このように著作権法において、著作者が
「会社」
とされているのは、会社のコスト負担の下で著作物が創作されているという経済実態はもちろん、
「著作物をライセンスする等のさまざまな利用場面では、権利者を法人にしておくほうが権利処理を簡素化できるし、便宜である」
ということに理由を求められるでしょう。
さて、職務著作となる要件についてですが、著作権法第15条1項を整理すると、
「1 著作物が法人等の「発意」に基づいて作られたものであり、
2 これが「法人等の業務に従事する者」によって、
3 「職務上」作成された著作物であって、しかも、
4 法人等が「自己の著作の名義」の下に公表する
ものであること」
が要請されています。
もちろん、雇用契約等で著作権の帰属について別途の定めがあれば別ですが、基本的には、
「使用者である企業が『~を作れ!』と従業員に命じて作らせ、その著作物に企業名を付して発表する予定」
であれば、職務著作が成立し、著作者は会社となる、と考えることができます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「業務に従事する者」
本件では、
「観光ビザで来ていたんだし従業員の訳がない!」
などという文句が付けられているのですから、デザイナーが、
「業務に従事する者」
に該当するかどうかが問題となります。
一般的に当該要件は、雇用関係にある従業員や役員であれば問題なく該当するとされていますが、本件では明確な雇用契約の締結もないようです。
このような場合であっても、形式だけを見て職務著作の成否を考えるのではなく、前記の職務著作制度の意義から実質を検討しなくてはなりません。
実際、同種事例において最高裁は、
「指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべき」(最判2003年4月11日)
として、形式ではなく実質を見るべきであると判断しています。

モデル助言: 
確かに、雇用契約書もないし、観光ビザで来ていたデザイナーだし、雇用保険の手続も踏んでいないなどということですから、形式だけを見れば従業員とは言い難いでしょうね。
そのような形式的価値判断から
「業務に従事する者」
にはあたらないとしたのが上記判例における高裁の判断でしたが、最高裁は、
「どれくらい指揮監督が及んでいたのか?
業務内容はどうだったのか?
しっかり実態を見ろ!」
と一喝して高裁の判断を破棄しています。
本件でも実態を見てみると、キャラクターのデザインだけが業務内容とされていますし、それの対価として毎月給料を支払っていたんですよね?
今は、労働法が問題となっているわけではなく、著作権法が問題となっているのですから、最高裁に従う限り、デザイナーは
「業務に従事する者」
に該当する可能性が大いにあると思いますので、このあたりを意識しながら、最高裁判例を提示しつつ交渉してみましょうか。
しかし、観光ビザで来たデザイナーをそのまま雇った形にしておくなんて、不法就労として出入国管理法違反等に問われかねない話ですから、別の意味で注意が必要ですね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00180_企業法務ケーススタディ(No.0135):訴えを捨て置くと、株主から訴えられるぞ!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
スカーレットコミュニケーション株式会社 鍬形 恵理(くわがた えり、35歳)

相談内容: 
ITベンチャーのわが社も、ようやく年商20億円が達成できました。
ところが、最近、某大手企業グループに属する2部上場のメーカーさんに納入したソフトについて、
「ニーズに合わない」
とかイロイロ難癖を付けられて、代金を払ってもらえなかったんです。
その額なんと2億円。
ウチの年商の1割ですよ。
訴訟やるにしても、時間や弁護士費用も嵩むわで無理ですよ。
何より、相手が大手企業グループに属する会社さんですから、訴訟なんか起こすと、どこで仕返しが待っているかも分かりません。
それで訴訟は見送ろうとしていたその矢先に、今度は株主さんが文句を言い始めまして。
アメリカ在住のO’Haraさんという株主がいるんですが、激怒ですよ。
話をまとめると、
「裁判なんてやってみいひんとわからんのに、何、ハナから諦めんとんねん。『江戸の仇を長崎で討たれる』てか。何ぼけカマシとんねん。オマエがそこまで根性なしやったら、こっちが株主代表訴訟起こして、オマエら取締役全員から損害賠償搾り取ったるさかい、覚悟しとけ」
ゆうことですわ。
でも、勝てるかわからん訴訟ですし、相手が怒って、取引が生きている別のグループ企業から仕事干されたらどうするんですか!
一体、私はどうすればいいんでしょう!?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:会社財産を管理する義務
取締役は、会社と委任契約を締結した受任者としての立場をもちます。
この義務の内容・水準は、
「医者の患者に対する義務」

「弁護士の依頼者に対する義務」
と同様のものと理解されており、取締役は、
「経営の専門家」
として、プロフェッショナル水準にて会社の利益を守る義務を負っています(善管注意義務。会社法330条、民法644条)。
この義務のひとつとして、取締役は、会社の財産を適切に管理・保全する義務を負っているとされます。
会社の財産が債権である場合には、適切な方法によってこれを管理するとともに、回収を行う義務を負っているとされます。
O’Haraさんの主張どおり、会社がある債権を有しており、ある時期においてその回収が可能であったにもかかわらず、取締役が適切な回収を実施せず、かつ、そのことに過失が認められる場合には、取締役の善管注意義務違反として、会社に対して損害賠償責任を負担することになります(会社法423条1項)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:不提訴が取締役の善管注意義務となるケース
では、具体的に、いかなる場合に、取締役が
「適切な回収を実施」
しなかったといえるのでしょうか。
「会社に債権があるが、債務者が支払わない場合にはとにかく訴訟を提起しなければならない」
というのでは、会社は勝訴する見込みもなかったり、あるいは、勝訴しても、相手が無一文で回収できない場合にすら訴訟を提起しなければならなくなり不合理といえます。
すなわち、
「訴訟を提起するか否か」
については、ビジネスジャッジメントとして、
「経営のプロ」
である取締役に、訴訟提起に伴うメリットデメリットを判断させる裁量(経営裁量)を与える必要性もあります。
この点、東京地裁2004年7月28日判決は、
「1 債権の存在を証明して勝訴し得る高度の蓋然性があったこと
2 債務者の財産状況に照らし勝訴した場合の債権回収が確実であったこと
3 訴訟追行により回収が期待できる利益がそのために見込まれる費用等を上回ることが認められること」
という要件を定立し、これらが充足されるにもかかわらず、取締役が提訴を放置した場合には、会社財産たる債権の適切な維持・管理を怠ったとして、善管注意義務違反を構成すると判示し、これは、東京高裁、最高裁でも支持されています。
つまり、
「勝訴が見込め、相手に財産があって回収でき、回収額が訴訟費用よりも上回る場合」
には、取締役は訴訟を提起すべきである、としているのです。

モデル助言: 
裁判例では、先の要件をすべて満たす場合には、訴訟提起は義務的であるが、そうでない場合は、取締役の胸三寸で決めていい、ということです。
とはいえ、
「勝訴の蓋然性」
等の判断の前提となる資料は、
「取締役が訴訟を提起しないとの判断を行った時点において収集可能であった資料」
を含む、とされていますから要注意ですね。
「経営のプロであれば通常集めることができたはずの資料」
を、取締役が怠慢によって集めなかった場合には、結果として
「提訴すべきものを放置した」
と非難されて、損害賠償責任を負担する結果になり得ます。
ロクな調査もせず、素人感覚で
「これでは確実には勝てない」
等と速断するのは危険です。
今回は売上の大部分を占める2億円もの額です。
株主の不満や怒りもごもっともですよ。
本件については、私のほうで勝訴可能性を調べてレポートします。
その上で、取締役会を開いて、訴訟提起の是非について議論して決議した方がいいですね。
株主もそう多くないので、臨時株主総会を開催して、説明や報告をしてもいいと思います。
なお、グループ企業が今どき
「江戸の仇を長崎で討つ」
なんて嫌がらせをしたら、それこそ独禁法違反の不公正な取引方法として訴えるべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00179_企業法務ケーススタディ(No.0134):会社私物化のリスク

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社林家ホールディングス 代表取締役会長 林 正蔵(はやし しょうぞう、48歳)

相談内容: 
ウチは、おじいちゃんの代で会社を立ち上げ、そこから、3代目の私で株式公開を果たし、そこそこの規模の企業グループにまで成長しました。
上場つっても、ま、会社の株の大半はウチのファミリーが保有しており、上場基準に抵触しない程度に浮動株がチョロチョロある程度。
ま、いったら、ウチは、文字通り、林ファミリーのオーナー企業みたいなもんです。
で、ですね。
私も調子に乗って、飲食業やら不動産業やらビル建設やら慣れないサイドビジネスに手を出しちゃいまして、これが、あっという間に全部失敗。
先祖伝来の屋敷についた担保が実行される状況に陥りました。
ま、負債といっても、わがファミリーがもっている弊社株の時価総額で十分賄える範囲のもので、カネがないというわけではありません。
そこで、急場をしのぐためにカネが余っている複数の子会社からカネを借り、ギャーギャーとうるさい債権者に返済しました。
そしたら、弊社株をほんのちょっぴり保有している弊社親戚のおじさんが、電話をかけてきて
「株主の1人として、物申す。お前のやってることは何から何まで違法だ! 刑事告訴をしてブタ箱にぶち込んでやる!」
なんてブチ切れてんですよ。
ま、分家筋で妬みやっかみもあるんでしょうが、ほんと言いたい放題でしたよ。
ただの借金に大袈裟なんですよ。
そりゃ今すぐ返せっていわれても、株式市場は今低迷していますから、無理ですよ。
でも、1年ばかし様子をみて、株を売却してきちんと返済するつもりですよ。
まあ、借り方はちょっと強引だったかもしれませんが、
「オーナーが会社からちょいと寸借したくらいで、ブタ箱行き」
なんて物騒な話はないですよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:役員と会社との融資取引
取締役は、会社に対して善管注意義務を負っています。
これは、
「会社の利益を最大限にするように、取締役として全力を尽くすように」
という、会社と取締役との間の委任契約に根拠を有しています(会社法330条、民法644条)。
また、この義務は、別名、会社に対する
「忠実義務」
ともいわれるものであり、会社の利益を横取りするなどして会社を裏切るようなことは法令違反とされています(会社法355条)。
そして、役員が会社からの借り入れる取引については、
「有利な条件で融資を受けたい取締役の思惑」

「確実な担保を取り、高い利息を設定したい会社の利益」
とが矛盾・衝突する契約(利益相反取引)となります。
このような会社の利益を損ねる危険性のある取引を行うには、当該会社の取締役会等の法定機関で当該取引を承認する決議を経由すべきことが法律上要請されています(会社法356条、365条)。
本件では、
「借り方はちょっと強引だったかもしれません」
ということですから、この種の手続きを経由していない可能性もあり、取引の有効性自体に疑問が残るところです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:特別背任罪
オーナー役員が自分がコントロールする企業から融資を受けるという場合、民事上、取引の有効性が否定されることや、役員が損害賠償責任を負うことに加え、刑事罰を受けるリスクまで想定すべきなのでしょうか。
「会社を取り巻く多数の利害関係者を調整する」
という目的を有する会社法は、役員による会社の私物化行為について、民事的な責任に加え、刑事罰による制裁を予定しています。
すなわち、会社の役員が、
「自己もしくは第三者の利益や会社に損害を与える目的」

「その任務に背く行為」
をし、
「会社に財産上の損害を加えた」
とき、特別背任罪として、厳しい処罰される可能性があるのです。
その意味では、
「オーナーが会社からちょいと寸借したくらいで、ブタ箱行き」
という親戚のおじさんの話もあながち誇張ではない、ということがいえます。

モデル助言: 
特別背任罪ですが、犯罪構成要件は、刑法上の背任罪とあまり変わりませんが、会社役員の責任と権限の大きさに鑑み、刑罰を加重しており、10年以下の懲役、1千万円以下の罰金あるいはこれらの併科という重罪とされております。
また、未遂でも処罰されることになっており、想像以上に厳しい内容なっています。
林さんが通常の利息より好条件で融資を受けていた場合、その差額分が
「会社に対する損害」
と認定されるおそれは十分ありますし、想定外の事態が起こって、返済が滞ったり、返済そのものが難しい状況になったら、それこそ大問題です。
とにかく、大問題にならないうちに、金融機関と再度交渉するなりして外部からきちんと調達したお金で会社に対する借入全部を早急に返済しておくべきです。
それでも事態が沈静化しないようであれば、いったん取締役を辞任するなりして責任を取った形にするなどの処置を取っておいたほうがいいかもしれませんね。
100%オーナー会社から脱却し、株式公開したわけですから、公私混同はご法度です。
よく肝に銘じておいてください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00178_企業法務ケーススタディ(No.0133):定期賃貸借の罠

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
西塚食品株式会社 代表取締役 西塚 英彦(にしづか ひでひこ、49歳)

相談内容: 
先生、ウチの会社、今度、ファストフード業界に進出するんです。
え? 何? この不況下で外食なんて大丈夫かって?
それは、ご心配なく。
安い、大盛り、メタボ、を合言葉に、大盛りのご飯のどんぶりにカレーとトンカツと牛すきをのっけた
「メガメタボ丼」
ってのを主力にしたファストフード店をチェーン展開していくんですよ。
でも、なかなかいい物件が見つからなくって困っていたんですけど、友人の紹介でM&Aで買った
「メグミの大地」
っていう八百屋チェーンが都内に10店舗の店舗を持っているんで、そのうちの一部の店舗をリニューアルしてオープンすることにしたんです。
その名も
「命知らずのメタボ達!」
もともと、八百屋だったから、キッチンを作ったりして、結構、造作費用がかかったんですけど、まぁ、うまいもののためなら、背に腹は代えられません。
ところで、この前、店を改装する際、店のオーナーに挨拶に行ったら
「この店は定期賃貸借だから、あと1年で期間満了だよ。
ま、これまでメモ書きみたいな覚書でやってたけど、この機会に契約書もちゃんと作っておくから、これにサインしておいて」
なんつって、なんか契約書みたいなの、渡されました。
でも、これって、期間がきたら更新できるんですよね。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:借地借家法における契約期間更新のルール
賃貸借契約とは、当事者の一方が他方に物の使用等をさせ、これに対し相手方は使用等の対価を支払うことを約束する内容の契約です。
民法は、賃貸借契約の
「期間」
について、
「賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。
契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする(604条)」
と定めるのみで、あとは、当事者間で自由に決めてよいという建前をとっております(私的自治の原則)。
ところで、期間が満了する際、それまでと同一条件で、または若干の変更を加えた上で、賃貸借契約を継続させることを
「更新」
といいますが、この点についても民法は、更新が可能かどうかや、その際の条件等については、原則として当事者間の合意に委ねております。
とはいいながら、ふつう、物を貸す側(大家)と借りる側(店子等)とでは、前者の立場が圧倒的に強いわけで、貸す側としてみれば、もっと良い条件で借りてくれる候補者がいれば、借りる側が賃借物の造作等にどんなに費用をかけていたとしても、
「次に入る人が決まっているんで、契約が終了したら、とっとと出ていってくれ。
あん? 更新? そんなの絶対にだめ」
となってしまうことがままあります。
そこで、圧倒的に弱い立場の借りる側を保護すべく、借地借家法は、
「貸す側は、期間満了の6か月前までに、更新を拒絶する意思表示をしなければ、賃貸借契約は同一条件で更新されたとみなす(「みなす」とは、更新の効果を争うことは一切できないという意味です)」
「さらには、借りる側にカネをつんだり、どうしても自分で使わなければならない等、更新拒絶の正当事由の存在を証明しない限り、更新の拒絶はできない」
と定め、両者の力関係の調整を図っています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:定期賃貸借
ところが、前記の借地借家法の規定だと、何だかいつまでも更新が繰り返されてしまいそうですし、実際に、裁判例も、借りる側に有利になるよう、
「正当事由の存在」
についてとても厳しく判断しており、これでは、逆に不動産オーナーにとってあまりに不当な結果となりますし、これでは、優良不動産の有効活用ができなくなってしまいます。
そこで、借地借家法において、“例外の例外”ともいうべき
「定期賃貸借」制度
が設けられるようになりました。
これは、賃貸借契約期間を一定期間とする契約で、一定の要件を充足した定期借家契約は、どんな理由があっても更新は許されない、というものなのです。

モデル助言: 
オーナー(賃貸人)との間の契約が
「定期賃貸借」契約
であれば、どんなに高額の費用を投資して店舗を改装していたとしても、期間が満了すれば、契約は終了し更新はできません。
どんなに泣きついたって、
「定期賃貸借」契約
の場合の契約期間は絶対です。
したがって、せっかくオープンした
「命知らずのメタボ達!」
も、有無をいわさず閉店しなければなりませんよ。
もっとも、
「定期賃貸借」契約
は、強行的な内容になっていることとのバランス上、契約の成立が認められるためには、いくつかの条件があります。
ひとつは、
「必ず、契約の内容を書面にすること」
もうひとつは、
「この賃貸借契約は更新できません、といった文書を交付して説明すること」です。
西塚さんの場合、どうやら、契約書も上記の説明文書もないようなので、店のオーナーが勝手に、
「定期賃貸借契約だ!」
といっているだけの可能性が大きいです。
状況次第では、そもそも
「定期賃貸借」契約
は成立せず、更新が認められそうですので、大切なお店も継続できそうですね。
とはいえ、契約の内容が
「定期賃貸借」
か否かは、投資回収期間を考える上で大きな要因になりますので、これを機にきっちりと勉強しておきましょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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