00422_長年続いてきた契約をいきなり終了する場合の法的リスク

わが国の取引における基本的ルールとして、誰とどのような契約をしようが一切自由である、とされています(契約自由の原則)。

これは、
「取引社会に参加する者が、それぞれ己の知力や財力を最大限に活用して、自由に契約交渉を行い、互いに競争させる基盤を確保することが、市場経済の発展には必須である」
という考えに基づくものであり、資本主義的自由競争国家である日本にとっては国是ともいえる法理です。

契約の自由の原則は、契約をぶった切る自由(契約終了の自由)も保障しております。
したがって、
「契約期間2年の契約を3回更新して合計6年間にわたってお付き合いをした後、より好条件の相手が見つかったので、更新を拒否し、それまで世話になった相手をボロ雑巾のように捨て去り、新しい相手に乗り換える」
ということも本来自由です。

とはいえ、長期間、強固な信頼関係の下に反復継続して更新されてきた契約関係を、一方当事者が全く自由気ままに解消できることを許すと、他方当事者にとって死活問題となるほどの打撃を被らせることになり、あまりに衡平の理念に違背します。

このようなことから、一定期間反復継続されて更新されてきた継続的契約において、更新拒絶が他方当事者にとって不当な打撃を被らせるような場合には、一定の要件の下、
「継続的契約の自由勝手な更新拒絶」
に対する歯止めをかける裁判例が登場するようになりました。

裁判例としては、
「契約の有効期間を1年間とし、期間満了3か月前までに当事者のどちらか一方が通知すれば、契約を終了させる」
との約定があった事案について、札幌高裁1987(昭和62)年9月30日判決は、
「契約を存続させることが当事者にとって酷であり、契約を終了させてもやむを得ないという事情がある場合には契約を告知し得る旨を定めたものと解するのが相当である」
と判示しました。

これ以外にも、複数の裁判例が、
1 「製品の供給を受ける側が、契約の存在を前提として製品販売のために人的物的投資をしている場合など、取引が相当期間継続することについての合理的期待が生じていたと認められる場合」であって、
2 「製品の供給をする側もその期待を認識していた場合」には、
公平原則又は信義誠実原則に基づき、契約の継続性が要請されるなどとして、継続的契約の更新拒絶に合理的理由を求めるべし、
としています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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