02046_海外で流行のサービスコンセプトの名称を使ってビジネスを展開したら商標権侵害だからビジネスを停止せよと通知が届いた(教えて!鐵丸先生Vol. 58)

<事例/質問>

日本ではまだそれほどメジャーではないものの、海外ではすでに流行しているサービスコンセプトの名称を使ってビジネスを展開し始めたところ、その名称がすでに商標登録されているという理由で、商標権侵害だから即刻ビジネスを停止せよという通知が届きました。

通知には弁護士の名前がずらりと並び、社内は大混乱です。

すぐに謝りに行ったほうがいいのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

商標登録した権利者には、その商標を独占的に使用する権利が認められています。

これを侵害された場合、侵害行為を止めさせるための強力な
「武器」
を使用できます。

具体的には、無断で他人が土地に入ってきた場合に
「出て行け」
と言うように、侵害行為の差止め請求ができ、損害が発生していれば
「罰金を払え」
と損害賠償を請求できます。

さらに、
「侵害行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な措置の請求」
という手段もあります。

これは、たとえばエルメスの偽物が作られた場合に、その偽物をすべて廃棄させるようなものです。

今回の場合、
「海外ではすでに流行り始めているサービスコンセプトの名称」
ということなので、その名称が一般的に使用されている普通名称である可能性があります。

普通名称は識別性がないため、商標として保護されないことがあります。

これは、
「これはあんたの土地ちゃう、みんなが使える公共の広場やで」
というような状況に似ています。

したがって、相手の商標自体が無効である可能性があり、その場合は商標の登録を取り消す手続き
「無効審判」
を請求することが考えられます。

通知書に驚いてすぐに謝りに行く必要はありません。

まずは相手の商標が本当に有効かどうかを慎重に検討しましょう。

商標が普通名称などで識別性がない場合、無効審判を請求して相手の商標登録を無効にすることができるかもしれません。

以前、私が関わったケースでも、相手が商標登録を盾にして脅してきましたが、こちらが
「その商標は普通名称で識別性がないため無効だ」
と主張すると、相手は譲歩しました。

結果として、ライセンス契約を結び、損害賠償を受け取ることができました。

このように、すぐに謝罪するのではなく、まずは冷静に法的な立場を確認し、相手の主張が有効かどうかを見極めることが重要です。焦らずに対策を講じましょう。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/79717

※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組の4番です

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02045_登録した商標を無断で使って他人が書籍を出版している!(教えて!鐵丸先生Vol. 57)

<事例/質問>
登録した商標と同じ名前を、他人が無断で使って書籍を出版しているという事例について相談です。

登録の際に指定した商品区分には書籍制作も含まれています。

さらに、その人がテレビで本の宣伝をするなど、商標を利用して活動しています。

どのように対処すればよいでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

商標登録をしている権利者には、その商標を独占的に使用する権利が認められています。

この権利を侵害された場合、権利者は侵害者に対して法的手段を取ることができます。

たとえば、無断で土地に侵入してきた不審者に対して
「出て行け」
と言うのが侵害行為の差止め、
「罰金を払え」
と言うのが損害賠償請求です。

これらは権利を守るための強力な
「武器」
となります。

今回の場合も、まずは相手に対して商標権侵害を指摘し、警告を行うことが必要です。

商標権侵害に対する具体的な対応策としては、侵害行為の差止めや損害賠償請求が考えられます。

また、
「侵害行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な措置の請求」
という法的措置もあり、これはたとえば違法に作られた商品をすべて廃棄させるといったものです。

しかし、商標の無断使用者は、自分が他人の権利を侵害していることに気づいていないことが多いです。

そのため、
「あなたが使用している名前は私の商標を侵害しています」
ということをまず知らせることが重要です。

これを伝えるだけでも、相手が侵害を認識し、話が進むことがあります。

この武器を使った警告と話し合いで解決を目指し、話し合いでも埒があかない場合には、訴訟を提起することになります。

しかし、訴訟を起こすと労力とコストが大きくかかるため、現実的な解決策として、ライセンス契約を結んで使用料を得る、または商標権を買い取ってもらうなどの交渉をして、落とし所を探すのが現実的な手法です。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/77667

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02044_裁判で裁判官同士の意見が割れて大喧嘩・トラブルになることはないの?(教えて!鐵丸先生Vol. 56)

<事例/質問>

裁判で、裁判官同士の意見が割れて大喧嘩したり、トラブルになったりすることはないのでしょうか?

微妙な案件で普通に意見が割れて揉めそうですが。

また、上司のような立場の人から
「あんな判決では出世できないよ」
と言われることはないのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

裁判官は完全に独立した存在であり、上司や親会社のような存在はありません。

判断内容について誰からも文句を言われることはなく、逆に上司の立場の人が裁判官に干渉することは厳しく制限されています。

憲法第76条第3項には
「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」
と規定されており、裁判官は誰の命令にも従わず、独立して職務を遂行することが保障されています。

この独立性は絶対的であり、地裁のヒラ裁判官であっても、地裁所長や高裁長官、さらには最高裁長官、内閣総理大臣や天皇陛下、アメリカ合衆国大統領であっても、裁判官の判断に介入することは許されません。

裁判官は、まさに
「天下御免の侍」
のようなもので、誰の影響も受けずに自分の良心と法のみに基づいて判決を下すことができるのです。

日本の裁判制度においては、約3000人の裁判官がそれぞれ独立した
「専制君主」
として法を解釈し運用する権限を持っており、この体制が実際に存在しています。

裁判官は、まるで各自が小さな王国を治めるかのように、独立した権限で法律の適用を行います。

このため、裁判官同士の意見が割れることはありますが、それが直接的なトラブルや喧嘩に発展することはほとんどありません。

むしろ、異なる視点からの議論が行われることで、より公正で慎重な判断が導かれるのです。

歴史的な例として
「平賀書簡事件」
があります。

1970年代に札幌地裁で進行していた
「長沼ナイキ訴訟」
に関連して、札幌地裁所長だった平賀健太氏が、担当裁判長の福島重雄氏に訴訟判断についてのアドバイスをメモで渡しました。

この行為は、裁判官の独立性を侵すものとして大問題となりました。

平賀所長の行動は、憲法第76条第3項に違反するものであり、後に注意処分を受けました。

「長沼ナイキ訴訟」
とは、航空自衛隊が北海道にナイキ地対空ミサイル基地を建設しようとした際、地域住民が保安林解除の違法性を訴えて提訴した事件です。

住民は
「保安林解除は違法であり、基地建設には公益性がない」
と主張しました。

この事件で福島裁判長の合議体がどのような判断を下すかが注目されていましたが、平賀所長は
「原告の訴えを却下するように」
と示唆するメモを渡したのです。

この事件で注目すべきは、福島裁判長が平賀所長の指示を無視し、逆にそのメモを公開したことです。

結果として
「平賀書簡問題」
として社会的に大きな話題となりました。

この事件は、裁判官が独立して職務を行うことの重要性を再確認させるものとなりました。

このように、裁判官は独立して職務を行うことが求められ、外部からの干渉を受けることなく、自らの良心と法律に基づいて判断を下します。

日本の裁判制度において、裁判官はその独立性と専門性をもって法の公正な適用を担う役割を果たしています。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/76125

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02043_裁判所が下す判決で変な判決やおかしな判断はあるか?なぜ出るのか?(教えて!鐵丸先生Vol. 55)

<事例/質問>

裁判所が下す判決で、変な判決やおかしな判断はありますか?

そうした判決はなぜ出るのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

裁判所の判決には、一般の感覚からすると変わったものやおかしな判断に見えるものが確かにあります。

これは、裁判官が独立して職務を行い、自分の判断で判決を下すことができるためです。

憲法第76条第3項では
「裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」
と規定されています。

裁判官はその良心に従って判断を下すことが求められており、誰の指図も受けません。

たとえば、私立小学校で学級委員を決める際に、生徒の住む地区によって投票権を不平等に配分する教師がいたら、その教師は解任されるでしょう。

しかし、日本の国政選挙では、鳥取県や島根県などの人口が少ない地域の有権者が、東京都や神奈川県などの都市部の有権者に比べて相対的に多くの票を持っています。

このような不平等が長年にわたり続いていますが、最高裁判所は
「違憲とは言えない」

「違憲だが重大ではない」
と判断しています。

このような判決が出る理由の1つは、裁判官が専門的な視点から法律を解釈し、判断しているからです。

法の専門家としての視点を重視することで、時には一般の感覚とずれることがあります。

その結果、
「変な判決」
と受け取られることがあるのです。

また、裁判官の選定プロセスも影響しています。

裁判官は司法試験に合格し、その後の研修を経て任命されますが、選挙で選ばれる国会議員とは異なり、民主的な基盤がありません。

そのため、国民の意見や感覚と異なる判決が下されることもあります。

さらに、最高裁判所の裁判官に対する国民審査は形だけのもので、実質的な影響力はほとんどありません。

裁判官は、独立して判断を下すことができる特権的な立場にあります。

これが、時に奇妙に見える判決を生む背景です。

たとえば、江戸時代の
「御用商人」
が幕府から特権を受け、他の商人とは異なる扱いを受けたように、裁判官もまた法の解釈において特別な権限を持ちます。

そのため、裁判官の判決が一般の常識から外れて見えることがあるのです。

現在、このような投票価値の不平等や裁判官の独立性に関する問題に対して改善の動きがありますが、その進展には時間と努力が必要です。

法の適用においては、裁判官の独立性と専門性が重要な要素である一方で、その判断が一般の感覚と異なる場合があるという点を理解することが求められます。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/74672

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02042_裁判に負けたくないが、資金に余裕がない(教えて!鐵丸先生Vol. 54)

<事例/質問>

裁判にはお金がかかりますが、資金に余裕のない企業や本業のための資金を裁判に回せない企業はどうすればいいでしょうか?

負けたくないトラブルに直面していますが、長期にわたる裁判では多額の弁護士費用がかかり、費用を節約しても満足のいく結果にはならない気がします。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

法テラスを利用して弁護士を紹介してもらい、費用の支援を受けることもできますが、これでは求められている解答にはなりません。

弁護士として、
「カネをけちりたいが、メンツを回復したい」
という気持ちは理解できますが、戦争に例えるならば、覚悟も資金もない状態で挑むのは無謀です。

メンツを回復するには、泥沼化した長期戦を戦い抜く覚悟と資金を持つ者だけに与えられる特権です。

戦争は、戦力で決まります。

そして、戦力とは、単なる腕力や瞬発力だけでなく、持続力、すなわち戦争を継続する経済力も含めた総合力です。

戦力=腕力+経済力(持続を可能とする資源保有力)

という式が成り立ちます。

兵糧がなければ、たとえ一時的に優位に立ったとしても、長期戦には耐えられず、いずれは白旗を揚げることになります。

さらに
「兵糧があっても、ケチる場合」
も負ける原因となります。

戦争において予算を厳格に管理しようとする発想は危険です。

戦争にはすべてを注ぎ込み、なりふり構わず資源を投入する覚悟が必要です。

たとえば、
「陣羽織を汚さないように戦う」
とか
「ジャングルでゲリラと戦うが高級なブーツを汚さないように」
といった姿勢では、まともな戦いになりません。

また、
「試合後のパーティーでの余力を残すことを考えつつボクシングの試合に臨む」
というような考え方も、戦争においては通用しません。

お金を持っていても、チビチビとケチりながら中途半端に戦う姿勢は、兵力の逐次投入という愚策の典型です。

これは戦争の禁忌中の禁忌です。

最初から譲歩を前提に対話を続け、相手の要求をある程度受け入れる方が、リスクを減らす賢明な対応と言えます。

「では、お金を持っていない人や、ケチりたい人は黙っていろということか?」
と思うかもしれませんが、残念ながらその通りです。

資金がないならば、戦争を避けるべきです。

トラブルの発生を防ぐために、リスクのある相手と関わらない、対話を通じて譲歩するなどの方法を検討することが賢明です。

結論として、戦争やケンカに勝つためには、全力を尽くす覚悟と資金が不可欠です。

資金を惜しむ姿勢は禁物であり、戦争ではすべてのリソースを投入する必要があります。

それでも勝てる保証はありませんが、少なくとも悔いのない戦いができるでしょう。

これが戦争やケンカの現実であり、勝利を目指すための真実です。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/72540

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02041_裁判の勝敗について(教えて!鐵丸先生Vol. 53)

<事例/質問>

同じ事件でも、依頼者によって裁判の勝敗が変わることはありますか?

また、どうすれば勝てる依頼者になれるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

裁判は
「殴り合い」
ではなく
「戦争」
に似ています。

腕力で勝敗が決まる
「殴り合い」
とは異なり、
「戦争」
は戦力、つまり経済力や戦争継続能力が求められます。

強い依頼者は、資金的な余裕があり、長期戦にも耐えられる人です。

資金があれば、優秀な弁護士を集めることができ、裁判に負けても他の方法で戦い続けることが可能です。最終的には、相手が経済的に疲弊して降参することもあります。

例えば、ある依頼者は契約書の偽造を巡る裁判で地裁・高裁・最高裁と3連敗しました。

この契約書は従業員が偽造したもので、依頼者は無関係だと主張しましたが、裁判所もその見解に同調しました。

しかし、この依頼者は十分な予算を持っていたため、戦争を続けることができました。

次に、偽造した従業員を不法行為で訴え、会社も使用者責任で追及しました。

しつこく戦い続けた結果、相手は根負けし、和解金を支払うことで解決しました。

勝つ依頼者になるためには、まず資金が必要です。

資金がない、または資金を惜しんで使わない依頼者は、裁判で勝つことが難しいです。

まるで
「高級なブーツを汚すな」
と言われながら、ジャングルでゲリラと戦うようなものです。

戦争には予算管理を持ち込むべきではありません。

すべてのリスクを覚悟し、資源を惜しまず投入することが必要です。

また、経済力が不足している場合は、工夫が求められます。

裁判という戦争で重要なのは、文書や記録といった証拠です。

約束内容、履行状況、相手の不義理、不誠実な対応、こちらの正当性や被害状況など、すべてを
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
しておくことが大切です。

これらの事務資源を整備することで、裁判での勝利が見込めます。

役所や銀行が訴訟に強いのは、資金だけでなく、正確な文書や記録を大量に持っているからです。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/70918

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02040_勝てる事件のポイント(教えて!鐵丸先生Vol. 52)

<事例/質問>

勝てる事件と負ける事件の違いって、どんなところにポイントがありますか。

勝てるようにするには、どうすればいいのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

勝てる可能性が高い事件を
「スジのいい事件」
と呼びます。

これは、主張内容が裁判所にとって説得力があるという意味です。

私は、勝てる事件には
「スジ」
「スワリ」
「ブツ」
の3つの要素が揃っている必要があると考えています。

1つ目は「スジ」(ロゴス・論理面)で、主張内容が法律的に筋が通っていること、すなわち法的論理性があることです。

2つ目は「スワリ」(パトス・具体的妥当性)で、事件の構図として主張内容が社会的・経済的に妥当であること、つまり結論の妥当性です。

3つ目は「ブツ」(エトス・信頼性・確実性)で、主張や背景事情に関して明確な証拠があり、それによって相手の主張を崩せる材料が揃っていることです。

これらの要素がすべて揃っている事件は稀であり、揃っているならばそもそも大きな争いにはなりにくいです。

どれか1つが欠けている場合も多く、例えば法的に弱い主張でも、具体的妥当性を強調して主張をもっともらしく構築することがあります。

また、直接証拠がなければ、間接証拠を用いて立証を試みます。

しかし、勝てない事件を勝てるようにするのは非常に難しいことです。

重要なのは、揉めたときに備えて証拠を準備しておくことです。

さらに、相手が約束を破る場合を想定して、証拠を意識しつつ、約束内容や話し合った内容、状況を
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
しておくことが大切です。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/69365

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02039-_証人尋問の前、クライアントへの助言は?(教えて!鐵丸先生Vol. 51)

<事例/質問>
証人尋問の前に、クライアントや証人にはどんな助言をしていますか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
証人尋問の前には、以下の点について助言しています。

1.緊張しないこと
  証人尋問の前に結果はほぼ決まっている。勝ち筋なら、冷静に自分のストーリーを伝えることが大切。負け筋の場合でも、感情に訴えて同情を誘うことが重要。

2.地味なスーツを着ること
  服装は裁判所での印象を左右する。派手すぎない、堅実なスーツを選ぶように。

3.ハンコを忘れないこと
  ハンコを忘れると指印を押すことになり、これは少しおどろおどろしい印象を与えるかもしれない。

4.リラックスすること
  証言は記憶テストではない。リラックスして自分の言葉で話すことが大切。

5.陳述書をよく読むこと
  事前に陳述書を確認し、記憶と違う部分や矛盾がある場合は、前日までに知らせるように。

6.裁判官をしっかり見ること
  証言中は裁判官を見て、滑舌良く、はっきりと話すことが重要。

7.覚えていないことは正直に言うこと
  記憶があいまいな場合は、その理由を含めて「覚えていない」とはっきり伝える。

8.反対尋問では間を取ること
  質問と答えの間に3秒ほど間を置くことで、異議の機会を与えずに進行できる。

9.厳しい質問への対応
  矛盾を指摘された場合は、「事実でないように聞こえるかもしれませんが、私の言っていることは事実です」と言い切る。

10.反対尋問は時間稼ぎを狙うこと
  わざとゆっくり答えることで、相手の弁護士の時間を消費させる。相手が焦ったら、さらにゆっくり答える。

11.裁判官の補充尋問に注意すること
  裁判官の質問はわかりにくい場合があるので、「何をおっしゃっているのかわかりません」とはっきり伝えることが大切。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/67416

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02037_反対尋問が不安(教えて!鐵丸先生Vol. 49)

<事例/質問>

今度、証人尋問があるのですが、反対尋問ってどんな感じなのでしょうか。

テレビドラマ等を見ていると、弁護士さんが鋭く切り込んでくるイメージがあり、不安です。

憂鬱になり、夜も寝れません。

何か、うまく切り抜けられるためのコツとかありますか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

民事裁判における証人尋問は、テレビドラマのように弁護士が議論をふっかけたり、無知な証人をやり込めたりする場面ではありません。

証人は
「証拠方法」
すなわち
「証拠の道具」
「事実の痕跡が記憶された脳の記憶領域を確認する手続き」
です。

その結果が尋問調書に記録され、証拠資料として取り扱われます。

民事訴訟法では、尋問手続きがつつがなく運ぶように、証人尋問中に無意味で有害な行為が行われる場合には、反対当事者の弁護士が異議を申し立てることができます。

たとえば、弁護士が証人に意見を求めたり、困惑させようとしたりする場合、気の利いた弁護士は
「この質問は意見を求めていますので異議を申し立てます」
と具体的に述べて、裁判官に異議を認めてもらうようにします。

証人尋問の目的は、証人が記憶している事実を確認することです。

証人が意見を述べることは許されていませんし、証人尋問はクイズや記憶テストではないので、覚えていないことは
「忘れました」
と答えればよいのです。

証人尋問は
「記録(記憶)再生手続き」
であり、証人が知っている事実を再生するだけで十分です。

また、証言の際には、既に証拠として提出されている陳述書やメモを確認し、記憶を呼び覚ますことも可能です。

証人尋問は
「記録再生」
という即物的な手続きであり、弁護士が感情的に攻撃したり議論をふっかけることはありません。

証人は自分の知っている事実を正直に話すだけでよく、緊張する必要はありません。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/63960

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02036_証人尋問が不安です(教えて!鐵丸先生Vol. 48)

<事例/質問>

弁護士さんに依頼している裁判が大詰めで、来週証人尋問があります。

弁護士さんは
「これからが本番です。気合を入れて準備しましょう」
とリハーサルを行っていますが、やればやるほど緊張が高まり、不安で不安で仕方ありません。

リハーサル段階ですでにグダグダで、弁護士さんからは
「このままでは負けてしまいますよ」
と言われています。

昔のことを聞かれても覚えていないことが多く、うまく答えられる気がしません。どうしたらよいでしょうか?

弁護士さんに依頼している裁判が大詰めで、来週証人尋問があります。

弁護士さんは
「これからが本番です。気合を入れて準備しましょう」
とリハーサルを行っていますが、やればやるほど緊張が高まり、不安で不安で仕方ありません。リハーサル段階ですでにグダグダで、弁護士さんからは
「このままでは負けてしまいますよ」
と言われています。

昔のことを聞かれても覚えていないことが多く、うまく答えられる気がしません。どうしたらよいでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

証人尋問はただのセレモニーです。

一般には
「証人尋問は訴訟の最もドラマチックな場面」
とされますが、実際の民事訴訟では、事件の筋、すなわち勝敗は証人尋問開始前にほぼ決まっており、尋問はほとんどの場合セレモニーに過ぎません。

これは筆者の適当な感想ではありません。

弁護士会主催のセミナーで紹介されたデータによれば、民事裁判官のアンケートで
「証人尋問の後で心証が変更することはありますか?」
との問いに、7~8割近くの裁判官が
「尋問が終わっても心証の変更はない」
と回答しています。

まず、民事裁判官は証人尋問前に心証を決定しており、つまり
「どちらを勝たせるか」
を決めた上で尋問に臨んでいるのです。

また、大抵の事件では、証人尋問は裁判官に新しい事実を発見させる場ではなく、既に分かっている事実を確認する場です。最後に
「民事事件は関係文書を見れば、7~8割方は解決できる」
ということです。

訴訟に不慣れな弁護士や依頼者は証人尋問手続に入ると
「これから証人尋問!本番だ!」
と気合を入れますが、実際にはその時点で裁判官はほぼ結論を出しており、気合を入れるタイミングとしては遅すぎます。

つまり、尋問前に提出している文書の証拠(書証)が乏しければ、どんなに尋問で頑張っても無駄ということです。

裁判では、誠実さや正義や倫理が問われているわけではなく、約束があったかどうか、約束が実現されているかどうかを文書という強力な証拠で説明可能かどうかが重要です。

リラックスして臨むことが大切です。

顔色が悪い、うつむいていると嘘をついているように思われるので、元気よく、はきはきと話してください。

覚えていないことは
「忘れました」
と答えればよいのです。

これはクイズ番組ではありません。

5年前の昼食を覚えているほうが不自然です。

ただし、陳述書だけはよく読んでおきましょう。

特に、弁護士さんが適当に書いた場合、その矛盾を突かれると大変です。 詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/62418

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