01758_「社内のスキャンダルが、ネットで取り沙汰され、話題になっています。どうやらスキャンダル自体は真実のようなのですが、どのような対策が可能でしょうか?」

スキャンダルによって、企業に何らかのリスクやダメージが生じているならば、ネット上で延焼し、拡散してしまわないよう、鎮火させるべきと思います。

スキャンダルといっても、従業員のプライベートに関するものから、企業(法人)の事業に関わるものまで、幅広く想定されます。

特に、従業員のプライベートに関するスキャンダルについては、
1 何を、
2 誰に対して、
3 どういう方向でのメッセージを発信するのか(謝罪するのか、非難するのか、不快感を表明するのか、残念や遺憾というセンチメントを表明するのか)、
4 企業の正式ホームページ等にて発信するのが適切な発信場所、発信方法といえるか、
などを検討することも重要となります。

ところで、
「真実のようなのですが」
という切れ味の悪い言い方になっており、その意味では、何らかのアクションをする前に、一応、自主的に事実を調査する必要があります。

調査をするといっても、身内の人間が発表しても世間はその調査の信憑性に疑問を持ってしまうため、調査の独立性、客観性を担保させるため、第三者委員会という形式で調査を遂行することも検討すべきです。

なお、純粋にプライベイトなスキャンダルであり、そもそも企業として関わりをもつことを忌避すべき場合、ネットスラングで言う
「華麗にスルー(あえて黙殺)」
して、スキャンダルが
「75日経過して消失する」こと
を受動的に待つ、という戦略も検討すべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01757_「社内報および社内イントラネットでの、新聞記事の引用をしたいのですが、新聞社への記事引用の許諾を取る必要はあるでしょうか?社長が露出した新聞記事の切り抜きをスキャンして引用したいだけなのですが、それでも許諾の必要はあるのでしょうか?」

新聞報道に関してですが、
「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」
は言語の著作物に該当しないと著作権法10条2項に規定があります。

他方、日本新聞協会は1978年5月、 
「最近の紙面における記事は背景説明の伴った解説的なもの、あるいは記者の主観、感情を織り込んだ記事が多く、紙面構成も高度な創意・工夫がはかられており、、独創的な紙面づくりが行われているのが実情である。したがって報道記事の大半は、現行著作権法に規定される著作物と考えるのが適当である」
との見解を示しています。

「記者の主観、感情を織り込んだ記事が多く」
「高度な創意・工夫」
などといわれると、
「それって、捏造記事であって、報道ではないんじゃないの?」
とツッコミたくなります。

そもそも、著作物って、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
ってことですから、事実を正確に報道する新聞記事に、思想や感情や創作が入ってはアカンやろ! ということにならないんでしょうか。

例えば、ある記者が、事実ではないにもかかわらず、
「(ある日本の方が)2回ほど朝鮮半島に出かけ、“朝鮮人狩り”に携わった」
などと記述したり、同様に、
現地で警官とともに若者100人を集め、労働力として日本へ送り、抵抗する者には暴力を使ったとする証言を紹介したり、
といった創作した虚偽の記事を書いて、これがある新聞社が新聞に掲載したとします。

もちろん、上記の
「お話」
は、正確な事実の報道ではなく、それこそ、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
なんでしょう。

ちなみに、この記事、
「創作性に満ちた著作物」
としてはさておき、報道としてはウソということが判明しちゃいました。

「創作性に満ちた著作物」
を事実の報道として公表した某新聞社は、記事全文を取り消し、掲載したことをおわびしておられます。

そういう意味で、あとで誤報として撤回して謝罪するような
「創作性に満ちた著作物」
としてのウソの記事であれば格別、まともな新聞報道は、事実を報道するでしょうから、
「新聞記事が『創作性に満ち満ちた著作物』である」
ともとれる日本新聞協会のご主張は、私としては、いまいち意味がわかりません(「新聞記事が、創作性に満ち満ちた、いってみれば、事実と程遠い、ウソが介在している」という前提なら理解できるお話ですが、ほんま、ようわからん話ですわ)。

このあたりは、大人の事情があるのでしょうがが、いずれにせよ、日本新聞協会の言っている内容は、法律家として読解する以前に、日本語として意味不明なので、私としては、理解を放棄し、ノイズとして捨て置きたい、と思います。

いずれにせよ、日本新聞協会の混乱しまくっているとしか評価し得ない話は放置・無視・軽視せざるを得ず、これをさておいて、法律解釈として客観的に考えます。

新聞記事で言いますと、
1 見出し
2 写真、
3 事実摘示部分(5W2H〔howとhow much〕)
4 観測や推測や解釈や評価といったコメントが掲載されている部分
とに分けられると考えますと、
「3 の事実摘示部分(5W2H〔howとhow much〕)」
については著作権が生じないと考えられます。

他方で、
「1 見出し」「2 写真」「4 観測や推測や解釈や評価といったコメントが掲載されている部分」
については、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
という著作物性要件を充足している限りにおいて、著作権の問題が生じる可能性がある、という言い方になります。

言い方を変えれば、
「新聞社が制作したから、すべてにおいて、創作性がある」
というのは早計であり、新聞社が創作した
「1 見出し」「2 写真」「4 観測や推測や解釈や評価といったコメントが掲載されている部分」
であっても、創作性のかけらもない、つまんない、陳腐なものであれば、著作物性が否定されることはあろう、と思います。

私個人の感覚であれば、一般の新聞の見出しは、あまり創作性を感じませんが、
「飛ばしの東スポ」
で著名な東京スポーツ新聞の見出しだけは例外です。

「マイケル、なめんとのか」
「マドンナ痔だった?」
「落合家(中略:男性器を意味する言葉が書かれています)丸出し放送」
「聖子輪姦」
「人面魚重体脱す」
「大仁田爆死」
「フセイン米軍に(中略:男性陰部の疥癬症を意味する言葉が書かれています) 大作戦」
「ダイアナ大胆(中略:女性の胸部を意味する言葉が書かれています)」
「阪神次期監督上岡龍太郎」
「宇宙人化石発掘」
「ネッシー出産」
「UFO大群、八王子に出現」
「宇宙人、ついに銚子を攻撃か」
「電線に止まったUFO」
「指原UFOおっかけ」
「前田敦子ヌード」
「今井絵理子議員(中略:下着を装着しない状況を意味する言葉が書かれています) 疑惑」
「広瀬すず、プロレス参戦」
といった、東スポ1面を飾った見出しは、ぶっ飛んだ
「創作性」
があり、品位は別にして、間違いなく、圧倒的な創作性が顕著にある、ど真ん中の
「著作物」
です(※これらの見出しの下には小さく、「?」「か」「も」「説」「絶叫」などの語句・記号が書かれ、うまいことお茶を濁しているのですが、この「お茶濁し」の見出し部分については、売店や新聞スタンドに陳列されるときには、折りたたんでいるので隠れいて、全体として、「見出しがあたかも事実であるかのように見える」という巧妙な計算を働かせています)。

以上のような著作物性の議論についてクリアして、引用をしようとしている新聞記事に著作物性が認めれる場合、社内報における論評のための引用という形式(著作権法32条)が認められない限り、当該新聞社の許諾を得る必要が出てきます。

なお、
「引用」
といえるためには、
1 他人の著作物を引用する必然性があること
2 かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること
3 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)
4 出所の明示がなされていること
といった要件充足が必要です(著作権法48条)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01756_「ネット上の特定の書き込みに対し、プロバイダに削除依頼を行うことは可能です か、または直接担当者が投稿者にコンタクトをとることは可能ですか?」

「言うだけタダ」
ではないですが、もちろん、削除依頼をすることは随意です。

ただ、削除してくれるとは限りませんし、むしろ、削除しない蓋然性の方が高いと思われます。

ネット上の掲示板は多様な意見があることを前提に商売を成り立たせており、また、問題のある投稿であってもそれで人集まりアクセスが稼げるのであればむしろビジネス的にはウェルカムですから、掲示板運営者やSNS運営者サイドが削除要求に簡単に応じてくれない場合の方が多いのです。

担当者が直接投稿者にコンタクトを取るには、匿名の投稿である場合、
1 メッセージ機能や投稿機能を使って直接メッセージを発信する
2 掲示板やSNS運営者を仲介者としてメッセージの伝達を依頼する
3 掲示板やSNS運営者に対して投稿者に関する情報の開示請求をする
のいずれかとなります。

そして、
「3 掲示板やSNS運営者に対して投稿者に関する情報の開示請求をする」
は、
1)まず、最初に運営者に開示請求をしますが、まず、ほとんどの場合、任意の開示請求は期待できません。
これは、運営サイドとしては、
「匿名で言いたい放題言わせる」
ことを基礎としてアクセスを稼ぎ、ビジネスを成り立たせるわけですから、発言内容によって匿名性を放棄させ発言者の個人情報を暴露する、ということを安易に行うことは、運営サイドにとっては自殺行為となり、ビジネスが一気に崩壊する危険があるからです。
加えて、 プロバイダ等は、開示請求に応じなくとも故意、重過失がない限りは責任を負わないため(プロバイダ責任法4条4項)開示を拒否するのが通例です。

2)そこで、次に考えられるのは、裁判所に対して、運営サイドを相手方として開示請求を申し立てる、という方法を検討することになります。

投稿者や発言者の情報を保有している運営者やプロバイダ等に、発信者情報の開示を請求する(プロバイダ責任法4条)という手続きです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01755_「企業(法人)をM&Aした場合、買った企業(法人)が持っていた個人情報データベースをそのまま利用しても大丈夫ですか?」

個人情報保護法23条4項は、M&Aの場合を第三者提供に該当しない、と定めていますので、利用することは可能です。



個人情報保護法23条4項

次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前三項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。一 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合
二 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合
三 個人データを特定の者との間で共同して利用する場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。

ただし、個人情報については利用目的の特定が要求されていますので(個人情報保護法15条)、承継前の企業(法人)の利用目的の範囲内で利用することが必要となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01754_法定文書の法定保存年限管理

企業活動を展開する中で、実に様々な文書が発生します。

メモや走り書きの類から、定款や株主総会議事録のような重要文書まで、その重要性も様々ですが、管理上頭を悩ませるのは、保存期間の管理です。

もちろん、無限の保管スペースがあれば、文書という文書をすべからく管理しておけばいいのですが、企業活動から生じる尋常ではないボリュームの文書のすべてを管理するとなると、莫大な資源が必要になりますし、現実的ではありません。

また、スキャンをして、電子媒体の形で管理しておけばいいのでは? というアイデアも出てきそうです。

しかし、行政手続上の課題対処の文脈においては、法定保存年限が決められている文書は原本管理が原則であり、スキャンした電子データだけでは、法令に抵触するリスクが生じます。

また、司法手続上の課題対処の文脈においても、同様であり、裁判になった場合、証拠として提出する際、原本提示が求められます。

その意味では、行政手続上の課題対処の文脈においては法定保存年限を把握して当該年限管理をして各種法定文書を保存しておくべき必要があり、また、司法手続上の対処の文脈においては訴訟リスクが時効によって消え去るまで
「自らの立場を正当性を証明する文書」
については証拠となる原本を保存する必要があります。

1 法令で法定保存年限が定められている文書についての法令遵守上求められる文書保存年限管理

まず、行政対処上の文脈においては法定保存年限を把握して当該年限管理をして各種法定文書を保存しておくべき場合についてです。

1)企業統治に関わる法定保存文書の保存年限管理

企業統治に関わる法定保存文書の保存年限について言えば、定款や株主名簿等については、特段法律の定めはないものの、永年保存(永久保管)が求められるものと、解されているようです。

たまに、原始定款を紛失した、捨てた、という企業があり、上場する段階になって大慌てすることがあります。

何ともみっともない話であり、そんな管理がお粗末な会社を上場させていいのか、という問題はありますが、救済手法もあるにはあります。

2)労務マネジメント関係の法定保存文書の保存年限管理

労務マネジメント関係の法定保存文書の保存年限管理ですが、労働組合との協定書については、特段法律の定めはないものの、永年保存(永久保管)が求められるものと、解されているようです。

また、クロム酸等の空気中における濃度の定期測定記録についても、特定化学物質障害予防規則36条の2第3項により、30年間保存が義務付けられているほか、労働安全衛生上の文書保存期間は相当長期に及びます。

3)経理・税務関係の法定保存文書の保存年限管理

経理・税務関係の法定保存文書については、長いものでいえば、例えば、
(1)計算書類及び附属明細書(貸借対照表、損益計算書等)は、会社法435条により、作成したときから10年間保存が、
(2)会計帳簿及び事業に関する重要書類(総勘定元帳、各種補助簿等)については、会社法432条により、帳簿閉鎖から10年間保存が、
それぞれ義務付けられています。

3 訴訟リスクを前提とした文書の保存年限管理

訴訟リスクを前提とした文書の保存年限ですが、これは、時効と関連します。

民法改正によって、債権の消滅時効制度においては、消滅時効期間は、原則として主観的起算点(債権者が権利を行使することができることを知った時)から5年又は客観的起算点(権利を行使することができる時)から10年のいずれか早い方とされました。

また、不法行為の消滅時効は、最長で行為のときから20年とされています。

以上を前提とすると、取引関係文書については最低10年、対外的・社会的な影響を及ぼしうる企業活動の記録は最低20年は保存しておくべきことが推奨されます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01753_ネットで誹謗中傷され、相手は判明しています。訴訟を進めていく上で、裁判所がどのような対応をするのか、今後行うゲームのロジックやルールや展開予測として知っておきたいと思います。「ネットでみられる勇ましい弁護士さんのセールストーク的なもの」とは違う、「客観性のある有益な資料」はありますか?

「ネットで誹謗中傷され、相手は判明しています」
ということですので、相手は正々堂々と素性を明らかにして名誉毀損しているか、発信者情報開示をめぐる面倒くさい
「索敵」プロセス
が終了し、ようやく決戦に挑める状況構築まで完了した、ということです。

その上で、
「訴訟を進めていく上で、裁判所がどのような対応をするのか、展開予測として、知っておきたい」
ということですが、これは非常に重要です。

ネット空間に漂う、ネット関係事件を生業とする弁護士の皆さんの営業文句を鵜呑みにすると、何だか、
「優秀で有能な弁護士に依頼したら、あっとういう間に訴訟に勝利し、訴訟に勝利したら、しびれるくらいの大金が転がり込んで、大金持ちになれる」
ような気分になれそうですが、これはまったく事実と異なります。

仕事を取るためとはいえ、事実と異なったり、事実にバイアスをかけたりするのは、どうですかねえ、とか思いますが(以下、諸般の事情に基づき、略します)。

まず、
「あっとういう間に解決」
「訴訟に勝利」
という部分ですが、結構時間がかかる場合があります。

こちらに何の落ち度もなく、加害者が一方的に悪く、事実や状況を全面的に認めている、という場合ならともかく、相手が、表現の自由を持ち出して違法性阻却を言い出したり、損害がないとか争ったりしたら、平気で年単位かかります。

そして、年単位かかった挙げ句、無残に敗北し、カネと労力に加え、メンツまで失う、なんて事例、ザラにあります。

例えば、こんな事例があります。

【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成13年(ワ)第15800号
【判決日付】 平成16年1月26日
【判示事項】 インターネット上の公開のホームページ内に設置された,電子掲示板に「ワケわからん」「メチャメチャ」「妄想」「つきまとい」「ストーカー」「低脳」「頭がおかしい」などの中傷する表現を行ったことにより,名誉を毀損されたとする損害賠償請求を認めなかった事例
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

この事例が示唆するものは、
・「ワケわからん」「メチャメチャ」「妄想」「つきまとい」「ストーカー」「低脳」「頭がおかしい」などとネット上で誹謗中傷された
・賠償金400万円や謝罪文掲載を求めて、平成13年(2001)年に訴訟を提起した
・当然ながら、相応に弁護士費用がかかり、かつ少なくとも2年以上の時間と、弁護士が出す「宿題」を提出するなどの労力を要した
・挙げ句の果て、訴訟に負け、カネと労力に加え、メンツまで失った(「妄想」「低脳」「頭がおかしい」とまで言われて救済を求めたのに負けた)
という悲しい現実が起こり得る、ということです。

また、仮に勝訴しても、そんなに景気のいい賠償金は出てきません。

実際は、慰謝料50万円未満が41%、100万円未満でも69%となっています。

ほぼ7割が100万円未満しか取れない事件に関わる弁護士さん、着手金いくらで、報酬金いくら請求されるのでしょうか?

こんな事件に、着手金150万円払うなら、
「1万円札を1万5000円で買っている」
ような、
「経済的には」
むちゃくちゃ愚劣な行為をやらかしている、ということになります。

もちろん、

「『事件を放置することは、クライアントの尊厳や体面やアイデンティティが不可逆的に毀損され、クライアント個人としての内部人格均衡ないし情緒安定性や、クライアント法人としての組織内部統制秩序に対して、不可逆的な混乱・破壊・崩壊をもたらしかねず、また『やられてもやり返さないと、そういう組織ないし人間と見下され、以後、やられっぱなしにされたり、際限なき譲歩を迫られたりして、生存戦略上致命的な不利を被る』というより大きな損失を発生する危険が見込めるため、巨視的・長期的・総合的に熟慮の上、事件の成否に関わらず、事件単体の局所的経済不合理性があっても、弁護士費用をかけて事件を取り組むことそのものが、全体的・総合的・長期的に、十分な経済的メリットをもたらす』との理性的かつ合理的判断の下、クライアントが理解納得し、弁護士法人の強い警告や遠慮と謙抑からの忌避に関わらず、本費用の取り決めに基づく依頼を強く要請する」

などといった事情があるなら、別ですが。

こういうことを考えると、ネット上の弁護士さんのポジショントーク(仕事を得るという利害によりバイアスがかかったお話)というかセールストークに惑わされず、冷静かつ客観的に、しっかりとした資料に基づき、これから営もうとするゲームのロジックとルールと展開予測と相場観を知っておくことは重要であり、
「裁判所がどのような対応をするのか、展開予測として、知っておきたい」
というのは、訴訟というプロジェクトのキックオフ前に事前に行うべきFS(フィージビリティ・スタディ)を履践しようというものであり、実に健全で真っ当な姿勢です。

このような観点から参照すべき有益な資料としては、現段階では、大阪地裁の若手判事補さんが調べてまとめてくださった
判例タイムズNo.1223(2007年1月1日)49ページ
「名誉毀損関係訴訟について-非マスメディア(筆者注:ネットのこと)型事件を中心として-」
が挙げられます。

一般の方や、ビジネスマンの方にはかなり難しく、法務担当者にとっても、ちょっとむずかしいかもしれませんので、社内弁護士や一般の弁護士さん向けかもしれません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01752_ネットやSNSでの誹謗中傷への対抗策として「対抗言論」というものを聞きましたが、これはどのようなものでしょうか?また、「対抗言論の法理」とはどのようなものでしょうか?

「対抗言論」
とは、何者かが表現活動を仕掛けてきて、自らの社会的評価や経済的信用が毀損したような場合、評価や信用の低下を避け、あるいは評価や信用の回復を図ることを目的とした、相手方への反論等の表現活動です。

わかりやすい言葉で言えば、
「やられたら(裁判所に泣きつく前に、自分で)やり返す」
「言われたら言い返す」
という趣旨の、簡単な話です。

昨今の、ネットやSNSやにおける誹謗中傷事件では、企業等は、すぐさま、やれ裁判所に行く、プロ責法だ、発信者情報開示だ、削除請求だ、仮処分だ、と
「裁判所に泣きつく」方法
を検討しはじめてしまいますが、どれもこれも、うまくいかないか、うまくいくにしても、時間とカネがかかり、かつ、イタチごっことなって、際限なき資源消耗を強いられる戦いとなって、カネや資源が続きません。

なぜ、対抗言論を以て反撃する、という簡単な手法に思い至らないのか、私には不思議でなりません。

これは、別に筆者が一人で勝手に思いついて言っているものではありません。

「言論による名誉毀損に対しては、まず、さらなる言論で対抗すべきだ(The remedy to be applied is more speech)」
という考え方は、古くはアメリカのホイットニー対カリフォルニア州事件(1927年)判決でブランダイス判事が判決で述べたところに由来します。

同判決で、ブランダイス判事は、
「重大な被害がもたらされる恐れがあるというだけで、自由な言論と集会への抑圧を正当化することはできない」
「議論を通じて、虚偽や誤りをあぶり出す時間があれば、また教育のプロセスを通じて、邪悪を回避する時間があれば、講じるべき解決策は、強制された沈黙ではなく、より多くの言論である」
などと、のたまっておられます。

なお、ちょっとわかりにくいのが、
「対抗言論」
という事実としての対抗策や当該状況ないし現象と、
「対抗言論の法理」
というものとは別物です。

「対抗言論の法理」
というのは、非常に未整理な形で独り歩きしており、筆者の印象ですが、いくつかの裁判例に関して見いだされる法的な取扱や判断枠組みについて、定義をきちんと整理しない状態で、学者や研究者が、まるっと
「対抗言論の法理」
と安易なレッテル貼りを行い、議論に混乱を撒き散らしているような類のもの、というもののようです。

細かくみていきますと、

対抗言論の法理(1):そもそも、悪口言われたからといって、逐一、裁判所に泣きつくなよ。お前は子供か。言われたら言い返せ。とはいえ、あんまりひどい場合は裁判所でも面倒みるけど、という場合(法理というより、そもそもの思想・哲学・考え方)
対抗言論の法理(2):「対抗言論が出来ているなら、社会的評価が回復しているから、損害はないだろ。だから、被害者が対抗言論を行って信用回復しているなら、名誉毀損をした人間への民事責任は認めない」という言い草を「対抗言論の法理(お前、対抗言論でキレイにカウンターパンチ決まって、もう相手気絶してぶっ倒れているから、さらに損害賠償とかいる?もう必要ねえじゃん)」という場合
対抗言論の法理(3):「言論によって喧嘩をふっかけたら、相手が対抗言論を展開し、思わぬ反論を受け、それによって喧嘩をふっかけた側の名誉が傷ついた」という何とも鈍臭い状況に陥った名誉毀損の被害者(最初に喧嘩をしかけて、カウンターパンチを食らって泣いている側)が、裁判所に泣きついてきたときに、自業自得でやられちゃった情けない被害者の救済をはねのける理屈を「対抗言論の法理(お前、自分で喧嘩をおっぱじめた段階で、反論してボコられただけじゃん。『撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけ〔コードギアス 反逆のルルーシュⅢ皇道におけるルルーシュ・ランペルージの名台詞〕』なんだよ! タイマン張って負けたからといって、裁判所に泣きついてんじゃねーよ)という場合
対抗言論の法理(4):相手から喧嘩を売られて、こちらも対抗措置として対抗言論を行ったのなら、当該反論が名誉毀損に該当した場合(法律上の構成要件に形式的に該当した場合)であっても、違法性が阻却される、その際の違法性阻却事由として、「対抗言論の法理(言論の喧嘩をふっかけられて、防衛の必要性があって反撃で名誉毀損したなら、反撃の違法性はないものとして扱ってやれ)」という場合

等様々です。

対抗言論の法理(2)ないし(3)という趣旨における「対抗言論の法理」を認めた(と考えられる)事件としては、東京地裁平成16(2004)年1月26日判決において、こんな判断をしています(ちょっと長いですが、ネット上の言葉の応酬の詳細や現実をご覧いただくため、あえて引用します)。

同事件で、東京地裁は、
(1)名誉毀損性の有無
 上記1認定のとおり,被告Y1及び被告Y2は,本件各発言において,「捏造」「妄想」「破綻」「ワケわからん」「ワケわからない」「ワケわかりません」「思い込み」「アホらしい」「アホ(な)」「阿呆」「事実に反する」「事実無根」「ムチャクチャ」「メチャメチャ」「意味不明(の)」「(根拠のない)決め付け」「しょーもない」「くだらん」「矛盾」「乖離」「つきまとう」「つきまとい」「誹謗」「中傷」「誹謗(・)中傷(の人)」「(被告Y1を)貶め(る)」「執拗な」「執拗に」「恨み」「恨んだ」「自己誇大感(の強い)」「ぐずぐず」「グズグズ」「ぐだぐだ」「異様に」「異様な」「悪いほうへリード」「(狡猾な)ミスリード」「執念深さ(深い)」「執念(の)」「ストーカー」「卑劣(に)」「みっともない」「嫉妬」「ひがみ根性」「哀れ(な人)」「奇異」「(頭が・の)おかしい」「(狂信的)テロリスト」「テロ(行為)」「低脳」「狂って」「狂った」「(病院がカバーできないタイプの)異常者」「人格障害」「狂気」「心を病んだ人」「(お)バカ」「キチガイ」「サイコな人」「クズ」「サイテー」「人格異常」「脳の病気」「イカレた人」「狂人」「結局,かまってもらうのが嬉しいみたいなので,放置するしかないのかな?」「私や私の家族を殺傷しに来るとか,放火に来るとかはお断りします。」「よほど何か隠したい誘惑にかられているのかな?」「何かズルをして勝とうとしているのかな?」「不知と否認をくり返すつもりなのかな?」「「核兵器」を不発に終わらせた」「逃げた」などの表現を用いて,原告を批判ないし揶揄したものである。
 これらの表現のうち,「捏造」「破綻」「ワケわからん」「思い込み」「アホらしい」「事実無根」「意味不明(の)」「(根拠のない)決め付け」「しょーもない」「くだらん」「矛盾」「乖離」「誹謗(・)中傷(の人)」「(被告Y1を)貶め(る)」「執拗な」「自己誇大感(の強い)」「(狡猾な)ミスリード」「執念深さ(深い)」「逃げた」などの表現はともかく,「妄想」「つきまとい」「ストーカー」「(頭が・の)おかしい」「(病院がカバーできないタイプの)異常者」「人格障害」「狂気」「心を病んだ人」「キチガイ」「人格異常」「脳の病気」「イカレた人」「狂人」「私や私の家族を殺傷しに来るとか,放火に来るとかはお断りします。」などの表現は,全体として,原告が,精神障害,人格障害又は極端な人格の偏りのため,思い込みや妄想に基づいて被告Y1らを攻撃し,つきまといや嫌がらせ等の行為を執拗に繰り返す人物であるとして,原告の社会的評価を低下させ,もって,原告の名誉を毀損したものといことができる。
(2) 違法性の有無
 そこで,次に,本件各発言について違法性を阻却する事情が認められないか否かについて検討する。
 本件のような電子掲示板(BBS)において,ある者の発言(書き込み)に対して,他の者がこれに対抗的な発言(書き込み)をするという中で,議論の応酬となり,発言内容について,相手方の名誉を毀損するものであるとか,侮辱的な発言であるとして問題が生じることがある。そして,まず相手方の批判ないし非難が先行し,その中に名誉等を害する発言があったため,これに対し,名誉等を害されたとする者が相当な範囲で反論をした場合,その発言の一部に相手方の名誉を毀損する部分が含まれていたとしても,そのことをもって,直ちに名誉毀損又は侮辱による不法行為を構成すると解するのは相当でなく,不法行為を構成するのは,当該反論等が相当な範囲を逸脱している場合に限るというべきである。この相当な範囲を逸脱するものであるか否かの判断は,発言の内容の真否のみならず,反論者が擁護しようとした名誉ないし利益の内容や,当該反論がいかなる経緯・文脈・背景のもとで行われたかといった事情を総合考慮してすべきものである。
 これを本件についてみると,上記1に認定した事実によれば,原告は,原告ホームページにおける「北海道では一時停止規制の取締りは全く行われていない」という記述を被告Y1から誤りである旨指摘されたことを契機として,被告Y1らに対し,必ずしも趣旨が明確でない発言をしたり,被告Y1らを揶揄する発言を繰り返すなどして,被告Y1らを強く非難し,また,「私はギャラリーに対してのアピールを最重要視している。当事者のどちらが正しいのかを当事者同士で判断するつもりはない。」として,被告Y1らからの釈明や反論に対してはまともに答えないという対応を繰り返していたのである。そして,被告Y1は,上記のような原告の発言に対し,自らが主宰する◎◎◎が開設した本件ホームページを閲覧する読者に対し,事態の推移につき説明する必要に迫られていたということができる。加えて,本件各発言は,その表現に穏当でない部分が少なからずあるものの,原告の社会的評価を低下させる程度は必ずしも高くはなく,また,本件掲示板及びF掲示板の読者は,本件各発言が,原告と被告Y1らとの間の論争の一環としてされたものであることを容易に理解し得たものと思われる。
 これに,上記1認定のとおり,本件掲示板は,反論が容易な媒体であって,自由に書き込みをすることができ,現に,原告は,全発言者の中で最多あるいはそれに近い発言回数及び発言文字数の書き込みを行い,本件各発言に対する反論を十分行っていたこと,原告は,これまでに,本件ホームページの管理人である被告Y3に対し,本件各発言を削除するよう依頼したことはなく,また,本件訴訟をテーマとした「表現の自由とその限界」と題する公開ホームページを開設し,被告らからの中止要請にもかかわらず,本件訴訟において当事者双方が提出した書面(訴状,準備書面,証拠説明書)や,原告と被告Y1らとの電子掲示板におけるやり取りを記録した電子データ等を,実名入りで公表し続けてきたこと等の事情からすると,本件各発言は,社会的に容認される限度を逸脱したものとまでは認め難く,これを対抗言論と呼ぶかどうかは別として,不法行為責任の対象となる程の違法な行為と評することはできないというべきである。
 (3) 以上のとおりであって,本件各発言は,名誉毀損性を有するものの,違法性を欠いているから,不法行為を構成しないというべきである。

と判断しています。

本件掲示板は,反論が容易な媒体であって,自由に書き込みをすることができ,現に,原告(注:名誉毀損を受けたとして裁判所に泣きついた被害者)は,全発言者の中で最多あるいはそれに近い発言回数及び発言文字数の書き込みを行い,本件各発言に対する反論を十分行っていた」事情を踏まえると、「対抗言論と呼ぶかどうかは別として」「社会的に容認される限度を逸脱したものとまでは認め難い」として、「不法行為責任の対象となる程の違法な行為と評することはできないとした、というものです。

また、対抗言論の法理(4)という趣旨における「対抗言論の法理」としては、最高裁の判断としては、グロービートジャパン対平和神軍観察会事件での判断があります。

同事件において、東京地裁段階では、
「対抗言論の一環としてなされた批判活動は、対抗言論の法理(4)によって、名誉毀損の成立を緩めてやってもいいじゃんから、無罪でいい」
という趣旨の判断が出されたようですが、控訴審、最高裁においては、これを否定しました。

最高裁においては、
「インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても、他の場合と同様に、行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべき〔対抗言論の法理の適用を指すものと理解されます〕ものとは解されない」
という判断を示しました(最判2010年3月15日)。

以上、長々と解説しましたが、結論で言えば、
・やられたら、対抗言論や反論によって、名誉回復する方法を理解・再認識すべき
・対抗言論や反論を展開する際、当該「対抗言論や反論」が名誉毀損とならないよう、注意をすべき(反論や反駁をする際も、ジェントルでエレガントでコンサバな内容・表現・マナー・トーンを心がけ、で法律に触れない表現活動をすべき)
・あと、対抗言論や反論を行った後、さらに、法的責任を追及しようとした際、相手方が「対抗言論ですでに名誉回復したから、もうこれ以上、オレをいじめなくてもいいだろ」という反論がされてくる可能性があることに注意をすべし
ということになります。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01751_ネット上やSNS上に、自社商品やサービスに悪い評価を掲載されましたが、何か対抗策はありますか?

日本には表現の自由が保障されております(憲法21条)ので、見解や意見を表明することは自由です。

ネット上の悪評価も表明された見解ないし意見の1つであり、これも表現の自由として法的に保護されています。

他者を褒めるような表現であれば、何も、憲法でわざわざ人権で保障する意味は乏しいです。

むしろ、憲法で保障される意味があるのは、他者を貶す表現であり、自由に、悪口をいい、批判し、非難し、disるような社会体制を保障するところに、自由主義国家たる我が国の憲法の使命がある、という言い方もできます。

独裁者が専制的に支配する全体主義国家であれば、トップや政治体制を非難したり、悪口をいったり、貶したり、揶揄したりすることは許されません(トップや政治体制を褒めたり、持ち上げたりする自由はあるでしょうが)。

他方で、わが国では、首相は無能だ、あの大臣はバカだ、あの政党の党首は世間知らずだ、この内閣はいい加減総辞職した方が、あの不倫したゲス政治家は議員辞職するべきだ、ということを自由に表現できます。

そして、そのような、公然とトップや政治体制を非難し、批判し、貶し、disり、罵詈雑言を言い放つことが出来る、という表現環境そのものが、わが国の自由な政治体制を支えています。

以上からして、我が国の法的環境として、他者の悪口を言ったりするものであっても、表現行為として、原則として強く保障され、例外的に、他者の人権を明確かつ具体的に損害を与える場合に限定されて、当該表現行為が極稀に法的責任を生じる、というものとして整理されます。

したがって、
「悪い評価」
の内容や根拠やマナー、トーンにもよりますが、単に悪口を言われたからといって、すぐに法的問題として対処可能とは考えられず、むしろ、多くの場合、法的には許容範囲となります。

他方で、企業側も表現の自由を有しており、当該自由ないし権利に基づき対抗言論によって、事態を打開することは可能です。

すなわち、企業ホームページ等で適切な事実を公表し、反論を加える対抗言論という方法が費用、広報戦略の観点から適切です。

なお、対抗言論を行う場合には、泥試合にしないよう、格段の注意を払って、カウンターリリースプロジェクトを企画・構築・実践しなければなりません。

すなわち、
「素手で殴られたらナイフで応戦、ナイフで斬りかかれたら銃で応戦、銃には戦車で応戦、地上戦を挑まれたら空中戦で、空中戦を挑まれたら宇宙戦で」
というものであり、
「同じ土俵に立たず、高位の次元から、圧倒的なパワーで封殺する」
ということが肝要です。

ただ、明らかに虚偽の事実や、受忍限度を超えた誹謗中傷等があり、違法性が顕著な場合、プロバイダ責任法3条2項2号では一定の要件のもと、プロバイダ等に情報の送信を防止するための措置を認めています。

また、プロバイダ等は独自の規約を設けていて、通常規約に違反するコンテンツを削除する権利を明記しているので、当該規約を根拠とした削除要求が考えられます。

なお、プロバイダ等が削除要求に応じない場合には裁判によるほかありませんが、ネット上の権利侵害はログ(ネット上の書き込みの記録)の保存期間が3か月から6か月程度といわれており、ログの保全や開示の仮処分命令の申立てもあわせて行うことになります

裁判で書き込みの削除を請求することもでき、名誉を棄損するホームページやその記載の内容を削除する条理上の義務を認めた裁判例もあります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01750_当社製品への不買運動が発生しましたが、広報担当としてどうすればいいですか?

不買運動は、まったくの事実無根の場合、事実に基づく場合、さらには、
「事実に基づくものの、偏見や誇張をふまえて全体として事実とは異なるようなものとなって独り歩きしているような場合」
まで多様なものがあります。

まったくの事実無根の誹謗中傷があるならば、名誉棄損による損害賠償等、法的措置で対抗することが考えられます。

また、完全な事実無根とは言い難いが、偏見や誇張をふまえて全体として事実とは異なるような理由を根拠として、ネットやSNSで不買が呼びかけられている場合も、同様です。

しかし、事実に基づく不買運動の場合、消費者が持つ企業あるいは商品に対するイメージや考えを外部に表現する行為ですから、それが、名誉毀損や威力業務妨害など刑事罰に触れるような行為を伴わない限りは、憲法21条の保証する表現の自由のひとつとして保護されています。

企業としては、憲法21条の表現の自由を行使し、対抗言論によって対抗措置を取ることが可能です。

企業イメージをあげるキャンペーン、ホームページによる情報発信などで不買運動に対抗することが想定されます。

あるいは、ファクトチェック型、バイアスチェック型、ファクト&バイアスチェック型の第三者委員会を設置して、公正中立な第三者により検証された、虚偽も偏見もない、正しい情報を確立して、これを発信するような手法を取ることも可能です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01749_どのような場合に謝罪広告を掲載しなければなりませんか、また自社サイト上への謝罪文はいつまで掲載すべきですか?

誹謗、中傷的表現を受けたとして被害者から裁判を提起され、人格権侵害行為(不法行為)に基づく民事責任の追及の一環として、謝罪広告の掲載を求められ、裁判所がこれを認容する場合、民法723条の
「適当な処分」
として、訂正・謝罪を命じる場合があります。

裁判所の命令に従うような状況ではなく、任意にかつ自主的に謝罪広告を出す場合(企業の自主的判断で謝罪広告をホームページ上に載せる場合)においては、謝罪広告を出すか出さないか、出すとしてどのような内容の謝罪広告を、どのような形で、何時出すかは、すべて企業側の自由(表現の自由)です。

謝罪を行うにしても、謝罪があったことを裁判外の自白があったとして、これを有力な根拠として援用して損害賠償請求をされるリスクがあるので、誰に向けた謝罪か、何に対しての謝罪か、法的責任を前提とする謝罪か、法的責任を前提とせず、世間を騒がせたことに対する謝罪かなど、謝罪広告を企業側に不利に援用されるような展開予測を十分に検討し、損害賠償請求リスクに耐えうる謝罪文を構成する必要があります。

この点において、

経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意

を参照にしてみてください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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