01936_訴訟提起されそうな気配を察知したときの選択肢

訴訟されそうな気配を察知したら、すぐさま応戦体制を敷く、ということもありましょうが、ケースによっては、
1 何もせずに、訴えられるのを待つ
2 相手に対して、裁判例を示して、牽制を加える
という戦略もあります。

2は、訴訟を進める上で(相手方に)重大な障害にぶち当たることを予知させることで、訴訟提起を断念させる方向への誘導が可能となります。

ここでいう
「(相手方に)重大な障害」
を、細かくみていきましょう。

裁判例をみた相手方弁護士からすると、訴訟に難航が予知され、長陣になった上に、最後に敗訴を食らうことも想定され、赤字事件化しかねません。

そこで、相手方弁護士としては、赤字覚悟で事件を引き受けるよりも、(相手方本人に対し)着手金を高めに設定したり月額費用を追加するなどの措置を取るでしょう。

それは、相手方本人にとっては、訴訟コストが跳ね上がることを意味します。

「訴訟に難航が予知」
「長陣」
「敗訴」
は、すなわち
「訴訟コストの大幅アップ」
を意味するだけでなく、
「こんなはずではなかった」
「話が違う」
と、相手方において、弁護士サイドと本人サイドとの内部抗争を誘発することになりますし、訴訟提起を断念させる方向への誘導が可能となります。

こちらとしては、
「いいことづくめ」
といえるのです。

ただし、以上の戦略は、顧問弁護士の手腕(交渉力)に依拠することを忘れてはなりません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01935_トラブル解決のための段取り

トラブルを法的に解決するためには、次のような流れで、段取りを組んでいくこととなります。

1 トラブル解決を行う上での基本的前提の共有

トラブルを解決するには、
「日常空間」
とはまったく異なる
「ビジネス空間」、
さらには、
「ビジネス空間」
よりも特異度の顕著な
「リーガル(有事・法的紛争)空間」
における、基本的な空間支配プロトコルを知らなければなりません。

そのうえで、弁護士は、クライアントに対し、3つの各空間における
「トラブル解決のアーキテクチャ」
「トラブル解決のロジックやルール」
を、事例に即して伝えます。

2 具体的な落とし込みの検討

クライアントのリテラシー実装を前提として、行動対処計画(「トラブル解決のアーキテクチャ」「トラブル解決のロジックやルール」に即応し、最適化したトラブル解決プラン)の具体的落とし込みを検討します。

3 行動計画の立案・提示し、予算計画や動員計画をたてる

・クライアントにおいて対処する事柄
・弁護士が準備して、クライアント名義で対処する事柄
・クライアントと弁護士が共同して対処する事柄
・弁護士がクライアントの代理人として対処する事柄

といった形で、それぞれの状況対処課題について最適な行動計画を立案し、提示し、予算計画や動員計画を詳らかにして、対処していくこととなります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01934_予防法務の大切さ_現状総括

プロジェクト責任者が、企業トップに対し、
「現在の状況については結果的にはそこまで悪い状況ではないと考えていますが・・・」
などと前置きしながら報告をする場合、 たいていは、状況は悪化しています。

悪化、すなわち不快な状況にいたるには、

ゲーム空間の構造、論理、秩序、ルールの理解の不全
状況認知の不全
状況評価の不全
状況解釈の不全
展開予測の不全
ゴールデザインの不全
課題抽出の不全
対処行動選択肢抽出の不全
実行上のミス

等、実に様々な失敗の連鎖があるはずです。

そして、
「現在の状況については結果的にはそこまで悪い状況ではないと考えていますが・・・」
と言うプロジェクト責任者の、その認識ないし解釈そのものが
「不全」
となっている可能性があります。

企業トップが、不快な状況を変えようと、ゲームチェンジを行うのであれば、
「経路遮断」
を前提に、 現状総括をしなければなりません。

プロジェクト責任者が、どの部分から病巣部位が始まっているのかを認識していない状況では、自己保存バイアスが働き、
「経路依存」
が顕著となり、小手先のゲームチェンジとなって、また、より悲惨な失敗にいたるからです。

弁護士が加わったとしても、認知が歪んでいる責任者と、ロジカルな戦略を議論したところで、時間と労力の無駄になりかねません。

「現状総括すら困難であり、認知支援を」
と、企業トップが弁護士に相談するのであれば、非法律的案件として、
「現状総括DD」
を依頼することとなります。

企業にとっては、それすら、お金と時間を垂れ流すことになりますが、まずは現状の総括をしないことには、ゲームチェンジなど行えないのです。

こまめに顧問弁護士と連携をとり、フェーズが変わるごとに現状総括することは、予防法務に通じます。

「虫歯が広がってから虫歯の治療をはじめるよりも、虫歯にならないようにこまめに歯をメンテナンスすること」
に照らし合わせると、わかりやすいでしょうか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01933_株式市場が単なるカジノとは違って、産業経済的に大きな意味をもつ理由

株式市場に参加する方は、そこで、儲けることを企図しています。

誰も、損をするつもりで参加しておらず、売りであれ、買いであれ、長期保有であれ、短期売買であれ、現物であれ、信用であれ、参加者全員は、儲けようと思って、株式市場に参加しています。

その意味では、株式市場は、カジノや賭場、競馬場や競輪場と同じ性質をもっています。

日経新聞や会社四季報は、いってみれば、投資家にとっての競馬新聞や競馬ブックと同じ意味合いをもちます。

私は、競馬はやりません。

何十年も前に友人に連れられて京急だかモノレールだかに乗って競馬場に行って、馬券を買って、レースを観たことはあります。

ですが、何が楽しいのかまったくわからず、それ以来、まったく競馬とは接点がありません。

駅の売店や、コンビニに行くと、競馬新聞とか、競馬ブックといった競馬ファンのための新聞が置いてあるのを目にします。

これら特殊な新聞は、一見して読む気が失せるくらい小さい字で、暗号や記号や呪文のような難解で判読不能なデータがぎっしりつまっており、競馬に興味のない私にとっては、まったく用のない新聞です。

ですが、競馬をやる人にとっては、大事な情報源のようで、
「(こう言っては失礼ですが、)普段、本とか新聞とかあまり読まなさそうなオジサンたち」

「徳川埋蔵金の在り処を示した地図」
「ナチスの隠れた財宝が隠された場所に導く暗号文」
を見るかのように、買って手にした瞬間、目を皿にして必死に読んでいる姿をみかけます。

もし、競馬に興味のない私が、
「競馬新聞とか競馬ファンとかを、きっちり読んで、理解しておけ」
と言われると、とんでもない苦役となります。

理解が困難ということもさることながら、競馬をやらない私にとって、無意味で無価値で無用なデータを目にすることそのものが、とんでもなく退屈で苦痛です。

他方、私は株や指数先物といった投資活動はやっています。

無論、暇つぶしのゲーム感覚で、お小遣い稼ぎの趣味程度ですが。

私にとって、日経新聞や日経ベリタスは、日々刻々と変化する投資に関する貴重な情報がぎっしりつまっており、新聞が届けられたらすぐに目を通します。

最近では、ネットで朝4時には紙面更新されますので、早く起きたときなどは、新聞取りに行かなくても、ベッドの中でスマホでブラウズできたりもしますし、非常に便利になっています。

市場の動向や、市場に影響を与える政治動向や事件や騒動、また、これらイベントがどのように関連し、影響を与えあって、どのようなインパクトをもたらすか、といった、事象解明に関する解説記事を含め、毎日、ほぼすべてに目を通します。

競馬ファンが競馬に興じる際に、予測の根拠となる最新のデータや解析結果を強い興味をもって追い求めるのと同様、私も、日経新聞から、強い興味と探究心をもって、情報を入手し、読解に努めます。

年配のサラリーマンの方が、若いサラリーマンに
「社会人になったら、日経新聞くらい読まなきゃ」
と諭す姿を見かけることがあります。

いや、普通、読まないでしょ。

大学出たばかりで、企業社会も経済も知らず、投資にも縁がない、社会人1年生にとって、日経新聞など、競馬をやらない私にとっての競馬新聞と同じです。

「社会人になったから」
という理由だけで、経済に縁のない人間にとっての無意味な暗号や記号や呪文な羅列のような
「日経新聞を読め」
というのはあまりにも無理があります。

私がもし
「あなたも、大人になったんだから、競馬新聞くらい読まないと」
と言われたら、感覚遮断して無視します。

私ならこう言います。

「社会人になったら、勉強と思って、FXでも指数CFDでもいいから、マーケット環境と紐づく投資をやってみたら? 最初は、勘で適当にやったらいいよ。そのうち、欲が出て、儲けたい、損を避けたい、と思ったら、自然と勉強したくなるから、そうなったら、日経新聞とか読んでみたら。より深く、投資を楽しめるよ」
と。

要するに、何のメリットも意味も価値も脈略も目的もなく、
「経済を勉強しろ」
「日経新聞を読め」
という指示は、
競馬に興味のない私に
「競馬新聞や競馬ファンをがんばって読め」
というのと同じ指示であり、プロジェクトの設定と構造において、本質的な無理があるのです。

構造上、本質上の無理がある、ということは、
「降りのエスカレーターを昇れ」
というのと同様、一過性の実現は可能であっても、持続可能性がなく、そのうち破綻します。

経済学とは、私なりの理解で言えば、
「一定の地域ないし社会集団において、限られた資源をうまく活用して、そこにいる連中全員を、食わせ、幸せにする、あるいは、当該地域ないし集団をリッチにする」
というゲームミッションを達成するための、ゲーム戦略の体系です。

「集団構成員が、おのおの欲の赴くまま、市場における交換を通じて、富を増殖する自由なゲームに興じさせれば、構成員が豊かになり、国全体もリッチになる」
という戦略の流派があったり、
「市場が失敗することもあるから、集団構成員に好き勝手にさせるのではなく、大きな破滅に至らないように、ちょいちょい政府がお節介をした方がいい」
という流派があったり、
「集団構成員に勝手なことをさせたら、絶対大きな破滅に至り、うまくいかない。政府が完璧な計画を策定し、構成員の自由を否定して、徹頭徹尾、政府の指示どおりさせた方が、皆が幸せになる」
という流派があったり、また、最近では、
「今まで、集団構成員は、皆、『頭がよくて、合理的な行動をする』と思っていたが、意外と、馬鹿ばっかだし、アホなことばかりやってる。『なんだかんだ言って、結局、皆、バカばっか』という前提で社会システムを設計した方が、最適な資源配分や国富増大が可能となる」
という流派が出てきたりしています。

しかし、こんな
「ゲーム戦略の体系」
をガチで学ぶ必要性があるのは、ゲームプレーヤー、すなわち、当該地域を支配するエスタブリッシュメントである、日銀関係者か政府関係者くらいです。

したがって、日銀に入ろうとか、国家公務員総合職試験に合格して、財務省や経済産業省等にでも入ろうというなら、経済学は必要であり重要ですが、それ以外の仕事につくなら、経済学、
「一定の地域ないし社会集団において、限られた資源をうまく活用して、そこにいる連中全員を、食わせ、幸せにする、あるいは、当該地域ないし集団をリッチにする」
というゲームミッションを達成するためのゲーム戦略の体系を、必死こいて学ぶ必要性は乏しいです。

もちろん、
「日銀行員や公務員を目指さないなら、経済学の勉強は不要」
とまでは断言しません。

すなわち、派生的・副産物的な使い方として、経済学の考え方を使ってビジネス課題を解決することは可能ですし、前述のとおり、投資家がマーケットの行く末を予測する際、政府や中央銀行の行動の意味や動機や背景を分析する際の説明原理としても有用性があるからです。

「『別に、日銀に行くわけでもなく、公務員を目指しているわけでもなく、経済学を使った課題解決をするようなプロジェクトとの関係ない人間』に、趣味や教養やたしなみとして、『経済原論を学べ、金融論を勉強しろ、財政学、公共経済学、国際経済学、国際貿易論、国際金融論を勉強しろ、日経新聞を読め』などと説教臭く指示すること」
は、
「競馬をやらない私に競馬新聞を読め」というのと等しい、
持続不能に陥ることが明らかな、無意味な苦行を強制しているのと同じです。

競馬が好きそうだけど、純文学や哲学書や学術書とか絶対読まなさそうなオジサンも、競馬新聞とか競馬ブックは真剣に読みます。

考えようによっては、競馬新聞も競馬ブックも、一見して読む気が失せるくらい小さい字で、暗号や記号や呪文のような難解で判読不能なデータがぎっしりつまっています。

競馬をやらない一般人にとって、この特殊な文字や記号の羅列が盛り込まれた新聞を読むのは、マルセル・プルーストやミシェル・フーコーを読んだり、IPS細胞に関する学術論文の読解に匹敵するくらいのリテラシーとエネルギーが必要となります。

「欲や興味というのは、すさまじいエネルギーを生み出す」
ということをしみじみ感じます。

「純文学や哲学書や学術書とか絶対読まなさそうなオジサン」
をして、
「これに匹敵する難解なデータが詰まった抽象的な文字が踊っている新聞」
に没頭させる情熱と探究心とリテラシーを身につけさせるわけですから。

人間、年齢や立場に関係なく、生きている限り、欲はあるはずであり、金に興味のない人間はいません。

その意味では、
「投資で金を増やす」
という活動について、適切な誘導の下、きちんとエントリーさえできれば、その奥深さに魅了される可能性は高いと思います。

話はかなり脱線しましたが、
・ある観察においては、株式市場は、カジノや賭場、競馬場や競輪場と同じ性質をもっている
・同様に、日経新聞や会社四季報は、投資家にとっての競馬新聞や競馬ブックと同じ意味合いをもっている
ということが言えそうです。

となると、次の疑問として、
「株をやるのも、カジノをやるのもあまり変わりないなら、なぜ、政府関係者や日銀が、しかめっ面して、株価、株価と、株式市場のことを気にかけるのか?」
というものが出てきます。

確かに、株式投資も公営ギャンブルも同じであれば、株のことと同様に、競馬の勝ち負けのことももっと報道の光をあてても良さそうです。

あるいは、
「株なんてギャンブル」
「株式市場参加者は、昼間からボートレースにうつつを抜かす正体不明の中高年と変わらないし、株のことだけ取り立ててニュースになるのは意味不明」
という言い方もできそうです。

しかしながら、株式市場と賭場とは、公益性という点でまったく違います。

株式市場は、
「金儲けを目論む山っ気の多い参加者」
に対する
「公益ギャンブル」
として開設されているのではないのです。

もちろん、
「金儲けを目論む山っ気の多い参加者」
も排除せず、歓迎しています。

しかし、株式市場が世に存在する理由は、
「資金をうまく活用して、真っ当に成長する企業に、正しく、効率的に資金が提供されることを通じて、経済が発展する」
という点にあり、産業社会を発展させる公共インフラとして極めて重要なものなのです。

カジノやパチンコや公営ギャンブルやヤクザの賭場がなくなっても、産業社会はなくなりません。

他方で、株式市場がなくなったり、機能不全に陥ると、産業社会、ひいては資本主義経済が成り立たなくなります。

日本中、いや、世界中から、できるだけ多くの
「金儲けを目論む山っ気の多い参加者」
に参加してもらい、正しい情報が、偏りなく、速やかに情報が行き渡る形で売買してもらい、適正な株価が決定され、このことを通じて、企業に提供されるべき資金が競争的かつ効率的に行き渡ります。

効率的に行き渡った
「カネ」
を得て、企業は
「ヒト」
「モノ」
「チエ(開発資金に基づく研究開発)」
を実装し、成長します。

そして、成長性のない企業、成長を諦めている企業、資金を無駄に溜め込んでいるだけの企業、資金の使い方が賢くない企業、問題を起こして儲けより損失が多く今後の成長ないし維持が危ぶまれる企業、統治がデタラメでまともな組織運営が行われていない企業などは、株式市場で低い評価しかされず、そういうダメ企業には
「カネ」
が行き渡らなくなり、ついには、市場から退場させられます。

また、情報に虚偽があったり、情報の伝播に偏りがあったり、ズルやイカサマやインチキが横行すると、市場が歪み、資金における適材適所が維持できなくなり、
「ヒト」
「モノ」
「開発資源」
が効率的に行き渡らなくなり、経済システム全体が機能不全に至り、最後には国が滅びるのです(これは大げさな言い方ではなく、ソビエト連邦は、「ヒト」「モノ」「カネ」「開発資源」が効率的に行き渡らなくなり、最後には破綻しました)。

以上のような点から、株式市場が、
「金儲けを目論む山っ気の多い参加者」
に金儲けゲームの場を提供するものでありながら、 単なるカジノとは違って、産業経済的に大きな意味をもつ理由があるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01932_ビジネス課題を分類し、状況評価・状況解釈について齟齬をなくす重要性

経営者のビジネス課題は多岐にわたります。

ビジネス課題にはそれぞれプロジェクトがあり、各プロジェクトにはそれぞれ打ち合わせやメール・メッセージ等やり取りがあります。

経営者は、ややもすれば、日々の打ち合わせやメール・メッセージ等に埋もれかねません。

だからこそ、経営者は、ビジネス課題をビジネス課題としてしっかり分類することが重要です。

筆者は、ビジネス課題を次のように分類します。

1 経営課題1:お金を増やす(お金を増やす仕組みを創る)

2 経営課題2:支出を減らす(収益に貢献しない支出箇所を発見・特定して極小化・解消する)

3 経営課題3:時間を節約する(スピード制約要因〔ボトルネック〕を発見・特定して極小化・解消する)

4 経営課題4:手間を節約する(無駄な手間をなくす)

5 会計管理課題1:正常な経営状況をミエル化・カタチ化・言語化・数字化・フォーマル化

6 法務課題1・文書管理及び予防法務課題:「正常な(有事至る以前の、未然の)」経営状況をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化

7 法務課題2・紛争法務課題:すでに有事に移行した事案について、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技を用いて、事態対処を行う

8 外注管理課題:5、6、7のいずれかまたは全てを外注する場合における外注管理及び外注が効果的に機能するような事務的支援

5、6、7については、企業によっては、内製の課題とするのではなく、外注課題・外注管理課題とするのが、合理的でしょう。

6については、
「内製化する」
という選択肢をとる企業もありますが、上場企業ではない、あるいは上場を目指さないのであれば、特に強制の契機が働くわけでもないため、内製化にこだわらなくてもよいでしょう。

7については、(紛争法務経験がある、年収2000万クラスの)社内弁護士でもいない限り、外注一択であり、素人が、弁護士の真似事をすると、たいてい大やけどを負うことになる、と考えます。

「分類するだけで終わり」
ではありません。

「日々の事象をどの課題として認識するか」
は、課題を分類する以上に重要です。

例えば、
・従業員が、働き方や残業代等に不満を持ち、労基に駆け込む
・従業員から内容証明郵便の通知が来る
というような事象は、弁護士の感覚からすると、すでに
「大きな有事」
であり、一刻も早く、
「7 法務課題2・紛争法務課題:すでに有事に移行した事案について、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技を用いて、事態対処を行う」
と決断し、専門家介入すべき重大かつ重篤な病理インシデントです。

ところが、経営者によっては、
「6 法務課題1・文書管理及び予防法務課題:「正常な(有事至る以前の、未然の)」経営状況をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
と判断し、その結果、事態がこじれ、対処が遅れ、対処に失敗し、結果、大きな火傷を負う方がいらっしゃるのも現実です。

経営がうまくいっている企業の経営者は、専門家(弁護士)を上手につかって
「日々の事象をどの課題として認識するか」
状況評価、状況解釈について、弁護士との齟齬をなくすことに注力しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01931_弁護士との対話を通じて、状況評価・状況解釈について齟齬をなくす重要性

弁護士との議論や意見交換は、
「(弁護士に)言い負かされた」
「(弁護士を)論破した」
などという営みではありません。

いわば、
「対話」
とも呼べるものです。

ところで、人には、認識や解釈、評価、保有情報や展開予測などに、それぞれ顕著な個体差があります。

個体差があるゆえに、人の認識や解釈、評価、保有情報や展開予測などに隔たりがあるのは、当然のことです。

さて、弁護士の視点からいえば、経営者と弁護士において、それら隔たりを隔たりのままにしておくと、やがて大きな事故や事件に至ります。

・保有情報の隔たり
・情報認識・解釈・評価資源(知性、教養、経験、リテラシー等)の隔たり
・認識の隔たり
・評価の隔たり
・解釈の隔たり
・展開予測の隔たり
・ゴールデザインの隔たり
・課題認識の隔たり
・課題の重篤性評価の隔たり
・課題対処のための方法論の隔たり

これら隔たりは、
「弁護士との対話」
を通じて、極力少なくしておくことに越したことはない、といえましょう。

経営がうまくいっている企業の経営者は、
「談論風発、大いに好むべし」
と、
「“顧問”弁護士との対話」
を増やすことで、無駄な重複を避け、事故や事件を軽減し、ビジネスに注力しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01930_開業プロフェッショナル(開業医、経営弁護士等)における経営問題についての法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装

「開業プロフェッショナル(開業医、経営弁護士等)」 となって、事業が軌道に乗ったとしましょう。

人によっては、支店(分院)を増やし、人員を増やす経営戦略をとる方もいます。

そんなのあたりまえと、思うかもしれませんが、
「支店(分院)経営の事業主体(オーナーシップ)はどちらにあるか」
「誰が支店(分院)経営を仕切るか」
という点は、とても重要です。

一例を申し上げますと、 優秀なアルバイトドクターを招聘し、分院経営を任せる方がいます。

分院の経営について、アルバイトドクターが優秀だからと安心し、放任していると、いつの間にか主従が逆転し、年月を経て、分院がアルバイトドクターのものになる(乗っ取り)というような事態に陥りかねません。

本来、経営というものは(本院であろうが分院であろうが医院経営についても同様で)、

ヒト:人的資源動員(労務マネジメントやシフト管理)に関する指導序列や優劣関係性
モノ:物的資源動員(設備や各種医薬品や医療用品の調達運用管理)に関する指導序列や優劣関係性
カネ:資金調達運用管理に関する指導序列や優劣関係性

という3つにおいて、
「主体的に仕切っているのは誰か」
ということで整理できます。

そして、
「主体的に仕切っているのは誰か」
については、コミュニケーションに現れる関係において、見て取れます。

「コミュニケーションに現れる関係」
というものにも様々なものがあり、いくつかの分野に分析的に整理されます。

すなわち、一見すると、
「本院経営者=明らかに上位序列」
と概観されますが、議論やコミュニケーションのテーマをつぶさにみていくと、

1 人生の先輩・後輩といった人間一般の指導序列や優劣関係性
2 経営者としての先輩・後輩といった経営経験や経営実務知見の指導序列や優劣関係性 
3 医院経営における指導序列や優劣関係性
(1)ヒト:人的資源動員(労務マネジメントやシフト管理)に関する指導序列や優劣関係性
(2)モノ:物的資源動員(設備や各種医薬品や医療用品の調達運用管理)に関する指導序列や優劣関係性
(3)カネ:資金調達運用管理に関する指導序列や優劣関係性
(4)チエその1(正常な医療活動を行う上での技術や知見):医療技術の向上改善に関する議論の指導序列や優劣関係性
(5)チエその2(医療過誤や医療事故対処を行う上での技術や知見):医療に失敗した場合の事態対処に関する議論の指導序列や優劣関係性

といった形で分類整理ができるのです。

たとえば、アルバイトドクターが本院経営者より年配であったり、姻戚関係や知古の関係であったりする場合、会話やメール・書簡などのやりとりにおいて、本院経営者とアルバイトドクターとの間に主従逆転の序列が形成されます。

要するに、本院経営者が、アルバイトドクターから医療について指導を仰いだり、人生の先輩として教訓を得たり、さらには、医療技術や事故対応について助言や指導を受ける立場にある場合、
「関係がフラットなものか」
「上下関係ないし指揮命令関係ないしボス・部下関係等の優劣を含む関係なのか」
という点において序列が形成されるのです。

この解釈を、このさきどのように展開予測するかは、人それぞれ違い、弁護士による助言もそれぞれカスタマイズされることになります。

経営に長けた個人開業医の傍には、必ずといっていいほど経営に長けた弁護士がいるのはこのような所以です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01929_従業員に社内調査をさせるとは_その2プロジェクトの基本

プロジェクトの基本は、
・誰を相手に、
・何を課題・障害事項として、
・どういうゴール(改善の姿)を目指して、
・資源を動員するか、
ということです。

会社側が、従業員に対して、
「社内調査」
というミッションを遂行させる場合であっても、プロジェクトとしての基本は変わりません。

「調査」
という ミッションにおいて、もっとも端的でスマートでロジカルでソフィスティケートされた遂行方法は、
「当人から直接聴取する」
というものです。

プロジェクトの発注者が誤った目的を有す、あるいは目的を明確にしていないと、プロジェクトの受託者(この場合、「社内調査」というミッションを遂行することになった従業員)は、より一層ひどいレベルで、目的を誤認し、迷走しかねません。

目的不明、筋書きやシナリオが欠如あるいはいい加減なプロジェクトは、時間と資源の無駄、という点において、発注側(この場合、経営者)において、厳に戒めるべきものと考えます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01928_社内不正調査で、従業員に関する調査を行う場合の留意点

社内調査を行う過程で、特定の従業員に関する調査が課題として浮上した場合、いきなり、探偵ごっこのような形で、多大な資源を投入して、身辺や周辺を洗い始める場合があります。

関係情報を収集し、「ひょっとしたらこういうことかも」「これが真相じゃないか」と、経験則を用いた推認を披瀝する「迷」探偵が多数登場し、あーでもない、こーでもない、と本人不在のところで議論がはじまる。

しかし、このような「探偵ごっこ」的調査は、たいてい、無駄で無益に終わります。

「調査」
という ミッションにおいて、もっとも端的でスマートでロジカルでソフィスティケートされた遂行方法は、
「当人から直接聴取する」
というものです。

調査課題が明確になった場合、普通に考えられる方法は、関係当人から直接聴取することです。

そして、そのために、必要なオーソライゼーションを取得することが、
「調査」
の早道です。

当人が聴取を拒否し、必要なオーソライゼーションを取得できない場合に、はじめて、関係情報を収集し、経験則を用いた推認の出番となります。

たとえば、税務調査では、(犯則調査のような特殊な場合を除き)通常、(内偵や密行性の高いバックグラウンド調査をするのではなく)普通に、アポをとって、対象となる会社あるいは個人を訪問し、概要を聴取し、資料を出してもらい、資料を確認し、わからなければ質問し、調査を遂げます。

犯則調査の場合であっても、周辺を調べ上げることはしますが、やはり最後は、ヒヤリングを実施し、特定の主観要素立証(仮装隠蔽の意図)の認識を確認して、調査を完遂します。

いずれの調査も、
「当人に対する聴取を遂行する」
というプロセスが予定されており、これが調査の中核となるように設計されています。

訴訟でも同様です。

痕跡や文書だけでは最終判断がなされることはなく、ヒヤリング、すなわち証人尋問を、判断・評価の最終的かつ最重要なイベントとして予定され、想定されて、手続き設計がなされています。

税務調査型(ヒヤリング先行)であろうが、犯則調査型・訴訟型(ヒヤリングを最終的・補完的プロセスとして位置づける)であろうが、
「『対象者へのヒヤリング』をしない、できない、オーソライズされていない、まったく予定されていない」
ということは、あり得ないのです。

本人を呼び出して、疑問と思った内容を糺す。

これが調査の基本です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01927_裁判沙汰になるような戦術における考え方

「戦術は戦略にしたがう」
などと言われますが、戦術課題や作戦の方向性は、そもそも、
1 状況をどう認知し、どう解釈・評価し、
2 どのようなゴールを設定し、
3 当該ゴールからバックキャスティングした際に、どういうタスクをデザインするか、
という思想に帰着します。

すなわち、戦術課題とは、作戦立案上の、思想・哲学・根源的デザイン(構想)に依拠し、論理的に決定・選択されるべきです。

1  状況をどう認知し、どう解釈・評価するか
(1)○○が奏功する
(2)そもそも○○など奏功しない

2 どのようなゴールを設定するか
(1)○○をする
(2)○○は現実的には不可能だから、現実解として、二次的目標として、「△△をする」

3 当該ゴールからバックキャスティングした際に、どういうタスクをデザインするか
(1)少しでも奏功させるために、意を尽くし、どこまでも執念深く、時間をかけて、巧緻に、入念に、調査をして、○○を実践する
(2)「1秒でも早く」スピーディに、二次目標である「△△」の具備と要件実証の「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」を 実施する。

ところで、弁護士が関わるような案件には、多大な資源(ヒト・カネ・時間)を費消することになります。

よって、現実解・最善解を求めるべく、スピーディーかつ合理的範囲における、マルチタスクでの執行を展開することを推奨することになり、それは、いずれも(2)を選択することを推奨することを意味します。

たとえば、裁判沙汰になるような案件の場合、現実解・最善解である(2)を選択するには、
「○○を実践する」
というメインシナリオを、早急に、序列劣位として(もちろん、できればできたで、それは望外の慶賀とすべきですが)、その前置手続きとして、
「○○を実践することが不可能である」
ことを構築しなければなりません。

そして、それには、時間をかけず、間をおかず、合理的な調査範囲において○○をトライして、疎明資料の基礎となるべき疎明事実の構築をする(=一定範囲での「○○不能」の調書徴求を行う)ことが、現実解・最善解といえるのです。

「時間をかけず」
ということは、執行対象について、
「すべてを対象とする」
あるいは、
「あたりをつける」
というような感受性ではなく、
「ここまで執行をやって空振りだったら、裁判所も、○○の疎明として十分と考えるであろう」
との感受性を基礎にする、ということです。

このような構想に基づき、タスクデザインや選択肢におけるジャッジを行っていくことが、
「戦理に適う」
と言えるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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