01987_「常識」対「非常識」の戦い

訴訟事というものは、いわば、常識と非常識の戦いです。

そして、常識と非常識が戦った場合、常に優位に立つのは非常識です。

1 「常識」対「非常識」の戦い

法も裁判も、
「法」
という非常識を理解し、味方につけ、これにしたがって非常識でえげつない準備をした側を守り、勝たせます。

「常識」
に囚われ、
「非常識」
な事態や相手を理解・想像せず、法という
「非常識」
にしたがった準備を、してこなかった者に対しては、怠惰、唾棄すべき存在として、徹底して煮え湯を飲ませます。

優位に立った非常識は、常識に遠慮するどころか、ますます図に乗り、のさばり、全てを奪っていきます。

ですから、次のような思い込み・バイアスにおかされ、(とらわれから)一歩も出ない人は、徹底して煮え湯を飲まされる、というわけです。

・常識的に対応して何が問題だ、何が悪い。

・こっちは、常識を味方につけているんだから、一点の間違いもない

・常識と非常識が戦ったら、常識が、非常識が負けるにきまっているだろ

・常識を唱えつづけていれは、いつかは、非常識も、常識に目覚め、こちらに遠慮し、話が通じ、妥協点がみつかるだろう

このような思い込み・バイアスにおかされ、とらわれている人は、状況を認知・解釈する段階で、バイアスや妙なフィルターがあるため、弁護士がの話す言葉は理解できたとしても、話が通じないのだと思います。

いわば、天動説を盲信するバチカンの天文学者のようなもので、これは終生治らないかもしれません。

ちなみに、天動説が地動説に変わったのは、天動説を唱えるバチカンの学者が、観測結果や理論的整合性を理解納得し、頑迷固陋を捨て、説を変更したから、というわけではありません。

天動説を唱える学者は、どんな観測結果や整合する理論を示されても、死ぬまで、自説を変えませんでした。

天動説が地動説にとって変わったのは、天動説を唱える学者が全員死に絶えたからです。

バチカンは、1990前半まで天動説を正当としていました。バチカンが地動説を認めたのは、1993年になってからです。

ですので、このような、死ぬ思いで、発想の転換というか、マインドシフトをしないと、戦略はおろか、状況解釈そのものが共有できませんので、そもそも戦う前提が整いません。

2 正解はなく、あるのは地獄の選択だけ

訴訟事において、正解はありません。

「何か、直面した課題を魔法のように消し去ってくれる、過去の過ちをすべてなかったことにしてくれる、そんな便利で、身勝手な妄想を叶えてくれる、魔法が存在し、その魔法を使えるのが、弁護士だ」
と思う人は、少なくありません。

これは大きな勘違いです。

弁護士は、正解なき状況においては、失敗の先延ばしのため、無駄なあがきの支援しかできません。

とはいえ、この程度の悪あがきをするだけでも、時間、費用、エネルギーといった資源動員が必要になります。

無駄な悪あがきは、文字どおり、
「無駄」
であり、抜本的解決策はなく、相手を辟易させ、面倒な状況を作出し、そこで、ほんの少し妥協を引き出す効果しかありませんし、この手の悪あがきに対する耐性がある相手方には、まったく無益です。

その意味では、
「無駄な悪あがきをせず、コスパ重視・自尊心無視で、とっとと相手にひれ伏す」
という一方の極論と、
「たとえ、無駄とわかっても、コストをかけ、時間労力を投入し、徹底して相手にとって面倒で付加のかかる抵抗を続ける」
という他方の極論があり、その間に、
「どっちつかずの中間解がいくつか存在する」
というのが現実です。

そして、そのすべてが正解ではない、ということなのです。

この状況を理解できない人は、(訴訟事について、弁護士が)何を話しても、受容能力の前提がない(聞く耳をもたない)ということですから、
「弁護士とコミュニケーションを取るのは時間の無駄」
になる可能性は否めません。

戦う間にすべきこと(弁護士に相談する前にすべきこと)は、実は、
「常識と非常識が戦った場合、常に優位に立つのは非常識」
「正解はない」
と、発想を転換すること(マインドシフトをすること)といっても過言ではありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01986_企業法務ケーススタディ(No.0373):紹介された“非常に儲かる投資商品”ついて気をつけることは?

【企業法務でありがちなケース・情景】

非常に儲かる投資商品を紹介されました。

外資系の証券会社の案内で、一口が結構な金額するので、特定のお金持ちにしか紹介しないものだそうです。

仕組みは複雑でよくわからないのですが、しっかりとした会社のようですし、担当者の方も、大手証券会社ご出資の方で、いい加減な話ではなさそうです。

専門外かもしれませんが、なにか、助言というか、気をつけるべき点があれば、教えて下さい。

【畑中鐵丸弁護士の助言・アドバイス・御指南】

まず、この種の案件評価も、ビジネス弁護士や企業法務弁護士の大きな役割です。

したがって、専門外ということはありません。

実際、顧問弁護士の立場で、経営者の知恵袋として、投資案件の評価・助言をすることがあります。

参考になると思われますので、よく似た事例を紹介します。

顧問先の経営者が、知り合いの経営者から紹介された、
「投資のプロ」
と称する、極めて高度な投資理論を使った、安全で、儲かる投資案件を持ち込まれ、その評価・助言を求めて、当事務所で面談しました。

自称「投資のプロ」
は、高そうなスーツに、高いネクタイをぶら下げて、理解したがたい、難解な理屈を並べ立てて、自分が提案する投資案件がいかに儲かるか、どれほどの投資家がこぞって投資を望んでいるか、を滔々と述べ立てます。

私は、コメントを求められ、
「私にはわかりません。理解できません」
と返答しました。

自称「投資のプロ」
は、
「弁護士さんには難しいでしょうね。新しい投資商品ですから」
などとやや小馬鹿にしたような目線で返し、
「じゃあ、進めてよろしいでしょうか?」
と畳み掛けます。

私は、
「いや、やめておいた方がいいでしょう」
と答えました。

場が凍りつきます。

私は続けます。

「先程から、いろいろ小難しい話をされていますが、これって、たかが金儲けの話。
儲かる話、の説明ですよね。
1万円札を5千円で買って、買った1万円札を2万円で売れる。
そんな程度の話ですよね。
別に量子力学の議論をしているわけでもないし、ホッジ予想やリーマン予想の話でもない。
単なる金儲けの話。
そんな単純な話なのに、私は全く理解できない。
『たかだか金儲けの話なのに、この私が理解できない』という点が問題なのです。
言えば嫌味になりますが、私は東京大学教養学部文科一類、通称東大文一に現役合格しております。
バカでは合格できません。
相応に国語読解能力が必要です。
したがって、私は、世の中の方々の平均以上に国語読解能力があります。
その、東大文一現役合格した私がもっている国語読解能力を総動員しても、あなたがおっしゃる、たかが金儲けの話なのに、理解できない。
別に、宇宙の成り立ちの話ではない。
ニュートリノの話でも、メッセンジャーRNAの話でも、ポアンカレ予想の話でもない。
何度もいいますが、たかが、金儲けの話です。
にもかかわらず、東大文一の国語読解能力を総動員して2回繰り返し聞いても、どういう構造と論理で儲かるのかが理解できない。
この場合の可能性は2つしかない。
1つは、『あなたが、東大卒の想像と理解を絶するほど非常に高度に知的で、話されている内容がabc予想や量子力学並に難解で、そのために、東大卒風情の私が理解できない』という状況。
あるいは、『あなたが話している内容が狂っているか、騙そうとしているから、東大卒の知性と理性を総動員しても、混乱した内容なので理解できない』という状況、のどちらかだ。
で、失礼ですが、あなたの学歴をお尋ねしてよろしいでしょうか。」
と。

そうしたところ、
自称「投資のプロ」
は、そそくさと逃亡しました。

あとでよく聞いたところ、マネロン絡みのリスクの高い取引のブリッジファイナンスで、
「1万円札の洗濯をお願いするのに5万円払って、一歩間違うと、犯罪行為に加担したとされるリスクを引き受けてもらう」
という話でした。

犯罪行為の加担としての
「お金の洗濯の資金と名義協力」
を、
「投資商品」
と言い張るため、東大卒の頭脳では、理解できなかったというオチでした。

高いネクタイ、高いスーツ、外資系、留学歴、そういう幻惑アイテムにごまかされてはいけません。

「自分以外の他人は一切信じず、他者の悪意を予測しつつ、他者の愚考や愚行を想定しつつ、非常識であっても、怒られても、睨み返されても、合理的に考え、自分の頭で考え抜いた予測や想定する」
ということを徹底しないと、お金をなくします。

それまで経験したことのない事業や取引や非常識なまでに高額の財産をめぐる処理にトラブルが発生し、裁判になって、負けて、全てを失った方は、異口同音にこういう言い方をします。

「自分は何も悪いことをしていない。相手を信じただけだ。常識にしたがっただけだ。なのに、なぜ、財産を失い、破滅することになるのだ」
と。

「相手に信じた」こと、
「常識に従った」こと、
それが諸悪の根源です。

「それまで経験したことのない事業や取引や非常識なまでに高額の財産をめぐる処理」
において、相手を信じたらおしまいです。

「それまで経験したことのない事業や取引や非常識なまでに高額の財産をめぐる処理」
において、常識を働かせたら死ぬだけです。

他人はすべて信じない。

自分以外の他人は一切信じず、他者の悪意を予測しつつ、他者の愚考や愚行を想定しつつ、非常識であっても、怒られても、睨み返されても、合理的に考え、自分の頭で考え抜いた予測や想定を披瀝する。

当然、喧嘩になる。

喧嘩になった場合も当然想定しておく。

そして、後で行う喧嘩を先にやっておく。

先に
「目先の波風」
を立てておかないと、後から津波に襲われます。

「それまで経験したことのない事業や取引や非常識なまでに高額の財産をめぐる処理」
においては、
「自分以外の他人は一切信じず、他者の悪意を予測しつつ、他者の愚考や愚行を想定しつつ、非常識であっても、怒られても、睨み返されても、合理的に考え、自分の頭で考え抜いた予測や想定する」
ことだけが破滅から救い、未来を創り出します。

自分でやり切る自信がなければ、弁護士や専門家を雇えばいい。

なんとなれば、
「ビジネス社会においては、カンニングあり」
なのですから。

優れた人ほど、他人を信じませんし、常識を無視しますし、目先の波風を立てることや、後でする喧嘩を先にしておくことを厭いません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01985_企業法務ケーススタディ(No.0372):契約期間中に内容変更のあった契約を、当初の契約どおり2年で終了できるか

【企業法務でありがちなケース・情景】

2年契約で結んだ契約でしたが、思ったように効果が出なかったので、2年で終了しようと考えていました。

なお、契約期間中に、相手の都合で契約内容に変更がありましたが、いつの間にか、契約内容変更の時点からさらに2年という契約になっており、契約相手から契約は続く、と言われてしまいました。

そもそもなぜこういうことが起こったのでしょうか?

こういうケースで、なんとか当初の契約どおり2年で終了させることは可能でしょうか。

【畑中鐵丸弁護士の助言・アドバイス・御指南】

「相手の都合で契約内容に変更があり」
ということですが、そこで、変更した契約にハンコを押しているはずです。

おそらく、契約内容変更の際に、変更された契約書か、あるいは変更の覚書をよく読んでいなかったことが原因です。

契約は、認識していたこと、思いこんでいたこと、想定していたことは無意味で無価値であり、書かれたことがすべてです。

変更されたときに押印したのが覚書だろうが、確認書だろうが、どんなライトでカジュアルなタイトルであっても、契約書と同等の効力があり、上書きされた場合、直近の契約書に書き換わります。

一般に、ビジネスパースンは、契約書を読むのが苦手です。

甲とか、乙とか、出てくると、ブラックアウト(視力喪失)になる方もいらっしゃいます。

あるいは、契約書をみると、南妙法蓮華経とか、摩訶般若波羅蜜と、同程度にしか理解できない、とおっしゃる方もいます。

まだ、そういう形で、素直にギブアップしてもらえればいいのですが、
「バカと思われたくない」
「体面にかかわる」
「俺は学歴はなくても、知性はある」
という意地とプライドで、読んだふり、知ったかぶりをして、
「よく理解できていません」
ということを言わないまま、署名押印する人もいます。

最悪なのは、契約書を読んでも理解できないとき、契約書を作成した契約相手の説明を聞いて、納得する場合です。

泥棒にカネを預けるような危険な行為ですし、絶対推奨できません。

なぜなら、契約相手は、無知な人間や、理解していない人間や、字や文書をよく読めない人間に、本当のことを言う必要はないからです。

美しい誤解はそのままに、そっとしておく、のがビジネスの世界のルールです。

読まない奴が悪い、相手を信頼した奴がアホ、大事な契約をするのに時間を惜しみ、手間を惜しみ、署名したことが命取りになる、それだけの話です。

「どうすれば良かったのか!?」
と言われそうですが、まず、
「自分は契約書を読む能力がない」
「(契約書は)李白や杜甫の五言絶句の漢詩にしか見えない」
ということを素直に認めることが最初です。

また、自分で読めなければ、がんばって時間をかけて読む必要はありません。

ビジネスの世界では、カンニングは推奨される行為です。

部下で契約書を読める人間、部下も読めなければ、顧問弁護士なり依頼した弁護士に、
「この意味不明な呪文ないし暗号は一体なんて書いてありますか」
ということをカネを払ってカンニングすればいいだけです。

あと、カンニングする場合、“誰にカンニングさせてもらうか”は大事です。

契約の相手の助言は絶対聞いてはいけません。

嘘は言わないでしょうが、本当のことや、自分たちに不利なことまで言う義務はないので、有害なノイズしか聞こえてきません。

いずれにせよ、変更の際の上書きが有効になっているので、
「初の契約どおりにしろ」
というのは寝言扱いになっている可能性が大きいです。

あとは、契約書に書かれた相手の義務の不備や未完成の点があればそれを持ち出して、期間満了を待たずに、契約解除を主張して、途中解約扱いとして、合法的に契約料金を踏み倒す。

もし不備や未完成がなければ、言いがかりでも因縁でもなんでもつけて、あるいは、あら捜しをして、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技を使って、契約終了の理由を構築して、紛争状態に持ち込んで、妥協や譲歩のノリシロを作って、最後は手打ちする、というところでしょうか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01984_試用期間明けから意図的なサボタージュと考えられる行動を続ける社員がいる状況とは

従業員が、(言や策を弄して)業務上疾病との認定を得ると、会社としては、会社に来ない人間に対して長期間相当な金銭提供をせざるを得ません。

さて、中途で入社した男性社員が、試用期間あけから、意図的なサボタージュと考えられる行動を続けたケースがありました。

男性社員は、いろいろ理由をつけては会社に来ようとせず、かといって、退職するわけでもありません。

病院通いをほのめかすものの診断書を出すわけではなく、また、言外に、
「こんなに不調になったのは会社のせいだ」
と言わんばかりの状況です。

男性社員には、上司としての女性社長と年下の部下しかいないため、パワハラはおろか、仕事は当該社員の専権で行われているのに近い状態で、接点も乏しく、意図を感じざるを得ないサボタージュのような推定が成り立つ状況です。

当該社員は、弱者を装っていますが、その行動だけを拾っていくと、明らかに、常識や理性を共有せず、去就を明らかにすることなく、法の限界を知悉しつつ、合法的に会社に居座り続け、会社の資源を消耗させ続ける態度を取っており、十分タフと評価できます。

会社側から相談を受けた弁護士は、会社側から詳細を聞き取りしたうえで、課題整理と選択肢抽出をします。

無論、選択肢は完全ではありませんし、
「状況を、低コストに、短時間に、打開させ、一挙に相手をひれ伏させる魔術」
のような都合のいい選択肢は、ありません。

要するに、正解はなく、選択肢のどれもが不満足な要素を含む不完全解しか存在しません。

しかも、最善解に辿り着けそうだが、その手前に、リスクやコストや資源消耗が立ちはだかる、厄介な選択課題です。

誰も最善の選択を教えてはくれませんし、それ以前に、知りません(弁護士ですら知りません)。

弁護士ができる支援パッケージは、せいぜい、

・可能な限り多くの選択肢を抽出すること
・当該選択肢に「客観的かつ冷静に」プロコン評価を加えること(プロジェクトーナーの顔色を伺ってバイアスやフィルターやセンチメントを加えず、プロとして、経験と知識に基づき、シビアに提示する)
・どんな選択肢であれ、きちんとした選択をプロジェクトオーナーが行った限り、当該「(不完全な)選択肢」を、正解は無理でも、最善解に近づける努力をする
・状況が変わったり、プロセスが進捗して、さらなる選択肢が浮上してきたり、環境が変化すれば、さらなる選択課題に向き合って支援を深掘りしたり、ゲームチェンジに対応する

ということです。

そもそも、この状況は、
採用は自由だが、一旦採用したら、どんなに問題社員でも、定年まで居座られる」
という法現実をふまえず、安易・安直に採用したトップのミスが、足を引っ張り続けている状況です。

有耶無耶に放置すると、(会社の規模にもよりますが)会社存続に関わるほどの大問題といっても過言ではありません。

昨今は、法の限界を知悉しつつ、“合法的に会社に居座り続け、会社の資源を消耗させ続ける”、この種の悪質な企業への攻撃が増えている、という社会背景があります。

会社としては、強い気構えで対処すべき必要があります。

この打開するのは、トップであるプロジェクトオーナーしかいません。

選択の権限と責任は、トップであるプロジェクトオーナーにあるのですから。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01983_英文契約の対処課題

英文契約を取り交わす場合、いくつかのレベルに分類されている不安や悩みが生じるものと考えられます。

そして、それは以下のような段階をおって、課題が精緻化・特定されます。

1 (外国語で書かれてあるため)言葉がわからず、何が書いてあるかわからない

2 (言葉はわかるが)意味がわからない

3 (言葉や意味は理解できるが、概念や状況を共有できず、経験を前提として理解できる事柄について経験がないため)状況や環境を具体的にイメージしたり理解することができない

4 (言葉や意味はわかるし、状況や環境も理解できるし、状況や環境が我が身に及ぼす影響も解釈し一定の理解はできているが、)理解している事柄が、本当にそのような理解で差し支えないかどうか、確認してほしい

さらに、前段階としては、取引の合理性を確保する前提として、

A)取引を具体化(ミエル化)する【正常性を前提とした具体化】

B)具体化された取引の耐性検証する(時間や状況を変更してもなお目的合理性を維持しうるか、また、仮に耐性を喪失するとすれば、どのような担保を以て安全保障とすることが可能か)【病理性を前提とした具体化】

C)以上により具体化された取引内容を言語化する

D)取引内容を記述する【タームシートレベル】

E)取引内容を契約文書化する(ここから、契約文書化のプロセスとして意識され、遂行される。受け手側の場合、上記フローでレビュープロセスを完成させていく。)

というプロセスが前置されます。

海外取引では、

・取引内容そのものの十分な合理性検証
・取引内容そのものの十分な病理性検証(ストレステスト)
・相手方提示契約書の言語解読のみならず意味理解に至る十全なご理解・解釈
・相手方提示契約書記述内容について、概念や状況を共有でき、経験を前提として理解できる事柄についても十分な経験値において把握しており、契約に記述された抽象的内容が、すべて状況や環境を具体的にイメージしたり理解したりすること
・以上の理解については、二義を容れず具体的かつ明確なレベルで認識できており、コンファームやバックアップレビューも特段必要と感じないこと

という前提において、取引を進めていくことです。

そのためにも、前段階としての(A)~(D)や、1~4の検証を十全に行うことです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01982_海外赴任中の従業員を制御するための文書作成の視点

文書を送って海外に赴任中の従業員を制御する、ということは、そのこと自体、他者制御課題です。

制御対象である相手方の認識や思考に立って、観察して、展開予測をしないと、戦理にかなった行動は難しいといえましょう。

制御対象である相手方の認識や思考に立って観察すれば、送ろうとする文書が、
・(相手方にとって)承服しがたい内容
・(相手方にとって)承服することにメリットがない
・(相手方にとって)承服しなくても、何か具体的なダメージやリスクやデメリットが感得できない内容
であるならば、合理的展開予測として、相手方においては、
・黙殺
・反論
・不当な援用
・強烈な逆撃を招来する契機(これまで沈黙による均衡を保っていたが、琴線に触れたため、相手方から当方への本格的な訴訟提起を誘発することにつながる)として捉え、逆撃を開始する
という行動が想定されます。

特に、文書という、
「発出後は、取消不能で、明確な痕跡を残すコミュニケーション手法」
は、当事者だけでなく社内外関係者や、(将来)訴訟を担当する裁判所の目に触れることも想定され、これら外部の閲覧者の感受性を想定すると、禍根を残すことにつながりかねません。

弁護士が、相手方とのコミュニケーションを設計・構築する場合、
・相手に対して、「相手方が、一定の期限内にレスポンスに関する態度決定をすることが、相手の利害に関わる」という環境設定を整える。したがって、黙殺してもいいが、黙殺すると、一定の不利を招来する可能性がある、という状況構築を行う。
・契約上の義務や法律上の義務に基づかず、いきなり、請求や要求を行い、その痕跡を残したままにすると、将来、裁判所から「この人たちは、契約上の義務や、法律上の義務をきちんと明示せず、相手方に対して、およそ承服しがたい内容を高圧的に要求する、理不尽で筋の通らない方々だ」という悪印象を持たれることを強く想定し、懸念する。したがって、その種の要求は、一定の根拠がはっきりするまで、具体的に明示することを留保する。
という制約条件を意識しながら、細密に、設計し、文書表現として具体化していきます。

とはいえ、プロジェクトオーナーの意向として、
「以上はすべて了解するが、これらをふまえてもなお、その意思表現の手法として、敢行せざるを得ない」
ということであれば、弁護士のコメントとしては、
「今後の展開予測について、法律上はもちろんのこと、事実上の責任を含め、一切負担しない。また、当方の不愉快な想定どおり、状況が悪化したことによって、ゴールや解決の可否・条件が悪化しても、『却って、事前に、懸念やリスクを提示して、抑制的な見解を提出した弁護士』には一切の責任がない」
との前提ないし条件において、
「意見なし(賛否明らかにせず)」
ということで留めることとなります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01981_労務マネジメントにおいて文書による謝罪を要求されたら_その2

労務マネジメントにおいて文書による謝罪を要求されたら、
「様々な選択課題を内包する、ケースないしプロジェクト」
として、“時間的冗長性”と“対処チーム組成”を考えなければなりません。

まず、認識すべきことは、この対処課題には、
「唯一の絶対的正解がない」
という厳然たる状況です。

あるのは、
「どれも正解とは、言い難い、いずれも難ありの、不正解やリスクが含まれた選択肢がいくつか」
で、
「その中から、よりマシな方法を選ぶしかない」
という状況だけです。

それは、
「実験環境における自然科学の問題」
ではなく、
「現実社会における人間関係から派生する社会的課題」
であり、しかも、
「自己制御課題」
ではなく、
「他者制御課題」
ですから、難易度や選択を誤った場合のリスクの計測の困難さは、言うまでもありません。

さらに言えば、状況観察・状況解釈上の選択肢もありますので、論理上、相当複雑多岐な選択課題について、対処する必要が出来します。

結局、多数の不正解の選択肢から、功利分析(メリット・デメリット、プロコン)を踏まえて、よりマシな選択肢を選び出し、選んだ選択肢を正解に近づける努力をするほかありません。

これらをふまえたうえで、
1 資源動員の意思決定
2 (解決までに、人員とコストとエネルギーを相当消耗することになるでしょうから)覚悟と心づもりを組織内で共有する
3 詳細なレポートを作成する
(1)概要
(2)登場人物
(3)時系列に整序された事実
4 1~3を前提として、アセスメントを実施し、プロジェクトマネジメント設計書を作成する(1)状況の認識、解釈、事態の展開や推移の予測
(2)先方の出方や法律実務上の経験則をふまえた、ゲーム環境(相場観)を把握・言語化
(3)現実的ゴール設計(相手の考え方や出方が不明で、ゴールすら描けない場合は、ゴール想定なしで、フォアキャスティング<場当たり的な出たとこ勝負・成り行き任せ>で状況変化をみる、という場合もある)
(4)ゴール(TO BE)と現状(AS IS)との間に立ちはだかる、課題抽出
(5)課題を対処するための、手段上の選択肢の抽出・プロコン(あの手、この手、奥の手、禁じ手、魔の手、寝技、小技、裏技、反則技を含めてあらゆる選択肢を想定)
(6)動員体制や役割分担
(7)前提や協力体制や環境変化に伴う、ゲーム・チェンジを予知し、想定共有しておく
を、すすめていくこととなります。

なお、伝聞によるミスコミュニケーションの弊害をなくすため、なるべく早く、オールハンズミーティングをセットアップし、プロジェクトの進捗や状況把握や課題共有化のための定例会議、さらには、これに向けた資源動員(人員拘束、予算、組織としてのエネルギー消耗の予定)を意思決定することが肝要です。

言わずもがなのことですが、最終決定をくだすのは、プロジェクトオーナー(本件帰趨によって、最終的に被害ないし責任を負担することになる、筆頭利害関係人・当事者)です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01980_労務マネジメントにおいて文書による謝罪を要求されたら_その1

労務マネジメントにおいて、文書による謝罪を要求されたら、その対処は、
「みようみまねでつくってみた謝罪文を、弁護士にみてもらって、ちょっと助言をもらって手直しすればいい」
というものではありません。

あるいは、
・相手方が、「相手の望む対応(文書による謝罪)をしない限り、アクションを起こす」と言ったのはブラフであり、相手の要求に完全に応じなくてもアクションは起きない、との状況認識ないし解釈ないし状況推移想定を選択
・仮に、相手方が何らかのアクション(訴訟、ネットでの悪評拡散)を取ったとしても、被害想定として、対処可能である、との状況推移想定を選択
・相手方がアクションを起こすことを忌避して相手の要求に応じるより、相手方に謝罪文書という裁判外自白(決定的証拠)を与え、相手方のゲーム環境を劇的に改善するリスクないしデメリットの大きさの方が、全体として、デメリットが大きい、と功利上の選択判断
・時間的冗長性を確保するため、時間稼ぎの趣旨で、相手を刺激しない範囲で、相手に「絶望を与えず、希望も与えない」、玉虫色のメッセージを与えることで、やり過ごす
というような雑で楽観的な選択をするのもNGです。

そもそも、(相手が文書による謝罪を要求をしてきたとしても)
「(相手方への)応答を、文書で行うのか、口頭で行うのか」
ということは、選択課題に帰しますし、文書なら文書で、
・体裁
・表現
・マナー・トーン
これらの1つひとつに、詳細実施課題があるのです。

「労務問題において文書による謝罪を求められた」
ということは、
「単一かつ唯一の絶対的正解ないし定石としての対処課題にたどり着け、かつ、迷いなく、安易かつ単純かつスピーディーに行動に移せる、通常の陳腐なルーティン」
ではなく、
「様々な選択課題を内包する、ケースないしプロジェクト」
だと、
「大事(おおごと)化」
すべき課題として、“時間的冗長性”と“対処チーム組成”を考えなければなりません。

要するに、
「謝罪する」「謝罪しない(そのまま放置)」
という二者択一の “安易かつ単純かつスピーディーに行動に移せる、通常の陳腐なルーティン”選択ではない、ということなのです。

会社の規模にもよりますが、 取締役や執行役、あるいは役職のある従業員等は、プロジェクトオーナー(本件帰趨によって、最終的に被害ないし責任を負担することになる、筆頭利害関係人・当事者)に対し、きちんと選択課題を提示し、プロジェクトオーナーが合理的な功利分析の下、正しいプロセスによって選択できるよう、事態のマグニチュードにふさわしい対応環境を構築しなければなりません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01979_英文契約書のドラフトを受け取ったら

英文契約を受け取ったら、英文契約書の言語的意味や内容や意義の解釈のプロセスを経由してから、署名します。

1 文書の言語は完全に理解しているか?
2 文書の言葉が理解できるとして、内容や意義は理解しているか?

これらについて、不安や疑義があり、積極的な確認ができていないようであれば、まずは、この点の確認、すなわち、“状況の認知と解釈”を先行すべきです。

3 翻訳と意味を把握する

ここまでは、
「署名の是非を問う“前”の環境整備」
となります。

4 署名をすることのメリット・デメリットの検証分析をする

論理的選択肢としては、
・署名する
・署名しない
・署名を放置する
・署名はするが、一定の限定ないし留保を付す
という態度オプションが抽出されます。

5 リーガルマターを確認

・文書に署名した場合、○○の援用という解釈を招きかねず、デメリットを生じる
・(デメリットを上回る)メリットがある場合や、署名をしない場合にリスクを招来する場合等が判明するなら、これは、選択課題、すなわち“経営判断課題”です。

6 経営判断課題である場合

経営判断課題を処理するにあたっては、全ての選択肢を抽出し、これにプロコン分析を加え、責任者に判断・選択を仰ぐ、というのが合理的なビジネスフローとなります。

以上を踏まえて、(弁護士に)質問や支援要請の意図や範囲を明確にした上での“選択課題”であるにもかかわらず、
「自分でもよく理解していない、普段使っていない言語により作成された文書への署名を求められていますが、署名してもしていいですか」
と、(まるでルーティン課題の確認が如く)質問される方がいらっしゃいます。

弁護士として判断できないことはさることながら、上長・責任者としても、判断材料がないため判断しようがなく、困惑するほか、ありません。

ご参考までに、
00585_英文契約書のドラフトを受け取った場合の認知・解釈課題の対処手順
を記しておきます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01978_刑事事件における供託金の取り戻しについて

弁済供託制度は、
「支払いたいが、相手が受け取ってくれない」
という課題解決のための制度であり、
「供託を以て、支払い完了」
というフィクションを、供託者の便宜で実施するものです。

我々弁護士が供託手続きを受任するにあたっては、
「供託した場合、取戻しはしない前提とする」
という事前確認をクライアントに行います。

無論、制度としては、取戻し手続という仕組みは存在しますし、もし、相手方が供託払戻を受けていなければ、理論上は可能です。

しかし、たとえば刑事事件において、示談金という性質で供託手続きを行う場合、示談事実が情状の一要素として考慮される等の事情のあるなか、
“判決前に供託を行い、判決後に供託を取戻す”
という行為は、
「裁判で情状を芳しくするためのポーズとして供託したが、判決をもらったら、用は済んだので、取り戻す」
ということと同義と捉えられかねず、大きな問題をはらみます。

特に、我々弁護士は、弁護士職務基本規程という倫理を遵守する立場にあるため、このような行為に加担した場合、我々自身の行為が非難されかねません。

まとめると、供託においては、取戻しという制度自体は存在するし、もし、払戻がなされていなければ理論上は可能ではあるが、
1 以上のような刑事司法手続の公正を脅かす反倫理性、
2 これを予知して受任に際して取戻しを前提としないことをクライアントに確認する、
という点から、弁護士は、“供託金の取戻し”には協力はできない、ということになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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