00509_他人に実印を預けたばかりに、連帯保証人にされてしまうリスク

自らの意思に反し、勝手に連帯保証人とされていたような場合、本人は連帯保証人となる意思がないわけですから、法律理論上、本人に連帯保証の効力は及びません。

しかし、本件のように、自分の実印を他人に預けていたところ、知らない間に連帯保証人となっていたという場合、自らの実印の押された保証契約書が外形上存在する、といった状況が出てきます。

保証契約における保証契約書や売買契約における売買契約書など、契約等の法的な取引(専門用語で「法律行為」といいます)が記載されている文書を
「処分証書」
といいます。

このような処分証書には法律行為の内容そのもの、例えば
「AはBの債務を保証する」
とか
「AはBに対してX不動産を売却する」
といった事実が、ばっちり記載されている、いわば
「取引を示す動かぬ証拠」
となります。

法律行為の有無が争いになった場合、裁判所においては、処分証書があれば当該法律行為があったという認定をするのが原則となっています。

ただし、このような認定がされるのは、処分証書が真正に作成されたことを前提としています。
「処分証書が真正に作成された」
とは、本人の意思どおりに処分証書が作成された、ということです。

この点、民事訴訟法228条4項は、
1 本人の押印がある場合には本人が記載された事実を行う意思のあったこと
及び
2 本人の意思に基づいて押印をしたと推定される
と規定されています。
したがって、自分の印鑑が押印してある処分証書がある場合、処分証書に記載されてある事実が認定されてしまうケースが極めて高いのです。

しかし、実印があれば、必ず
「真正に作成された」
と推定されるわけではありません。

上記2の推定がされる理由は、
「実印は大切に保管・使用されており、みだりに他人に手渡したりしないものだから、作成名義人の印章が押されているならば、特段の事情ない限り、それは作成名義人が自らの意思に基づいて押したものだ」
と考えられるためです。

しかし、実印が盗難に遭ったり、同居の親族に無断で使用する場合もあります。

このような場合にまで、2の推定が働くわけではありません。

ただし、民事訴訟法228条4項があるので、
「特段の事情」
を本人が裁判所に対し明らかにする必要があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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