01928_社内不正調査で、従業員に関する調査を行う場合の留意点

社内調査を行う過程で、特定の従業員に関する調査が課題として浮上した場合、いきなり、探偵ごっこのような形で、多大な資源を投入して、身辺や周辺を洗い始める場合があります。

関係情報を収集し、「ひょっとしたらこういうことかも」「これが真相じゃないか」と、経験則を用いた推認を披瀝する「迷」探偵が多数登場し、あーでもない、こーでもない、と本人不在のところで議論がはじまる。

しかし、このような「探偵ごっこ」的調査は、たいてい、無駄で無益に終わります。

「調査」
という ミッションにおいて、もっとも端的でスマートでロジカルでソフィスティケートされた遂行方法は、
「当人から直接聴取する」
というものです。

調査課題が明確になった場合、普通に考えられる方法は、関係当人から直接聴取することです。

そして、そのために、必要なオーソライゼーションを取得することが、
「調査」
の早道です。

当人が聴取を拒否し、必要なオーソライゼーションを取得できない場合に、はじめて、関係情報を収集し、経験則を用いた推認の出番となります。

たとえば、税務調査では、(犯則調査のような特殊な場合を除き)通常、(内偵や密行性の高いバックグラウンド調査をするのではなく)普通に、アポをとって、対象となる会社あるいは個人を訪問し、概要を聴取し、資料を出してもらい、資料を確認し、わからなければ質問し、調査を遂げます。

犯則調査の場合であっても、周辺を調べ上げることはしますが、やはり最後は、ヒヤリングを実施し、特定の主観要素立証(仮装隠蔽の意図)の認識を確認して、調査を完遂します。

いずれの調査も、
「当人に対する聴取を遂行する」
というプロセスが予定されており、これが調査の中核となるように設計されています。

訴訟でも同様です。

痕跡や文書だけでは最終判断がなされることはなく、ヒヤリング、すなわち証人尋問を、判断・評価の最終的かつ最重要なイベントとして予定され、想定されて、手続き設計がなされています。

税務調査型(ヒヤリング先行)であろうが、犯則調査型・訴訟型(ヒヤリングを最終的・補完的プロセスとして位置づける)であろうが、
「『対象者へのヒヤリング』をしない、できない、オーソライズされていない、まったく予定されていない」
ということは、あり得ないのです。

本人を呼び出して、疑問と思った内容を糺す。

これが調査の基本です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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