00123_企業法務ケーススタディ(No.0077):マンションの建築確認申請が留保された!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
星屋建設株式会社 社長 星屋 英俊(ほしや ひでとし、37歳)

相談内容: 
今、うちの会社では、不動産不況をお笑いでフッとばそうと、
「爆笑マンション」
っていうのを計画しているんです。
それで、一番の特徴は、窓やベランダの配置や壁の色なんかで工夫して、マンションの壁面がボクの顔に見えるように設計して、鼻の穴の部分に当たる3階のガラスに白色の上下稼働のタペストリーカーテンを付けて、上げ下げすると鼻からうどんが出てくるように見えて笑いが取れる仕掛けになっているんです。
一応、建築基準法とかその他の法令に則って建築確認申請していたんですけど、最近、周辺住民が、下品だとか、環境破壊だとか失礼なことを言い出して、マンションの建設に大反対をし始めたんです。
さらに悪いことには、どうやら、マンション建設反対住民の中心メンバーがウチの会社と周辺住民が揉めていることを役所にタレこんだらしくて、役所から、
「周辺住民とよく話合いを行って円満に紛争を解決するように」
と指導されてしまったんです。
建築士の先生がいうには、そもそも、住民説明会ってのは条例で決められているだけで、住民説明会で反対されたからって建築確認をもらえないなんてことはないっていうじゃないですか。
それなのに、役所は、
「周辺住民の皆様と話し合って円満な解決をせよ、という行政指導をした以上、話し合いができるまでは貴方の建築確認は留保しますので、建築確認は下ろせません」
の一点張りなんです。
これって、絶対、役所の嫌がらせですよね。
先生、行政訴訟とか一発食らわして、役所にぎゃふんといわせてやってくださいよ。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:建築確認とは
建築確認とは、建築基準法に基づき建築確認を行う建築主事等が、一定規模以上の建築物の建築を希望する者の申請にかかる建築計画が建築基準法や建築基準関係の規定に適合しているかどうかを工事開始前に審査する行政行為をいいます。
そして、この行政行為としての建築確認は、
「許可」

「認可」
といった一定の裁量を伴う行為ではなく、その文言通り、
「申請」
に添付された設計図書などが建築基準法やその他の建築基準関係規定に適合するか否かを機械的に
「確認」
する作業に過ぎません。
したがって、適正に行われた建築申請に対し、建築主事等が何らかの裁量をはたらかせることは原則としてできないと考えられています。
ところで、星屋建設が受けた行政指導とは、行政機関が、一定の行政目的を実現するために特定の者に対し一定の作為や不作為を求める勧告や助言などをいいます。
このような行政指導に従うか否かはあくまで任意とされていますが、行政指導に従わないことを理由として一定の不利益処分(行政処分)が課されることもあるので注意が必要です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:建築確認を留保する行政指導における問題
設例と同様に、建築主と周辺住民との間の紛争に関する行政指導が行われていることのみを理由として建築確認申請に対する処分を留保したことにつき、当該
「建築確認を留保したこと」
の是非をめぐって国家賠償請求訴訟が提起されたことがあります。
これに対し、最高裁判所(昭和60年7月16日判決)は、原則として
「建築主事が当該確認申請について行う確認処分自体は基本的に裁量の余地のない確認的行為の性格を有するものと解するのが相当である。(中略)建築主事としては速やかに確認処分を行う義務があるものといわなければならない」
としつつ、
「建築主が確認処分の留保につき任意に同意をしているものと認められる場合」
などには、当該留保も例外的に適法としました。
しかしながら、さらなる例外則として、
「建築主が右のような行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合には、(中略)行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは違法である」
としました。

モデル助言: 
星屋さんの場合、法令上の建築基準を全て満たしているのに
「周辺住民の皆様と話し合って円満な解決がされるまで建築確認は留保します」
といわれているわけですが、最高裁の理屈によれば、原則当該
「留保」
は違法とされますが、建築主が当該行政指導に任意に応じている場合には、確認申請留保も問題ないとされてしまいます。
逆に、
「話し合いなんかせえへんで! さっさと確認せんかい!」
というのであれば、星屋さんとして
「行政指導に不協力・不服従の意思を表明」
しておかなければなりませんので、役所宛に、内容証明郵便による通知書で
「周辺住民の皆様と話し合えという行政指導には従うつもりはありませんので、早急に確認申請に対して所要の判断を下してください」
とはっきり意思表示をする必要がありますね。
とはいえ、地域住民と軋轢を抱えたままでは、行政上問題なくても、別途司法上の問題として建築が差止訴訟が提起されるリスクもありますので、まずは円満な話し合いを進めた方がいいと思いますよ。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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