00206_企業法務ケーススタディ(No.0161):デキない中途採用者をクビにしたい

相談者プロフィール: リストランテ・ヒデ株式会社 代表取締役 山中 秀征(やまなか ひであき、45歳)

相談内容: 
先生、これまで弊社は、イタリアンレストランを全国にチェーン展開してきたんですが、近頃はレストランだけだと厳しくて、ケータリングサービスにも進出予定なんです。
ですけど、ウチはレストランしかやってこなかったんで、ケータリングサービスのノウハウを知っている社員なんていないんですよ。
そこで、ケータリングサービスの企画・運営の責任者になってくれる人を社外からスカウトしようと思って求人していたんです。
そしたら、前の会社でもケータリングサービスの立ち上げに携わったっていうちょうどウチが求めていた人材にぴったりの人がいて、その人を事業の企画・運営責任者として採用する予定で今調整しているところなんです。
ただ、経営者仲間の話なんか聞くと、こういう中途採用の人って意外と使えない人もいるみたいなんですよね。
こっちは即戦力になるのを期待して高い給料を払っているのに、期待はずれだったらすぐにクビにしたい。
だけど、いったん雇ったら解雇するのってなかなか難しいっていうじゃないですか。
これって、中途採用でも同じなんすかね?
中途の連中って、スれてて、使いにくいし、新卒の子みたいにつぶし効かないし、NGだったら大損害なんですよ。
何かうまい方法ないすかね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:一定の能力を前提とした即戦力型中途採用者の解雇
雇用関係は婚姻関係と同じで、
「結婚は自由、離婚は不自由」
というのと同様、
「採用は自由、解雇は不自由」
です。
すなわち、人ひとりクビを切ろうとすると、
「客観的合理的理由」

「社会通念上の相当性」
というおよそクリアできない法律上の要件が課されてしまい、この高いハードルを乗り越えるのはほぼ不可能です。
しかし、これは新卒採用などの場合にあてはまることであって、特定の能力を前提として即戦力になることが期待されている中途採用者の場合は、解雇に対する制約は比較的緩やかになる、ということは意外と知られていません。
実際に、人事本部長という地位を特定した雇用契約を締結して、特定の能力発揮を期待されて中途採用された人物が、人事本部長という地位に要求された業務の履行または能率が極めて低く、就業規則中の
「雇用を終結しなければならないやむを得ない業務上の事情がある場合」
として、会社による解雇が認められた裁判例があります(フォード自動車事件)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:期待される能力の特定
判例・裁判例の考え方ないし傾向を踏まえる限り、中途採用者の解雇は比較的認められやすい、とされています 、とされています。
しかし、これがあてはまるのは、採用者が被採用者に期待する能力が契約上明確になっている場合です。
逆に、採用者の側で販売成績の向上などの目的が記載された書面等がなく、被採用者が努力することを約束した程度の抽象的なやりとりであれば、通常の解雇と同様、厳しい制約を受けることになってしまいます。
さらに、採用者が期待する能力についての条項を契約書に盛り込んだとしても、役職や販売成績というような具体的なものでなければ、特定として不十分とされてしまう危険があります。
以上のとおり、ツメが甘いと、
「中途採用者に対する解雇は緩い」
という折角の判例法理が使えなくなってしまうことに注意が必要なのです。

モデル助言: 
確かに、山中さんのおっしゃるように、特定の能力がある前提で即戦力になることが期待されて中途採用されるのだから、使い物にならなかったときに新卒採用と同じように簡単に解雇できないんでは、会社にとってあまりに酷ですよね。
そこで、裁判所も世情に配慮して、
「中途採用でダメなオッサンは、新卒みたいに丁寧に育てる必要なく、すぐにバッサリやってもOK」
と意気な計らいをしてくれているんですよ。
けれども、こういうオイシイ裁判例の考え方を援用してうまいことやるようにするためには、会社側も一定の決め事をしておかないといけません。
すなわち、会社側は
「どんなことを期待して、この人を採用するのか」
を、当初の契約の段階ではっきりさせとかなければならないんです。
そこを口約束や努力目標的なあやふやな言い方ですましていると、裁判所は一切救ってくれません。
能力の特定の程度ですが、山中社長のおっしゃる程度のものでは、全然特定されたことにはなりませんね。
抽象的な文言は後の紛争の元です。
何年以内にいくらの利益を挙げることというように、できる限り具体化・数値化して、契約書に盛り込まないといけませんね。
また、あくまでも解雇に対する制約が緩くなるだけですから、どんな場合も解雇回避の措置等が全く必要ないというわけではありません。
契約書に
「目標が達成できなければ解雇できる」
と書いておいたとしても、いきなりクビをちょん切るのはさすがに難しいですね。
まずは、少しは改善をさせてみるとか、といった配慮は当然必要になります。
それと、解雇ができる状況にあっても、最後は相手がやめる方向に持っていくことが、紛争抑止という点でベストです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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