00209_企業法務ケーススタディ(No.0164):使えない奴は定年過ぎたら辞めさせたい

相談者プロフィール:
株式会社ライト・テイスト 総務部人事課長 杉村 犬蔵(すぎむら けんぞう、33歳)

相談内容: 
先生、今日は、弊社の定年制度について、ご相談に参りました。
弊社は、60歳定年制で、希望者は定年後も引き続き雇用する継続雇用制度をとっています。
ですが、はっきりいって、60過ぎたじいさんなんてさっさと引退してほしいんですよね。
大体は、頭固いのに、自分はまだまだ若いつもりで、
「生涯現役」
っていうタイプの人ばかりで。
こちらとしては、上にドスンと居座られると、新卒採用も抑えないといけなくなるし、社内の新陳代謝が図れなくていいことなんてありません。
そこで、弊社では、御用組合の労組と合意して、
「人事考課が平均B以上の者であって、かつ会社が必要と認める者は再雇用できる」
という選別基準を設けています。
人事考課なんて、どうにでも操作できますし、こうすれば、本人が継続雇用を希望していても、会社が必要ないと思えば再雇用しなくてすみますからね。
この辺、僕もたくさん本を読んで勉強しましたから。
それでですね、来年度から、改正高年齢者雇用安定法が施行されるらしいじゃないですか。
再雇用の際の選別基準制度が廃止されるとか聞きましたけど、ホントになくなるんですか?
その場合、どうすればいいですかね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:定年後の継続雇用制度
公的年金の支給開始年齢が65歳になっていくのに伴い、空白期間が生じないよう継続雇用を実現するために、2006年に高年齢者雇用安定法が改正・施行され、65歳定年制等を段階的に進めることが義務付けられました。
この結果、65歳までの雇用確保措置として、
1 定年引き上げ
2 継続雇用制度の導入
3 定年制度廃止
のいずれかの措置を講じなければならなくなり、設例企業のように2を選択する企業が多いのが現状です。
継続雇用制度を導入する場合、労使協定により、対象者について基準を定めること、すなわち
「希望者全員を対象とはせず、選り好みする制度」
としてしまうことも可能です(法9条2項)。
この基準は、労使の協議により、各企業の実情に応じて定められますが、具体性・客観性が必要とされ、他の労働関連法規や公序良俗に反するものは認められません。
この
「選り好み高年齢者継続雇用システム」
に関連して、12年11月29日に最高裁判決が出されました。
本件では、定年後1年間の嘱託雇用契約により雇用された労働者が、同契約終了後の継続雇用を求めたものの、基準を満たしていないとして拒否されました。
これについて最高裁は、
「基準を満たすものであったから、被上告人(労働者)において嘱託雇用契約終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由がある」
「基準を満たしていないものとして本件規程に基づく再雇用をすることなく・・・雇用が終了したものとすることは・・・客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」
として、再雇用されたのと同様の雇用契約上の地位を認めました。
本件では、点数制の基準となってはいたものの、実際は会社に都合の良いように算定されていたため、企業側は敗訴しました。
このように、継続雇用の場面でも、具体的・客観的な基準と、
「客観的合理的な理由」
及び
「社会通念上の相当性」
という解雇の場面で適用されるのと同様の法理により、企業が意図的に特定の労働者を排除することは認められません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:改正高年齢者雇用安定法
ところで、同法は再改正され、13年4月に施行されます。
重要な改正点は、再雇用の選別基準を廃止し、65歳までは希望者全員を再雇用の対象とする制度になることです。
ただし、13年度から12年間は経過措置があり、老齢厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢に達した者については、引き続き再雇用の基準を利用できます。
そのため、経過措置に伴い「選り好み」基準が使用される場面では、先程の最高裁判例が依然として意味を持ちます。

モデル助言: 
御社の基準では、平均B以上の人でも会社が
「いらない」
と言って再雇用しなかった場合、会社が意図的に選り好みしてその人を排除したと評価されかねません。
「会社が必要と認める者」
なんていう会社の気分次第のような基準では、まともな基準として認めてもらえませんよ。
人事考課だって、点数制など客観的なルールに公正にあてはめて行わないと、後でトラブルになっても裁判所に認めてもらえません。
しかも、判例は、基準を満たしている場合、該当期間の賃金分の賠償だけでなく、その労働者を再雇用したことになるとまで判断しています。
これは、年金支給年齢引き上げに伴う高年齢者の収入安定化という高年齢者雇用安定法の趣旨によるもので、企業にとってはかなり痛手ですね。
それと、御社では、すでに継続雇用制度の対象者を選別する基準が定められていますが、経過措置が適用されるのは、改正高年齢者雇用安定法が施行されるまで(13年3月31日)に、労使協定により継続雇用制度の対象者を選別する基準を定めていた事業主に限られます。
また、あくまでも、経過措置ですから、企業側は今から対策を進めていかなければなりませんね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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