00261_「法人格」による個人責任遮断効果

一般社会では、人というと、
ホモ・サピエンスとして分類される有機的生命体を指しますが、
「法人」
というのは、グループ(社団法人)や財産プール(財団法人)に過ぎず、現実には影も形もないものです。

すなわち、法律の世界では、生物としての実体も影も形もないものであっても、
「財産や負債を格納できる入れ物」
が存在し、そこに権利を移転したり義務を負担させられるのであれば、
「人」並に
扱うことに何ら問題はないとされます。

このような観点から、
「人の集まりであれ、財産プールであれ、ゼニさえ持たせられるのであれば『人』並みに扱い、取引社会に参加させてもいい」
というフィクションが構築され、法律上の人格をもつべきバーチャル人格というか観念上の人間として、
「法人」
という概念が出来上がりました。

法人でもっとも身近なのは株式会社です。

株式会社は営利追求目的で集まった株主のグループに過ぎませんが、法律上
「営利社団法人」
として、株主とは別個の
「人」
として扱われます。

一般の中小零細企業では、株式会社といっても、現実には株主はオトーチャンひとりだけで、個人事業と何ら変わりありません。

しかし、それでもやはり法律上オーナーの株主トーチャンとは
別「人」扱
となります。

たまに、事業資金を貸したり、掛売りする際、契約書に、契約相手として株式会社だけしか記載せず、オーナー社長を連帯保証人として併記しない、というケースを見受けます。

この契約相手の株式会社が、どんなに零細で、形だけの会社で、実体が個人商店と何ら変わらないものであっても、契約の責任を負担するのは、
「法律上の人格をもつべきバーチャル人格というか観念上の人間 」
としての株式会社だけであり、個人は、一切責任を負いません。

どんなに零細で、形だけの会社で、実体が個人商店と何ら変わらないものであっても、いやしくも
「株式会社」
という法人格を有する以上、
「ホモ・サピエンスないし有機的生命体としてのオーナー社長」
と、
「法律上の仮想人格たる株式会社」
とは、赤の他人です。

赤の他人が負担した借金を、何の根拠もなく、オーナー社長が負担する理由はありません。

したがって、
「株式会社」
という、
「実体も何にもないし、義理人情も道義も責任感も感じない、無機質な幽霊」
にカネを貸したり、掛売りしたりする際は、必ず、生身の人間であるオーナー社長を個人として、連帯保証人として
「法律上の首輪ないし足枷 」
をはめておくべきです。

金融資本主義社会という生態系の頂点に君臨する、経済社会におけるもっとも高い知能を備えた銀行は、この
「実体も何にもないし、義理人情も道義も責任感も感じない、無機質な幽霊」
にカネを貸す際は、必ず連帯保証人を入れさせます(連帯保証人を入れずにカネを貸して焦げ付いたら、担当者は背任を疑われます)。

こういう銀行のプレースタイルは、事業会社であっても、大いに真似るべきだと思います。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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