00267_並行輸入品の修理を持ち込まれた正規ディーラーとして、修理拒否して「安く並行輸入品を買った小賢しい消費者」に意地悪する場合のエクスキューズテクニック

公正取引委員会としては、並行輸入を保護する観点から、
「並行輸入品を排除しようとする正規代理店」
サイドを厳しく取締まろうとしております。

そして、そのひとつの表れとして、公正取引委員会は
「正規代理店が並行輸入品をメンテナンス拒否など差別的に取り扱う場合、独占禁止法上違法となり得る」
などとしています。

すなわち、公正取引委員会が作成する流通取引慣行ガイドラインには、
「総代理店以外の者では並行輸入品の修理が著しく困難である場合において、正規品でないことのみを理由として修理拒否することは、正規品の価格維持のために行われている不公正な取引であり、一般指定15条に定める競争者に対する取引妨害として、違法」
であるという趣旨のことが書かれています(第3部第3―2(6))。

正規ディーラーにとっては噴飯ものの話ですが、並行輸入品ユーザーの修理要求は、公正取引委員会の示す独禁法運用に則ったものであり、十分な法的根拠があり、原則として、正規ディーラーは、修理拒否して
「安く並行輸入品を買った小賢しい消費者」
に意地悪することはできない、ということになります。

とはいえ、原則には常に例外があるように、前記の公正取引委員会のルールにも例外があります。

公正取引委員会としても
「合理的理由があれば、正規代理店が並行輸入品の修理を拒否し得る」
としています。

具体的には、
「代理店の社内資源の制約上、自社販売品の修理対応だけで手いっぱいで、並行輸入品の修理の対応は現実問題としては困難である」
あるいは
「メーカーは、修理部品や修理マニュアルを海外ユーザー向けにも提供しており、並行輸入業者や個人ユーザーがこれらを入手して修理することは、面倒くさいが、困難というほどではない」
から
「修理を拒否するのは合理的理由に基づくもので独禁法違反ではない」
というロジックが成り立つような状況の整備が絶対不可能、というわけではありません。

このような合理的理由に基づき、高潔かつエレガントに、心の底から、悔しく残念がって修理拒否をし、意図したわけではないにせよ、
「安く並行輸入品を買った小賢しい消費者」
には、結果的に、意地悪い対応になっちゃう状況が出来しました、ということで、何とかエクスキューズの外形が整えられそうです。

とはいえ、公取委とモメるのは必至であり、思い切って価格を下げるとか、正規品ユーザーならではの付属サービス特典を強化する(オーナークラブのサービス内容の充実)とか、商売面でガチンコ勝負し、価格競争・品質競争に勝利し、並行輸入業者をビジネス面で正々堂々と駆逐することを考えるべきかと思います。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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