00311_パテントプールの具体的内容と独禁法抵触のリスク

パテントプールとは、特許権等の知的財産権を有する企業が
「仲良しグループ」
を作って、各自が保有している知的財産権を企業が合同で出資する特定の会社(ジョイントベンチャー会社とかコンソーシアムとかいわれます)に管理させ、メンバーの企業だけが知的財産権を使えるような仕組みのことをいいます。

例えば、音楽や映像を録音・再生するために必要な技術が標準化された場合、これに対応した製品を作ろうとすると、どうしても当該標準化に対応した技術を使う必要が出てきます。

しかし、標準化された技術には、標準化の前後に多数の知的財産権が取得されており、各権利者に支払うライセンス料が積み上がると合計のライセンス料は高額になりますし、また各特許権者と個別にライセンス契約交渉するのも面倒です。

このようなこともあって、パテントプールというシステムを作ることによって、単一のライセンス窓口から機器製造に必要となるライセンスを一括して安価で受けることが可能となる、というわけです。

パテントプールは前記のような建前で実施されますが、これは使い方によっては機器製造市場に参入しようとする新参企業をのけ者にする格好の道具として使えます。

独占禁止法では、新規参入者を市場から排除する行為を排除型私的独占行為として違法としております。

こういう新参者に対する陰湿なイジメ行為も、あからさまな排除や妨害ではなく、
「知的財産権は独占権だから、誰にライセンスしようがこっちの勝手でしょ」
という理屈の下、パテントプールのライセンスを拒否する(あるいは新参者にだけ不合理なライセンス料を吹っかける)という形を取れば、スマートは私的独占行為が行えます。

このように、パテントプールは、公正且つ自由な競争を阻害することに使われるケースもあり、東京高等裁判所2003(平成15)年6月4日判決も、
「パテントプール自体が直ちに独占禁止法に違反するというものではないが、当該パテントプールの運用の方針、現実の運用が、特許権等の技術保護制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められる場合には、特許権等による権利の行使と認められる行為に該当せず、独占禁止法違反の問題が生じることがある」
と述べています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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