00313_「特許を受ける権利」という制度のないアメリカでの、企業出願の注意点

発明者ファースト国アメリカでは、特許を受ける権利という考え方がなく、発明をした者しか特許出願できません。

この関係で、アメリカで特許を出願する者は、出願に際し、
「当該発明は自分こそが最初の考案者である」
という内容の誓約書を同時に提出しなければならないとされ、発明者と出願人の厳格な一致が要求されます。 

アメリカにおいて、これに反し発明者ではない者を発明者として出願した場合、当該特許の有効性が疑問視されるリスクが生じることになります。

経営者や管理者等、明らかに発明者ではない者が、アメリカで、発明者として特許出願し、特許権が付与された場合であっても、後日の裁判で特許が無効とされる危険が生じます。

アメリカで社内事情のことはわからないだろうからバレる危険性がない、と考えるのは危険です。

アメリカの訴訟でのディスカバリー(証拠開示)手続きにおいて、事実認定のための証言録取(デポジション)を実施し、磐梯さんが本当にこの発明を行ったかどうかを攻めたてることはアメリカの特許弁護士の十八番(おはこ)です。

特に、技術に関する何のバッググラウンドもない経営者や管理職が発明に現実的かつ具体的に携わったか否かという点も、相手方の弁護士の巧みな尋問にあえば、すぐにウソがバレてしまいますよ。

見栄のため発明者を気取ったばかりに、せっかくの特許権が使えなくなってはバカバカしい限りですので、発明者ファースト国アメリカで企業が特許出願する場合、現地の出願代理人とよく相談して、発明者の特定には細心の注意を払って出願すべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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