00363_「(不正競争防止法上の)営業秘密保護制度」が、特許より強力で使い勝手がいい場合

製造方法のような企業秘密は、
「特許として公開(特許にする以上、一定期間の独占の代償として秘密を全世界に向けて暴露することが要求されます)にしない限り、法律上の保護を一切受けられないのか」
というと、そんなことはありません。

ここで登場するのが企業法務の伝家の宝刀、不正競争防止法に規定される
「営業秘密」
です。

あまり知られていませんが、
「営業秘密」
は広い意味での
「知的財産権」
に含まれるもので、産業財産権に負けない重要でパワフルで便利なものです。

「営業秘密」
に該当する情報は、法律上の手厚い保護が与えられており、営業秘密の不正な取得・使用・開示行為に対しては、民事上、差し止め請求や損害賠償請求が認められている上、悪質なものには刑事罰まで課されます。

「営業秘密」
として保護される対象は、特許権や実用新案権等と異なり大変幅広く、およそ事業に有用な情報であればOKです。

1 秘密として管理されている
2 有用な情報であり
3 公然と知られてはいない
という三要件を充足するものであれば、
「営業秘密」
としての手厚い保護を享受できます。

つまり、厳重なパスワードをかけて保管し従業員に厳格な守秘義務を課すなど、営業に有用な秘密情報を厳重に管理しておけば、ライバル企業も迂闊に手出しできなくなるというわけです。

よくいわれるのが、コカコーラの原液のレシピや製造方法の法的管理方法です。

これを特許でプロテクトしようとすると、たかだか20年しか競争優位が保てませんが、営業秘密には保護期間という概念がありませんから、前記の三要件を充足する限り、未来永劫、独占的な利用の利益を享受できる、というわけです。

ですので、経営戦略・事業戦略を構築する際、
「あえて特許を取得しない」
「どうでもいい外延部分は特許を取得し、外敵を近づけないようにし、中核部分は営業秘密としてブラックボックス化しておく」
などの方策選択により、長期間の独占的利用を手中にできる、ということも検討すべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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