00441_トラック運転手やバス運転手に仕事をさせすぎ、事故を起こしたことで、社長が処罰されるリスク

道路交通法は、
「何人も、(中略)、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」
と規定し、これに違反した者に対しては、
「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」
を科すなどして、過労運転等を禁止しています(道路交通法第66条、第117条の2の2第5号)。

「自動車」
というものは、時には数トンもの荷物を積んで、時速100キロ超で移動する鉄の塊なわけですから、ちょっとした体調不良や疲れがその運転に及ぼす影響は大きく、その影響が招来する事故の規模も、時としてトンデモナイ大事件となります。

そこで、法は、罰則を設けてまで、このような
「正常な運転ができないおそれがある状態」
での運転を禁止し、トンデモナイ大事件を未然に防ごうとしているのです。

ところで、便利とはいえ、存在自体に危険をはらむ自動車ですから、その運転者だけに
「運転するときは体調管理をしっかりせよ」
といった義務を課しても、自動車の運転が会社の業務として行われているような場合には業務命令を拒否することもできませんので、これでは実効性を欠いてしまいます。

そこで、道路交通法は、自動車を実際に運転する
「運転者」
だけではなく、運送会社など、業務上、自動車を使用する(させる)者などに対しても、
「その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、『過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転すること』を命じたり、これらの行為をすることを容認したりしてはならない(道路交通法75条4号)」
ことを義務付け、いわゆる
「過労運転の下命」
を禁止しているのです(これに違反した場合、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます〈道路交通法117条の2の2第7号〉)。

実際に、昨年の6月、大阪府茨木市の名神高速で2人が死亡するなどした玉突き事故で、
「大型トラックの運転者が、過労で正常に運転できない恐れがあると知っていたにもかかわらず、愛知県豊橋市から兵庫県たつの市への建材の運搬などを命じた」
として、勤務先である運送業者の所長らが、道路交通法上の
「過労運転の下命」
を理由に逮捕されるといった事件が発生しています。

この事件では、大型トラックの運転者は、週のうち6日間は1日約700キロの運転をし、車内での寝泊まりを余儀なくされていたとのことで、業務管理上の問題も指摘されています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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