00459_ABL(アセットバックトローン)を実現する際のツールとしての債権譲渡担保

まず、
「譲渡担保」とは、
担保のために、「目的物」自体を債権者に譲渡するという制度
で、動産などではよく知られています。

次に、
「債権譲渡担保」とは、
債務者がその取引先(第三債務者といいます)に対して持っている売掛債権などを
「目的物」
として譲渡すること
で、
担保権を設定すること
をいいます。

このような、企業の事業活動の一部である売掛金や在庫などに担保を設定して金融することを、最近ではアセットバックトローン(Asset backed loan、ABLと略されます)といい、不動産資産などをもたない企業や、創業したばかりの企業などに重宝されています。

ところで、取引先に対する売掛債権を譲渡して担保とする場合、複数の取引先に対する売掛債権をまとめて担保としたり、将来、発生する売掛債権を担保としたりすることが多いのですが、債権を譲渡する際、第三債務者に対し債権譲渡したことを対抗するためには(新しい債権者が誰であるかを知らしめるためには)、民法の原則では
「債権を譲渡する者」
が取引先である第三債務者に対し
「債権を譲渡した」
旨の通知を行わなければなりません(債権譲渡の「対抗要件」。民法467条)。

それゆえ、取引先に
「売掛債権を譲渡したこと」
がバレてしまうと、
「売掛債権を借金のカタに出したりしてやがるんだ。この会社、よほどカネに困っているんだな」
と思われ、信用不安が広がってしまう恐れがあります。

不動産などの担保の目的物となる資産はないし、かといって、信用不安を引き起こす可能性のある
「売掛債権の譲渡」
もなかなか難しい、といった企業のために、動産・債権譲渡特例法が制定されました。

この法律によれば、法人(個人事業主は不可)が取引先などに対して有する金銭債権などについて、
1 実際の債務者が確定していなくても、また、将来、発生する債権であっても、担保として提供可能であり、
2 民法で要求される「債権譲渡の手続」を踏まなくても、法務局に「登記」を行うことで、債権譲渡の「対抗要件」を具備することができる、
ということを可能にしました。

すなわち、
「将来発生する売掛債権」
といったあいまいな債権であっても、これを質草にカネを引っ張ることができ、かつ、民法の債権譲渡手続きをすっ飛ばすことができるので、取引先に黙ったまま、金融担保として利用できることが可能となったのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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