00551_取締役会で危険な決議がされそうになった場合に、不安を感じた取締役が取るべき自己防衛策

会社の重要な意思決定をする際は取締役会決議で決めるものとされていますが、反対であればその旨きっちりと議事録に残しておくことが重要です。

過大な投資をしたり、アホなプロジェクトを立ち上げたり、骨董を買ったり、愛人の会社に大口発注したり、なんて話が出たときに、
「そんなのイケナイよ」
と反対したものの、
「いいじゃん」
「大丈夫だよ」
とかの大勢に押され、
「だめなんだけどなー」
といいつつ、議事録上
「満場一致で決議」
で記載されるなんてことはよくあります。

そういう場合、どんなに議事においてブーブーいっても、議事録に反対の旨を書くところまできっちりとした形で明確な記録化をしておかないと、賛成した人間と連帯して賠償責任を負うことになります。

危険な事業計画について、取締役会に議題として上程された状況において
「こんな投資の回収は到底見込めない」
と判断した場合、取締役としては直ちに、明確な反対の意思表示をしておく必要があります。

取締役としては、取締役会において決議に反対する自由を常に有しており、無謀な経営計画を討議した際、反対の意思表示を議事録にとどめておけば、当該決議に基づき生じた損害につき責任を免れます。

そして取締役会を欠席した場合や当該決議の際に異議をとどめなかった場合は、賛成した取締役と連帯して会社や第三者(債権者や株主)に損害賠償責任を負うことになります。

会社に損害を及ぼしそうな危険な事業計画が上程され、討議された場合、
「私はこれには反対ですので、その旨議事録にとどめてください」
と述べておけばよいのです。

「そんな雰囲気じゃなかった」
「代表取締役や社主に楯突くなど滅相もない」
などと遠慮するのが日本の典型的会社での
「取締役の美徳」
です。 

しかし、そもそも、取締役は、会社という法人及びこれをとりまく株主や債権者等の利害関係人(ステークホルダーズなどといいます)に対して責任を負うべき存在であり、社長ないし代表取締役という特定個人の使用人ではありません。

もちろん、上記美徳の存在を主張立証したところで、法的には一切考慮の対象外ですし、問答無用で手続を打ち切られ損害賠償債務を負わされます。

危険なプロジェクトが、取締役会に上程されることなく、社長等の一部執行陣で無断で遂行される場合は、そもそも、予見ができませんし、予見可能性がなければ、回避も期待できないので、知らなかった取締役としては、責任を免れる可能性はあります。

なぜ、
「責任を免れる可能性はあります」
という頼りない表現になるかと言えば、予見可能性があれば、予見義務違反としての過失(善管注意義務違反)を問われる余地があるからです。

すなわち、経営や管理のプロとして、しっかりと注意していれば、
「危険なプロジェクトが、取締役会に上程されることなく、社長等の一部執行陣で無断で遂行される」
という動きも察知できたのであれば、責任を追及される余地が出てきます。

株主代表訴訟においては、訴額にかかわらず、印紙代がかからないこともあり、とりあえず、危険なプロジェクトが行われたら、当時関わった役員全員がターゲットにされる事が多く、事実上結果責任を追及される形で始まり、その上で、
「オレは知らなかった」
「私は知ろうとしても、その可能性すらなかった」
「知らなかったし、プロとしても注意しても、知ることもできなかったし、止めさせたりすることもできなかったので、私は関係ない」
と弁解に成功すれば、はじめて、解放される、という形で話が進んでいきます。

いずれにせよ、取締役になったら、相当な注意を働かせて職責を全うすることが求められますので、十分な注意と警戒が必要となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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