00649_合弁事業(ジョイントベンチャー、あるいはジョイベン)を行う合弁会社において、マイノリティシェア(株式割合半数未満)しか掌握できない場合の自衛措置の必要性・重要性

一般論としては
「合弁契約が曖昧なものではダメ」
ということが言えますが、マジョリティーシェア(50%超の株式割合)を有するのであれば、当該合弁パートナーサイドは、合弁契約が雑な内容であることを気に病む必要はありません。

すなわち、合弁契約が粗雑、曖昧、無内容な場合であっても、それで合弁会社(株式会社)の運営が不可能になるわけではなく、単に会社法が適用されるだけだからです。

そして、会社法においては、株主同士の意見対立は単純な多数決原理で決せられることになります。

要するに、意見対立が起こった場合、いかに少数派が筋の通った主張をしようが、多数決を握る側の意見がすべて通ることになります。

例えば、
「自己の持ち分を無断で第三者に売り飛ばし、合弁契約の遵守を売却先に求めず、トンズラする」
という合弁パートナーの行動は決してお行儀がいいとは言えませんが
「契約上『やっていけない』と明記されていないことは、すべてこちらの自由。多数決原理に従って利己的に行動して何が悪い!」
という主張は、道義上・倫理上はともかく、法律上・戦略上は極めて正しく、結果として、マイノリティシェアしか持たない合弁当事者が何を言っても、相手に責任追及することは困難と考えられます。

逆に言えば、少数派株主として合弁参加する側としては、合弁をはじめる前に、多数派株主たる合弁相手のこの種の横暴を防止すべく
「株式を無断で譲渡することの禁止」
「株式を譲渡する場合における合弁相手側の先買権(First Refusal Right)」
「違反の場合のペナルティ」
等といった措置を、合弁契約においてきっちりと定めるべき、ということになります。

そのような予防措置・自衛措置を怠った場合、残念ながら、マイノリティシェアしか持たない合弁当事者は、
「多数決原理の前では、壊滅的に非力なマイノリティー」
と言うほかなく、自業自得・自己責任・因果応報の理として、多数株式を掌握した合弁当事者が横暴に振る舞い、合弁会社を単独で支配して好き勝手をする事態を指をくわえて見ているほかありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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