00857_日本企業が海外進出に失敗するメカニズム3:海外進出に失敗する企業経営者の頭の中味を分析する

中国進出をやらかして失敗するような中堅中小企業の経営者は、
「目的が未整理で、頭脳が混乱した状態」
で経営判断しているから、ということが原因で愚かなことを仕出かし、悲惨な状況に陥るのだと考えられます。

営利を追求することをメインミッションとする組織である企業の目的設定・経営判断の方向性としては、

1 カネを増やす
2 出て行くカネを減らす
3 時間を節約する
4 手間・労力を節約する

のいずれかに収斂するはずです。

とはいえ、現実的には、
「企業の目的設定・経営判断」
として、

5 (経済的には意味がなくとも)イイカッコをする、世間体や体面を保つ、「すごいですね」「国際企業ですね」とか言われてプライドを充足する、意地を張る、見栄を張る、ナメられないようにする、劣等感を解消する

という、
「経済的には説明できない、というか、合理的理解を超えた、愚劣極まりないもの」
も存在します。

オーナー系中小企業をみていると、本社社屋に、娯楽施設とかフィットネスクラブとか茶室とか業務に関係のない施設も併設されていたりする光景や、社長室が無駄に広く、動物の剥製、著名人とのスナップ写真、有名絵画、高級酒、さらには、銅像や日本刀や兜など、高価というだけで特定の趣味・嗜好・センスが感じられない品々が、一貫性もなく、無秩序に羅列されている光景
に遭遇することがあります。

また、素材メーカーや部品メーカーの企業が、突然、イタリアンレストランやブティックの経営に乗り出し、
「素性のよくわからない、社長と親交のある、妙齢の女性」
が当該子会社のトップに抜擢されたり、ということもたまにあります。

以上を整備するのにカネや時間や労力が相当投入されていますが、当該設備への投資は、
「カネを増やす」
「出て行くカネを減らす」
「時間を節約する」
「手間を節約する」
いずれにも無関係であり、これらいずれの目的への貢献もほぼ皆無です(社内外には、相応の説明がなされますが、いずれの説明も、「東大卒弁護士」風情の頭脳では理解できない複雑怪奇な説明であり、案の定、この種の「理解を超越した難解な」新規事業は、いずれも、短い時間に赤字を積み上げ、無残に撤退しているようです)。

目的が合理的でなかったり、現実的でなかったり、計測不能であったり、タイムラインもいい加減であったり、といったものは、形式上の説明如何にかかわらず、要するに
「イイカッコをする、世間体や体面を保つ、プライドを充足する、意地を張る、見栄を張る、ナメられないようにする、劣等感を解消する」
というのが当該経営判断の実体であると推定されます。

そして、
「中国進出ブームに舞い上がって中国進出をやらかしちゃった経営者」
というのは、冷徹で緻密な計算をし尽くすこともせず、要するに、
「我が社は、トレンドに遅れていないぜ! 最先端の国際ビジネスをやっているぜ!」
という意地やプライドや主観的満足充足のため、頭脳が混乱した状態で、進出した、という蓋然性が高いと思われます。

だからこそ、
「短期間に赤字を積み上げた揚句、撤退を決定したが、出口戦略をまともに描いていなかったため、撤退すらままならず、のたうち回っている」
という悲惨な現状に直面しているのではないでしょうか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです