01159_有事対応フェーズ>法務活動・フェーズ4>不祥事等対応法務(フェーズ4B)>(7)各ステークホルダーの特性に応じた個別対応>訴訟対策その2

4 「雪崩現象」を想定した判決回避

交渉がこじれて訴訟に発展した場合でも、極力裁判上の和解を行う方向で調整する努力を行い、判決が出るのを防ぐことになります。

というのは、敗訴判決が出てしまうと、示談交渉中の他の原告がその判決を盾に交渉姿勢を積極化し、いわゆる
「なだれ現象」
が起こり、一挙に企業崩壊につながる可能性があるからです。

原告団が結成され、組織運営面及び訴訟運営面でも力量のある弁護士が代理人となった場合には、相当警戒が必要になります。

特に、情報収集能力に長けた原告弁護士は、想像以上に事件の核心に追る証拠を有している場合が多く、注意をしなければなりません。

また、事件を担当する裁判官の傾向もこれまでの判決実績から展開を予測することが必要になります。

以上の状況を整理した上で、第一審で全て決着をつける方向で和解に柔軟に対応するのか、とりあえず第一審での判断が出るまで徹底的に争い、和解をするとしたら高裁で行うのか、和解の金額をいくらにするか、和解の付帯条件をどのように構築するか等、様々な考慮の下に訴訟戦略(和解戦略)を策定していくことになります。

5 文書提出命令

企業の訴訟対策として重要なのは、民事訴訟法220条以下に定められる文書提出命令です。

どのような情報を文書に残し、どのような情報を文書に残さず口頭での議論に留めるか、また、文書をどういう形で管理していくか等についても民事訴訟法上の規定解釈に関する実務書や関連判例を精査し、訴訟での状況をにらんで対策をとっておく必要があります。

また、監督行政機関や自治体に提出した文書も情報公開法や情報公開条例による開示対象文書になる可能性もあるので、自社が外部に提出した文書についてのコントロールも必要となってきます。

6 損害論での防御、過失相殺の主張

対被害者訴訟戦略として忘れられがちですが、被害者からの損害賠償請求訴訟において損害論のフィールドでも十全な争いを展開すべきです。

すなわち被害者側主張の損害事実や賠償額について厳しくチェックするとともに、(道義上はともかく)法的には考慮に値しない損害事実についてはその発生を争うべきであり、あいまいな根拠に基づく過大な賠償請求に関しても厳しく根拠を問いただすなり、反論するなりして不当な請求から企業を防御すべきです。

もちろん、損害の発生や拡大に関し、被害者側の落ち度がある場合についても、過失相殺を主張するなど適正な対応を行うことが求められます。

7 株主代表訴訟対策

なお、被害者からの訴訟のほか、経営陣に対しては、株主から
「企業不祥事が発生したのは内部統制システム構築義務違反をはじめとする善管注意義務に違反したからであり、会社に対して損害を賠償せよ」
との株主代表訴訟が提起される場合があります。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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