流通業も再編合理化の大きな嵐が今後吹き荒れることが予想される業界です。
「きちんとした役割や付加価値を提供するわけでもなく、意味もなく流通経路に居座り口銭をはじいているだけの問屋業態」
などは、突然淘汰される危険性が高いと思われます。
「そうは問屋が卸さない」
という諺があります。
江戸時代の服飾流通業界においては、呉服問屋がメーカー(呉服職人)から商品を一手に集め、委託販売形式で小売業者に卸しており、卸売価格の決定権を握ることを通じて、流通支配を行っていました。
したがって、新規参入を考える者が問屋に断りなく店舗を構えようとしても、商品を卸してくれません(現在では「ボイコット行為」として独禁法違反に問われますが)。
このことから、
「相手のある話に関しては、相手がどう考えるかによって変わるので、全てあなたの思うとおりには行かない」
ということを表すものとして、
「そうは問屋が卸さない」
という諺が出来上がったのです。
しかしながら、現在では、小売業者、さらに進んで、消費者に価格決定力がシフトしております。
流通業においては、
「消費者に安くて品質の良いものを、合理的経路で、迅速に届ける」
ということが唯一かつ絶対の正義となっております。
具体的には、小売業者をネットワーク化しこれをコントロールするバイヤーと呼ばれる者が、
「消費者に安くて品質の良いものを迅速に届ける」
という正義を旗印に、卸業者(問屋)さらにはメーカーにまで流通の合理化を要求するようになってきています。
その結果、
「意味もなく流通経路に居座り口銭をはじいているだけの問屋」
はことごとく排除されるようになってきているのです。
今後は、ネット取引の拡大とともに、流通業がますますシビアに整理合理化されていくことになります。
したがって、
「何の特徴もなく、単に特定のメーカーと取引がある、あるいは特定の小売業者の口座を有しているだけで、商品ないし伝票を右から左に流しているだけ」
という類の流通業はある日突然姿を消す可能性が高いといえます。
運営管理コード:YVKSF172TO175
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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