01924_もめごとが起きたとき、相手とケンカをするには、「感情か、勘定か」の根源的二元対立構図からは逃れられないという現実_その2

戦争をするには(物理的有形力を行使した殴り合い、という意味ではなく、言い分をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化して、証拠をくっつけて、事実の真否や、主張の当否を争う、文明的な戦争、という意味です。戦争をおっぱじめる場合もそうですが、「売られたケンカを買う形」で戦争をする場合も含みます)
感情VS勘定
の根源的二元対立構図からは逃れられません。

弁護士(軍事と有事外交の専門家)としては、
「カネをけちりたい、でも、メンツを回復したい」
という気持ちはわからないではありませんが、
「戦争する覚悟も資金もないのに、相手に妙なちょっかいをかけるのは、やめたほうがいい」
という助言することとなります。

メンツを回復できるのは、泥沼化した長期の戦争を戦い抜く覚悟と軍資金を拠出できる人間にのみ与えられた特権です。

ただ、これはあくまで挑戦する権利を意味するだけであり、結果は蓋然性に左右されますので、勝負は最後までわかりません。

以上をふまえると、
「 泥沼化した長期の戦争を戦い抜く覚悟もないし、軍資金を拠出する覚悟もない人間」
は、メンツ云々言わず、縮こまって黙って、泣き寝入りするか際限なき譲歩を受け入れなさい、ということです。

戦いに負けるのは、
「兵糧のない人間」

「陣羽織の汚れを気にする人間」
です。

兵糧のない人間は、戦いに負けます。

というか、戦いを継続出来ず、すぐ負けます。

殴り合いと戦争は、違います。

殴り合いは、腕力、瞬発力で勝負が決まります。

戦争は、戦力で決まります。

そして、戦力は、腕力(瞬発力)のみならず、持続力(戦争を継続する力)、すなわち、経済力が加わった総合力です。

戦力=腕力+経済力(持続を可能とする資源保有力)なのです。

兵糧のない人間は、殴り合いは出来ても、戦争はできません。

だから、兵糧がない人間は、一瞬噛みつくことは出来ても、長期戦になれば、すぐ白旗を上げることになります。

なお、
「兵糧があっても、兵糧をケチる場合」
も負けます。

「ジャングルでゲリラと戦え。ただ、支給したブーツは、高級品だからくれぐれも汚すな」
と言われれば、まともな戦いが出来るわけはありません。

これと似たような指揮命令を下す手合もいます。

「戦争に予算を想定し、予算管理する」
という発想です。

管理云々以前に、戦争に予算を想定した瞬間、その戦争は負けます。

「陣羽織は汚れるわ、家宝の刀や槍は折れるわ、城は燃えるわ、町はなくなるわ、身内は死ぬわ、腕はなくなり、足がなくなる。それでも、やったるわい!」
という人間のうち、さらにその一部の、運と知恵と才能に恵まれた人間だけが、戦いに挑戦する機会と権利を持てる(戦いに勝てる、とは限りませんが、少なくとも、悔いのない戦いが最後まで出来る機会を与えられる)のです。

「お互い、すべてを注ぎ込んで、なりふり構えず、使える資源はすべてを投入して、相手を滅ぼすまでぶちのめす」
という営みに、予算などとケチ臭い考えを持ち込むのは、
「陣羽織を汚さないように戦う」
「ジャングルでゲリラと戦え。ただ、支給したブーツは、高級品だからくれぐれも汚すな」
「試合後のパーティーでの余力を残すことを考えつつ、ボクシングの試合に臨む」
という話と同様、ちょっと、理解できません。

お金を持っていても、チビチビケチりながら、という感じで、中途半端にお茶を濁しつつ相手の出方をみて、資源を段階的に投入して、という戦いのあり方は、兵力の逐次投入、という愚策の見本のような禁忌中の禁忌の戦い方です。

お金をケチりたい、という下手な考えを持つなら、最初から、休んでいた方がいい、譲歩を前提に対話を続けた方がいい、相手の言いなりをある程度受け入れた方がいい、ということです。

「『じゃあ、お金を持っていない人間や、お金をケチりたい人間は、黙ってろ』ということか?」
と言われそうですが、残念ながら、
「はい、正解」
「ご明察」
というほかありません。

まあ、戦いなどという、資源消耗の極致のような営みに関わるのはおよしになれば、という意味です。

1 相手の言いなりになって、泣き寝入りする

も一つの有力な選択肢(金をケチる、金を使わない)です。

そのほかにも、

2 対話を続け、相手の言い分を受け入れる

3 後でするケンカを最初にやっておく(関係構築の前に、不快な展開予測をした上で、剣呑な雰囲気で話し合い、リスクを潰しておく)

4 そもそも、ケンカをするような、やばい相手、アカん人間とは付き合わない
という選択肢もあります。

金持ちケンカせず、といいますが、金持ちは、

1’ やばい相手とは付き合わない

2’ やばい相手と付き合うときも、関係構築の前に、不快な展開予測をした上で、剣呑な雰囲気で話し合い、リスクを潰しておく(そういう話し合いをして、付き合いなければ、そのまま分かれて、去る者を終わない。というのは、お金があれば、いくらでも相手はみつかるから)

3’ ケンカになりそうな、剣呑な雰囲気の対話が始まっても、感情ではなく、勘定で対処し、カネで済ませる

から、そもそもケンカにならないのです。

また、ケンカになってからでも、
「本当の金持ち」
は、陣羽織の汚れを気にすることなく、

4’ ケンカが始まったら始まったで、カネの糸目をつけずに、徹底的に相手を潰すまでカネを投入し続ける

から、ケンカにも圧勝するのです。

残酷ですが、以上が、ケンカや戦争の真実です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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