00058_企業法務ケーススタディ(No.0018):ブラックジャーナリストから取材に名を借りた恐喝を受けた場合の対処方法

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社ナチュラル・イースト 社長 国原 比嘉志(くにはら ひがし、49歳)

相談内容:
鐵丸先生、寒いっすよねぇ。
いや、どうもこうも、参っちゃって。
今日は、いつものようなビジネスや契約の話じゃないんですよ。
こんな恥ずかしい話、先生しか相談できなくて。
いえね、この前、ちょっと魔が差して、17歳の女の子と遊んでたところ、警察に厄介になりまして。
といっても、私自身、彼女がまさか未成年なんて思ってなかったこともあって、先生にお世話にならず、事情聴取だけで釈放されたんですよ。
それで、済んだと思ってたら、昨日、なんか知らないオッサンが、会社の周りうろちょろしてて、いきなり
「国原さんですか」
なんて呼びかけれて名刺渡されたんです。
名刺には、
「独立通信社 ジャーナリスト 馬喰 一徹(ばくろ いってつ)」
なんて肩書が書いてあり、
「この前、逮捕されたそうですが、そのことについてお伺いしたい」
なんて聞いてくる。
とりあえず、
「何のことかわからない」
と言って、あわててオフィスに入り、その日は裏口から帰宅したんですが、今朝、総務部長に外を確認させたら、またオフィスの前にいるらしい。
独立通信社なんて聞いたこともないですが、万が一、こんなことが表沙汰になったら、女性向けの化粧品や健康食品を売っている我が社は、売り上げが激減して、倒産です。
先生、どうしたらいいんでしょうか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:ブラックジャーナリストとは
今回は、いわゆるブラック・ジャーナリスト、すなわち
「本や記事を書いたことはおろか、マスコミに勤めたこともないが、取材活動と称し、相手方に対して、金銭を要求することを生業とする方々」
による
「取材に名を借りた恐喝 行為」
であり、報道の自由に基づく取材でもなんでもありません。
とはいえ、 名刺の肩書に
「ブラックジャーナリスト」
と書いているわけではなく、一見すると普通のジャーナリストそのものであり、彼らによる恐喝行為と適正な取材活動との外形上の区別は困難であり、ここが、難題です。

モデル助言:
そもそも、一番悪いのは国原さんですよ。
いい年して、子供相手に何やってるんですか。
どういう弁解をしたのか知りませんが、逮捕されなかったのが不思議なくらいですよ。
ま、それはさておくとして、
「独立通信社の馬喰一徹」
ですか。
独立通信社なんて聞いたこともないですし、ネットで検索しても出てこない。
こりゃ、
「 取材活動と称し、相手方に対して、金銭を要求することを生業とする人間」
完全にブラックジャーナリストですね。
ちゃちゃっと撃退しちゃいましょ。
私が御社オフィスに出向き、代理人として、堂々と取材に応じましょう。
取材に応じるとはいいつつ、実際には、
「取材の前提として、そちらの素性を確認させてただきたい」
と言って、まず馬喰の素性について私が逆取材をするのです。
まず、本人に録音録画の了解を取り、録音録画を開始。
次に、本人確認という名目で、免許証のコピーを取らせてもらいましょう。
そして、名刺に書いてある株式会社独立通信社が架空の会社でないことの言質を取った上で、その場でインターネット経由で登記簿謄本を取り寄せて確認をはじめます。
さらに、ジャーナリストとしての実績としてどういうものがあるか丁寧にお伺いしましょう。
仮に、執筆した図書や取材についてあれこれ述べだしたら、これらすべてについて、目の前で出版社に電話連絡し、これみよがしに裏付調査を徹底してやりましょう。
少しでもウソが判明したら、その場で厳しく追及し、弁解が破綻した段階で、刑法の偽計業務妨害罪の条文を読み上げるとともに、同罪の成立を声高に宣言し、直ちに110番通報します。
まあ、こういう対応している間に、相手は自主的に退散しますよ。
彼らも、命をかけて不正を追及したいわけではなく、効率よく恐喝したいわけですから。
頭のいい彼らは、
「こちらが面倒くさい相手であり、これ以上かかわるとリスクになる」
とわかれば、自然に手を引くはずですよ 。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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