00059_ブラックジャーナリストの特性と撃退法

ブラックジャーナリストという言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、これは
「本や記事を書いたことはおろか、マスコミに勤めたこともないが、取材活動と称し、相手方に対して、金銭を要求することを生業とする方々」
のことを指します。

たまに、
「公表されるといろいろ都合の悪いことを嗅ぎ回っている」
という理由で、通常の取材活動をしているフリーのジャーナリストを
「ブラックジャーナリスト」
呼ばわりされる方もいますが、こちらは
「ウザいジャーナリスト」
であっても
「ブラックジャーナリスト」
とは異なります。

すなわち、ブラックジャーナリストは
「取材に名を借りた恐喝を行う犯罪者」
であり、報道を目的とした適正な取材活動とは完全に区別されます。

とはいえ、ブラックジャーナリストは、名刺の肩書に
「ブラックジャーナリスト」
と書いているわけではなく、別に額に
「暗黒記者」
と入れ墨をしているわけでもないので、一見すると普通のジャーナリストそのものであり、彼らによる恐喝行為と適正な取材活動との外形上の区別は困難です。

ただ、ブラックジャーナリストは、一般的に、次のような特性を有していることが私の実務経験により明らかになってきています。

・彼らは、一般に、本名を名乗りたがりませんし、身分証明を求められたりするのを嫌がります(恐喝の前科がバレるから)。
・彼らの名刺に記載されている所属する報道機関も住所を手がかかりに商業登記簿謄本を取り寄せようとしても存在しなかったりする(会社を騙っているだけで設立すらしない)。
・彼らの名刺には携帯電話番号しか書いていないし、Eメールは書いていないか、無料メールアドレス(足がつくのはイヤだから)。
・主要著書や執筆記事、その他ジャーナリストとしての実績を問い質しても、答えたがらない(そもそもまともな記事を書いたことがない)。
・録音したり、録画されたり、とにかく自分の活動が記録されるのを嫌がる(自分の活動が証拠として残ってしまうと、また恐喝で刑務所に行く羽目になる)。

ブラックジャーナリストによるエセ取材を撃退するのは、彼らのこういう特性をうまく利用することがポイントになります。

まず、逃げずに、堂々と取材に応じるべきです。できれば、取材対象者本人ではなく、代理人や専門担当部署による対応で差し支えないでしょう。

取材に応じるとはいいつつ、実際には、
「取材の前提として、そちらの素性を確認させてただきたい」
と言って、まず相手の素性について当方が逆取材をするのです。

まず、本人に録音録画の了解を取り、録音録画を開始。

次に、本人確認という名目で、免許証のコピーを取らせてもらいましょう。

そして、名刺に書いてある所属元が架空の会社でないことの言質を取った上で、その場でインターネット経由で登記簿謄本を取り寄せて確認をはじめます。

さらに、ジャーナリストとしての実績としてどういうものがあるか丁寧にお伺いしましょう。

仮に、執筆した図書や取材についてあれこれ述べだしたら、これらすべてについて、目の前で出版社に電話連絡し、これみよがしに裏付調査を徹底してやりましょう。

少しでもウソが判明したら、その場で厳しく追及し、弁解が破綻した段階で、刑法の偽計業務妨害罪の条文を読み上げるとともに、同罪の成立を声高に宣言し、直ちに110番通報します。

まあ、こういう対応している間に、相手は自主的に退散することが多いです。

ブラックジャーナリストたちも、命をかけて不正を追及したいわけではなく、効率よく恐喝したいわけですから。

頭のいい彼らは、
「こちらが面倒くさい相手であり、これ以上かかわるとリスクになる」
とわかれば、自然に手を引くはずであろうと考えられます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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