00127_企業法務ケーススタディ(No.0081):偽りの“限定”“割引”広告

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
三森中央電工株式会社 会長 小島 美幸(こじま みゆき、29歳)

相談内容:
先生ご承知のとおり、当社は、海外のしょぼい健康商品や美容品を見つけて買いつけてきては、テレビやインターネットなどで通信販売していますが、昨年、当社の企画部長が、台湾の会社からなかなか見栄えのいい美顔器具を見つけてきたんです。
海外のよくわかんない大学の先生が特許を取得した秘密の光線を発することで肌を活性化させるという代物なんですが、やってみると結構効果があるんです。
さっそく、健康器具ブームに乗っかって大々的に売り出そうってことで、今年初めに定価4万9800円で売り出したんです。
ところが、これがぜんぜん売れずに、在庫が積み上がる一方でどうしようもない。
そこで、営業の連中に
「あんたらなんとかしなさい。
期末まで在庫残したら承知しないわよ」
ってハッパかけたら、ウマい販売方法を考えてきたんです。
日本人って、「期間限定」とか、「限定何個」ってのに弱いじゃないですか。
そこに目をつけて、
「限定50個をご提供! 早い者勝ち! 今週土曜日までに購入すれば1万円引!」
ってキャッチコピーで販売することにしたんです。
もちろん、商品はたくさんあるから50個超えても販売しちゃうし、ホトボリ冷めたらまた同じように、
「販売再開! 限定50個」
「土曜日までなら安い」 
って具合です。
このキャッチコピーが大当たりして、倉庫で眠っていた商品がまたたくまに売れて、在庫がどんどん減っていきました。
そうやって喜んでいたんですが、昨日、いきなり、消費者庁っていう役所からの通知がきて、このキャッチコピーは景品表示法に違反する行為だから詳しく調べる、とかいって脅すんですよ。
在庫を一挙に掃くか、限定して小出しにするかなんてウチの自由だし、お客さんも商品を安く買えるわけだから、何の問題もないじゃないですか。
こんなの、嫌がらせですよ、まったく。
先生、とっとと追い返してください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:景品表示法
景品表示法とは、正式には不当景品類及び不当表示防止法といいます。
消費者は、商品を購入するにあたり、より質の高いもの、より価格の安いものを求めますし、商品を販売する事業者等はそのような消費者の期待に応えるため、他の事業者の商品よりも質を向上させ、また、より安く販売する努力をし、このような過程を通じて市場経済が発展していきます。
ところが、品質や価格などに関して、誇大な広告や過大な景品類の提供が行われるようになると、消費者が誇大な広告に惑わされたり、商品を選択する際に商品の品質ではなく景品の善しあしに左右されるようになり、その結果、質が良く安い商品を選ぼうとする消費者の適正な選択に悪影響を与えてしまい、本来あるべき
「商品の価格と品質による競争」
がなくなってしまいます。
そこで、公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護することを目的として景品表示法が制定されたのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:有利誤認表示
以上のような趣旨で定められた景品表示法ですが、第4条第1項第2号において
「実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものであって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる広告」
等を禁止しています。
具体的には、商品・サービスの取引条件、購入方法などについて、実際よりも顧客にとって有利であると偽って宣伝したりする行為、例えば、過去に定価で販売したことがないにも関わらず、広告などで
「今なら通常価格から1000円引!」
などと表示する行為が
「有利誤認表示」
に該当することになります。
消費者庁(かつての所管官庁であった公正取引委員会から平成21年9月1日付で消費者庁に移管されました)から、当該
「有利誤認表示」
行為の排除命令がなされ、命令の公表等を通じて対消費者イメージが急激に悪化してしまう場合があります。

モデル助言: 
ま、おっしゃるとおり、在庫をどのように切り取って売るかは企業の経営判断ですし、お客さんに対しても定価以下の割引販売なので、一見すると損がないように思える。
しかしながら、実際50個を超えても販売しているにもかかわらず限定50個と謳って販売するのは、価格と品質以外の
「飢餓感」
という要素を不当に誇張して消費者の選択を誤らせるものですし、当初から50個以上であっても売るつもりであれば宣伝文句自体虚偽といわれても仕方ないですね。
また、恒常的に
「1万円引き」
で販売しているなら、最初から
「1万円引きの値段」
を表示すればよいわけで、恣意的に実績のない定価を提示してそこからの値引きを不当に誇張するのは、
「お客さんに虚偽のお得感」
を与えているともいえます。
ま、争ってもいいですが、争えば争うほど、消費者がドン引きするだけで、強気は愚の骨頂です。
一応争う姿勢を見せつつ、
「規制の基準の公表がなかったので問題ないだろうと早合点したが、今後はご指導を得て慎むので、寛恕されたし」
と平伏し、注意・警告で静かに幕引きさせるのが一番でしょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです