00198_企業法務ケーススタディ(No.0153):行き過ぎたエコ表示へのおとがめ

相談者プロフィール:
チャラ・ビューティー株式会社 代表取締役 茶良 慎吾(ちゃら しんご、29歳)

相談内容: 
せ~んせ~い!
ご無沙汰してます。
本日は、新商品の相談に来ましたよっと。
これまで、いろんなものを売ってきたけど、今はエコに敏感なギャル向けにターゲットを絞った美顔器、『チャラ・ビューティー・スーパー・エコ』を発売したところ、売れに売れちゃっております!
チャラ男です!
この美顔器、
「リサイクル材を活用」
とかうたってて二酸化炭素排出削減率50%って表示してるんだけど、実際は、研究部門から
「そこまでは達成できてないかもしんない」
なんて報告が上がってきちゃって。
いやぁ、最近は若者もエコ意識が高くて、ある意味ファッション化してるんだよ。
それで、
「ギャルとエコ」
なんて斬新な組み合わせのこの商品はバカ売れしたってわけ。
何か問題でもあるんですかって?
いやぁ、俺としては全くないと思ってるんだけど、なんだっけ、急に先週、公正取引委員会とかいうところから連絡があってさ、
「おたくの商品の広告表示に関して少しうかがいたい」
なんていってきたってわけ。
不安だからさ、いったい何のことだろうって、社内でさっそく緊急対策本部立ち上げて調査したら、どうやら
「エコ表示」
がちょっとヤバいっぽいんだって。
キツイねー。
先生、これってどれくらいやばいことなのかな?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:景品表示法とは
企業のコンシューマーセールス(消費者向営業活動)を規制するものとして、消費者を誤認させるような不当な商品表示や射幸心を煽るような過大な景品類の提供に対しては、これらを禁止する目的で定められた不当景品類及び不当表示防止法(景表法)の規制が及びます。
顧客誘引に力を入れなくても十分なブランド力がある企業等は、これまで景表法など意識すらしなかったと思われます。
しかし、最近では、個人消費が冷え込み、また業界再編の波を受けて企業間競争も活発になり、積極的に顧客誘引を行おうとした結果、大企業でも景表法に抵触してしまう、という事例が出てきています。
景表法違反の措置としては、排除措置命令(同法6条)を受け、カタログやチラシやポスターの回収等が命じられる場合がありますし、さらに、当該措置命令に違反した場合、刑事罰が科されることまで想定しておかなくてはなりません。
何よりも同法違反によって消費者に対する信用がダメージを受け、売り上げの低迷や株価の低下を招く、といった事業への悪影響が生じます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:優良誤認について
同法第4条第1項第1号は、事業者が、商品やサービスに関して、その品質・規格その他の内容について、一般消費者に対し、
1 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
2 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって、不当に顧客を誘引する等のおそれがあると認められる表示を禁止しています。
具体的には,商品等の品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争相手よりあたかも優れているかのように偽って宣伝したりする行為が該当します(2009年4月20日には過大なエコ表示に関して大手家電メーカーに対して排除措置命令が出されました)。
そしてこの規制は、故意に偽った場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、優良誤認と外形的に認められる場合には、同法の規制を受けるため、十分な注意が必要です。
この規制に該当すると上記排除措置命令が出されることが一般ですが、そのための調査として、消費者庁長官(実際には委任を受けた公正取引委員会)が、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めてきます。
そして、この提出に応じないとか、十分な資料が提出できないなどということになると、
「不当表示」
とみなされてしまう、という仕組みを有しています。

モデル助言: 
このような法律の仕組みになっていますから、公取の調査を無視するなんて手法は取り得ません。
そんなことしたら、
「不当表示」
と決めつけられた上、排除措置命令が出されて
「我が社は嘘をついていました。
ごめんなさい!」
という表示を義務付けられるなど公開羞恥プレーをさせられます。
企業の信用など一挙に吹き飛んでしまいますよ。
そこで、指導勧告で本件を終わらせることが目標になります。
そのためには不当表示と決めつけられないように真摯に対応すべきことは基本ですね。
そして、法が規制しているのは
「著しく」
優良である旨の表示ですから、
「著しくはない」
ということはしっかりと主張していかなくてはなりません。
現在のところ、どれほどデータとかけ離れた表示がなされていたかは不明確なままですよね?
研究部門の実験データ等全部洗いなおして、表示とデータとの間にどれくらいの乖離があるのかを分析し、それが一般消費者に大きな影響を与えないことを論理的に説明しなくてはいけません。
その上で、説得的に再発防止策を論じた報告書を提出することで、なんとか排除措置命令を避ける方向で、全力を尽くしていきましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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