今どきの契約書において、カネを払う側は、取引相手を
「信頼に足り得る取引先」
としてではなく、
「契約書で縛っておかないと、あらゆる悪さをする危険のある、信頼できない奴」
としたうえで、性悪説に立った契約書を取り交わし、厳格な法的管理を実行することがトレンドです。
「先生、信頼に足る適正な関係を構築するために必要な、関係構築哲学とはどのようなものでしょうか?」
こんな問いに対して、私は、こう答えています。
「とことん相手を信頼しない前提で関係構築すること。それが、信頼に足る正しい関係を構築する前提思想」
と。
相手を、とことん信頼せず、信頼を裏切る行動に出たら即座にかつ徹底的に当該行動に対する代償を払わせるような契約条項を考案しておけば、取引相手も諸事、自重し、慎重に丁寧な行動を心がけ、ナメた行動をしなくなり、甘えた考えをもたなくなります。
結果、相手は、やましい心をもたなくなり、真面目に、誠実に、契約履行を心がけ、双方にとって歓迎すべき帰結を迎えることができます。
厳しい契約で、利益を得るのは、カネを払って商品や役務を受け取る側もそうですが、適切な自己規律で、正しく義務を果たすことで、トラブルの種を自主的に排除できた相手方も同様です。
ところが、細かいスペックや期限、義務不履行の際のリカバリースキームやペナルティを取り決めていくと、たまに、これを忌避する相手がいます。
本来遵守して当然の契約条項を
「そんなの厳しいからヤだ」
とか言って忌避するような契約相手のスタンスは、
「モレやヌケがあったり、チョンボやズルをしても文句を言わないでくれ」
というのを求めているのと同義です。
こんなヤツとは、付き合わないか、契約を解消し、
「約束した以上、命をかけても、契約を履行するし、できなかったら、いかなる制裁も甘受する」
ということを宣言できる、信頼に足る別の契約相手を探した方がいいということになります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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