00303_「ファンド協力・支援型MBO」の実体とリスク

MBOとは、マネジメント・バイアウト(Management Buyout)の略です。

英語で表現すると、何だか、物すごく斬新で高尚なことをやっているように思われがちですが、日本で昔からある
「暖簾(のれん)分け」
のようなもので、要するに雇われ社長がオーナーから株を譲ってもらって独立するという話です。

中小零細の非公開企業であれば、簡単に実施できるのですが、上場企業(株式公開企業)の場合、厄介で面倒です。

すなわち、MBOは、社長をはじめとした経営陣が、会社のオーナーである株主から株式を買い受けることにより行われますが、金融商品取引法上、一定割合の株式を買い集めるにはTOBの方法によらなければなりません。

このTOB価格をいくらにするかは重要な問題で、あまり安い価格でTOBをやろうとすると、ライバル会社や抜け目のないファンド筋からカウンターTOBを仕掛けられる可能性があります。

加えて、高値で購入した株主がTOBに応じず、MBO実施後の最終的な追い出し(スクイーズアウト)の場面でグズグズ言い出し、買取価格を巡る訴訟トラブルに発展する場合もあります。

さらに大きな問題は、MBOで株式を買い受ける場合、会社の経営陣に株式を買い受けるだけの財力がなくファンドの力を借りないとMBOができない、ということです。

もちろん、ファンド(実際には、ファンドを組成し、運営を取り仕切る金融機関)は、MBO実施までは、
「経営の自由度が増す」
「上場維持にまつわるさまざまな負担からの解放」
等、経営陣に上場廃止後のバラ色の未来を語ります。

ですが、上場を廃止し、会社の株式の大半をMBOファンドが掌握した瞬間、事情は一変します。

新しくオーナーとなった
「金と数字にシビアな投資家連中」
は、経営陣に対し
「『経営の自由度が増す』といってもあくまで一定の経営成果を出した上での話であり、ファンドの意向を無視して好き勝手できるわけではない」
ということを言い始めるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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