00319_一生懸命、廉売(安売り)したら、なぜ公取委に怒られるのか?

一般に、安売りは競争を活発化させ国民の実質的所得の向上に貢献しますし、何より消費者にとってメリットがありますので、公取委からホメられてもいいような話です。

ところが、過激な安売りをすると、当該事業者は、不当廉売したという理由で、いきなり公取委から文句をいわれることがあります。

「ホメられてもいいはずの安売りをしたら、なぜ、公取委に怒られるのか、ワケがわからない」
という安売り事業者の気持ちも理解できます。

しかしながら、一時的に損失が出ることを覚悟で体力にモノをいわせて原価割れ販売等が行われた場合、対抗する気も失せたライバルは、そこに踏みとどまって勝負せず市場から退出していくことになります。

そうなると、競争が活発化するどころか将来的には競争はなくなってしまいます。

そして、ライバル全員を市場から追い出した後、
「体力勝負の原価割れ販売を続けて生き残った事業者」
は、今度は高い価格で商品販売して、原価割れ販売によって被った一時的な損失を容易に取り返すことができます。

このように、競争自体はいいとしても、
「行き過ぎた」
安売り行為は、独占禁止法の意図する
「効率性に基づく競争(能率競争。価格と品質に基づく競争)」
ではなく、
「資本力・体力勝負の競争(零細業者を根絶やしにするための暴力的イジメ)」
を助長することにつながりかねません。

このようなことから、独占禁止法上、
「正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、その他不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある行為 」(不当廉売) 
は、違法とされているのです(一般指定6項)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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