00321_企業の集まり(事業者団体)を独占禁止法が目の敵にする理由と背景

憲法では、集会・結社の自由が人権として保障されていますが、企業が集まる場合、
「経済活動の憲法」
たる
「独占禁止法」
は、保障しているどころか、あまり快く思わず、むしろ、目の敵にしているような状況です。

例えば、ある事業者団体が、
「製造・販売業者の団体が製品の安全確保のため、自主的に厳しい安全基準を課す」
として、高圧的な自主基準を定めて基準を守れない部外者を排除するようなことをやりだした場合、建前としては一見聞こえはいいですが、
「団体の意向に沿わない製品の駆逐行為」
という反競争的な意図が透けてみえます。

このような自主規制の名を借りた弱い者イジメは、独占禁止法違反の問題が生じます。

独占禁止法は、
「経済活動の憲法」
とも呼ばれ、企業の営業・販売活動の法務に関わる重要な法令ですが、規制の対象は企業だけではありません。

すなわち、企業の集まり(独占禁止法では、「事業者団体」といいます)についても、独占禁止法の規制が及びます。

独占禁止法上の
「事業者団体」
とは
「事業者としての共通の利益を増進することを主な目的とする複数の事業者の結合体」
ですが、特に、登記や登録等がなくとも、任意組合や、単なる寄り合い所帯もこれに該当します。

「この種の団体は反競争行為の温床となる可能性が高い」
という認識を前提に、このような隠れ蓑を通じた独禁法違反行為も厳しく取り締まるというのが規則の趣旨のようです。

独禁法は、このように、性悪説に立って 企業のやることなすこと、全て悪意に解して、悪さを企図・計画するはるか手前の段階で
「釘を刺す」
ような規制をします。

それほど邪悪な思考をしない企業にとっては、いい迷惑ですが、特に独禁法の祖国アメリカでは、企業がやりたい放題やって社会に悪影響を与えた歴史上の事実があったことから、
「ちょっとヤリ過ぎと思われるくらい、“ド手前”からシメといて、ちょうどいい加減になる」
という規制スタンスに立っているのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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