00367_国や独立行政法人と取引する企業が、ある日、突然、会計検査院に乗り込まれるリスク

日本国憲法第90条は
「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」
と規定しており、これを受けた会計検査院法第20条は
「会計検査院は、日本国憲法第90条の規定により国の収入支出の決算の検査を行うほか、法律に定める会計の検査を行う」
と規定しています。

このように、国の会計が会計検査院検査の対象となるのはもちろんですが、会計検査院法は、会計検査院が必要と認めるときには、
「国が直接又は間接に補助金、奨励金、助成金等を交付し又は貸付金、損失補償等の財政援助を与えているものの会計(例:日本放送協会の会計)」
「国が資本金の一部を出資しているものの会計(例:日本郵政株式会社の会計)」
なども検査ができる旨を定めています。

さらに、2005(平成17)年の会計検査院法の改正で、
「国もしくは国が資本金の二分の一以上を出資している法人の工事その他の役務の請負人もしくは事務もしくは業務の受託者又は国等に対する物品の納入者のその契約に関する会計」、
すなわち、国などに対し、業務サービスなどを提供する業者や、備品などを納入する業者などの会計内容に対しても検査を行えるようになりました。

前記改正により、会計検査院の検査は、官庁などに出入りする文具品などの納入業者らにも及ぶこととなり、会計検査にとっては検査遂行上、大きな武器を手に入れることになりました。

会計検査院は、会計検査院法に基づき、会計検査院の検査を受けるものに対し、帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出を求めたり、関係者に質問したり、出頭を求めることができますし、必要な場合には会計検査院の職員を派遣して、実地検査をすることもできます。

会計検査院の検査を受けるものは、このような検査に対し、
「これに応じなければならない(会計検査院法25条、26条)」
とされいます。

しかし、会計検査院は捜査機関ではありませんので、捜索や差押さえといった強制捜査はできません。

また、検査に従わなかったとしても罰則が課されるわけではありませんので、不必要な検査や過剰な検査に関しては、きちんとした理由を述べてお断りすることも不可能ではありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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