00385_譲受しようとした債権に譲渡禁止特約がついていた場合の取扱テクニック

債権譲渡禁止特約とは、通常、債権者と債務者との間の契約で、(債務者の承諾なしに)債権を譲渡してもその効力を認めないものとすることをいいます。

具体的には、
「もとの債権者」

「債務者」
との間で
「売掛債権は譲渡できないものとする」
と約束すると、
「もとの債権者」
は第三者に売掛債権を譲渡できなくなります。

その結果、
「債務者」
から承諾のないまま
「もとの債権者」
との間で売掛債権を譲り受ける約束をしても、
「新しい債権者」(債権の譲受人)
は当該売掛債権を取得することができないことになります(譲渡禁止特約の物権的効力)。

なお、取引基本契約書とは、当事者の間で個々に行われる取引に共通して適用される約束事を定めたもので、
「債務者」
が示した取引基本契約の対象に含まれる限り、同社と
「もとの債権者」
との間の個々の取引に適用されることになります。

しかしながら、民法466条1項は
「債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない」
として、原則として、債権は自由に譲り渡すことができる旨宣言しています。

これは
「信用流通を高め、金融資本主義を発展させるためにも債権は自由に譲渡されるべき」
というわけです(債権の自由譲渡性)。

そして、譲渡禁止特約の効力を定める同条2項は、その但書において、
「(譲渡禁止特約は)善意の第三者に対抗することができない」
と規定し、譲受人(新しい債権者)が
「譲渡禁止特約の存在」
を知らなかったのであれば譲渡は有効になるとしました。

この点については、かつ
「譲渡禁止特約の存在を知らなかった(善意)としても、知らなかったことに過失があれば、やはり債権譲渡は無効」
という議論もありましたが、通常の過失を超えた重大な過失のない限り、善意の譲受人は当該債権を取得することができるというのが裁判の趨勢です。 

債権の自由譲渡性という原則を重んじ、譲受人の保護を重視しているものといえるでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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