00400_株式会社であっても特定商取引法によって保護されるケースがある

私的自治原則のもとでは、当事者間でどのような契約を締結しても自由なのが原則ですし、当事者は、自分たちの自由意思で締結した以上、その契約に拘束されます。

したがって、一旦契約をした以上、当事者の一方が
「やっぱり、あの契約はナシにするね」
などと、一方的に契約を破棄することは許されないのが大原則です(契約の拘束力)。

しかし、この大原則に例外がないと、情報量や交渉力に勝る者が、劣る者を食い物とする構図が是正されることなく放置されることになるため、消費者を保護するさまざまな法律が制定されています。

これらの法律は、
「情報量や交渉力に劣る者を保護する」
ことを目的としているため、保護される客体としては、
「個人」
が予定されているのが通例であり、
「個人」
であっても、
「営業」
のために契約をしているのであれば、情報量や交渉力も人並み以上にあるだろうとのことで、保護の対象からは外れているのが通例です。

ところで、特定商取引に関する法律(特商法)は、訪問販売を規制しており、クーリングオフができる旨記載した書面を受領した日から起算して8日以内であれば、一方的に契約を解除(クーリングオフ)できると定めています。

とはいえ、特商法26条1項1号は、
「営業のために若しくは営業として」
締結した契約については、そもそも訪問販売の規制が及ばず、クーリングオフはできないと定めています。

個人ではなく法律上
「商人」
とみなされる株式会社が当事者の場合、商人の行為は商行為とされることから、株式会社が買主として訪問販売を受けた場合、当該売買契約は
「営業のために若しくは営業として」
締結されたものとも言えそうで、クーリングオフは無理となりそうです。

ところが、大阪高裁平成15年7月30日判決は、本件と同様の事案につき、
「(特商法26条1項1号は、)商行為に該当する販売または役務の提供であっても、申し込みをした者、購入者若しくは役務の提供を受ける者にとって、営業のために若しくは営業として締結するものでない販売又は役務の提供は、除外事由としない趣旨である」
「各種自動車の販売、修理及びそれに付随するサービス等を業とする会社であって、消火器を営業の対象とする会社ではないから、消火器薬剤充填整備等の実施契約が営業のため若しくは営業として締結されたということはできない」
と述べて、消火器薬剤の交換を訪問販売で契約してしまった会社がクーリングオフをすることを認めました。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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