00415_採用内定を取消す場合の手続き

「人を雇う」
という契約は、いったん成立すると、解消は大変困難です。

雇用と婚姻とは取引としては酷似しており、
「結婚は簡単だが、離婚は大変」
なのと同様、
「採用は安易にできるが、採用した人間を辞めさせるのは極めてハードルが高い」
といえます。

すなわち、解雇は
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法16条)
とされていますが、労働者がよほどのこと、それこそ横領・背任等の犯罪行為やこれに準じるような非違行為でもやらかさない限り、要件の充足は困難と考えられています。

では、
「採用内定を出したが、やっぱ気に入らないから、採用やーんぺ!」
としたい場合はどうでしょうか。

結婚になぞらえると、
「婚約したが、やっぱり婚約解消します」
ということになりますが、これもカンタンに解消できる、というものではなく、それなりに苦労が待ち構えています。

そもそも採用内定の法的性質はどういうものでしょうか?

一般に、採用内定とは
「始期付解約権留保付労働契約」
といわれます。

なんだか、難解な漢文みたいですので、カンタンな日本語に翻訳しますと、
「一応ちゃんとした契約なんだけど、開始時期が4月になっていて、企業側にキャンセルする権利が保持されている、そんな感じの契約」
というものです。

解約権留保付契約、すなわち航空券の予約の様に
「3日前までキャンセルしてもOK」
みたいな契約になっているので、字義通り解釈すると、企業は、
「気が変わったから、やっぱ採用や~んぺ!」
といえそうな感じがします。

しかしながら、最高裁は、採用内定の取消事由は
「採用内定当時知ることができないような事実で、かつ、客観的に合理的と認められ社会通念上相当なものに限られる」
と判断しました(昭和54年7月20日最高裁判決『大日本印刷事件』)。

すなわち、始期や解約権が付いているといっても労働契約には変わりないので、なんでもかんでもキャンセルできるというものではなく、解雇権濫用法理によって厳しく合法性が判断されることになるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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