00445_買おうとする土地が「農地」だった場合の対処法

私的自治の下では、私人同士、自らの所有する財産を自由に交換して、それぞれの経済的な合理性を追求することができるのが大原則です。

土地という財産についても、私人は自由に売買の対象とすることができるのが原則であり、当事者間で
「売った」
「買った」
との意思が合致すれば、所有権が移転するはずです。

ところが、農地法は、この大原則を大きく修正しています。

不動産登記上
「田」「畑」
とされているものや、判例上は、不動産登記にかかわらず、現に耕作されている土地等は農地法上の
「農地」
とされて、自由な売買や賃貸借、さらには、農地から宅地への転用等が規制されています。

農地法は、第2次世界大戦後に行われたいわゆる
「農地解放」
により、大地主から小作農らに対して格安で農地が売り渡された後、再度農地が大地主に戻ることがないように、
「耕作者自らによる農地の所有」(農地法1条)
を目的として制定されました。

農地法は、土地を所有して他人に耕作させる大地主ではなく、
「汗水たらして実際に耕作する農民」
に農地を所有させて、
「耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図」(同条)
ろうとしているのです。

農地法3条は、農地について所有権を移転したり、賃貸借をする場合には、原則として、農業委員会という、各市町村に置かれる行政委員会の許可を受けなければならないと規定しています。

そして、農地法は、所有権や賃借権を手に入れようとする者が、
「農作業に常時従事する者」でない場合や、
「農業生産法人」以外の法人である場合には、
農業委員会は、許可を出すことができないと定めています。

つまり、農地法は、
「自分で真剣に耕作をする者以外が農地の所有権や賃借権を取得することはまかりならん、気合の入った者だけが、農地に関する権利を手に入れることができるのだ」
としているのです。

そして、農地法は、当事者間で農地の売買や賃貸借契約が締結されたとしても、農業委員会の許可がない限り、
「その効力を生じない」(3条7項)
と規定しており、当事者間の意思の合致(売ります、買います)があったとしても、売買契約が効力を発しないという、強力な規制を行っています。

さらに、農地法64条1号は、農業委員会の許可なく勝手に所有権を移転したり、賃借権を設定した場合には、
「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」
という刑事罰まで用意しているので、注意が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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