00471_商標権取引の具体的方法

「商標」とは、
商品を購入しようとする人やサービスを受けようとする人に対し、
その商品・サービスを「誰」が提供しているのかをはっきりさせるために、
業として当該商品やサービスなどに付けるマーク(文字、図形、記号、形状など)
をいいます。

このような商標について第三者が勝手に利用すると、商標権者の信用を害するばかりか、その商標を信頼して購入した者の利益も害することになりますので、商標は法律によって保護されています。

すなわち、商標を取得しようとする者は、特許庁に対して、商標の登録の手続きを行い、当該商標を用いることができるのは商標権者のみということになるのです。

さて、消費者からすると、著名な商標が記載されていた場合には、深く考えることもなく
「あの会社が作っているのだから大丈夫だ」
などと一定の品質を期待しますので、商標には、
「信用」
が化体されているともいえます。

そして、このような
「信用」
は経済社会では金銭的な評価が可能です。

いわゆる
「ブランド」
としての価値の一端を担うことになり、取引可能な財産権としての価値を有しています。

それでは、このような財産的価値を有する
「商標権」
どのようにして移転するのでしょうか。

財産権である以上、差し押さえや売買契約の対象になることはもちろんですが、売買契約を締結したり、登録証の引き渡しを受けただけでは、誰に対しても
「今日からは俺の商標だ」
と主張することはできません。

これは、前述したように、商標という権利が
「登録」
によって生じる目に見えない権利であるため、
「一体誰の権利なのか」
が、常に世間に公示されている必要があるためです。

したがって、譲渡等により商標権を取得したことを主張しようとする者は、特許庁において、移転登録手続きを経なければならないということになります。

要するに商標権では、
「誰が所有しているのか」
を証明する1つの手段として登録制度が採られているわけです。

このことは、
「占有」
の事実によって、
「所有権者は誰か」
が比較的目に見えやすい時計や宝石等の動産に関しては、このような制度が不要なことから理解されます。

さらに検討してみますと、不動産に関しては
「登記」
が必要なことはよく知られていますが、これは
「占有していても賃借人としてであり、所有者ではない」
という社会的事実が比較的多くみられ、所有者と占有者の分離現象が生じているために、登記制度によってフォローしようとしている、と考えることができます。

たまに、
商標の「登録証」なる立派そうに見える証書
を売主等(担保を設定する債務者)から取り上げただけで、商標はこれで確実に自分の手許に確保できた、という誤信をする
「素人さん」
がいらっしゃいますが、この
「登録証」
は、
その時期に商標として登録されたことがあったという証明にはなっても、登録証保持者が現在商標を所有していることの証明にはなりません。

現在商標を登録している社ないし者と協力して移転登録手続きをしないと商標が確実に手許に確保されたことにはなりません。

特に、金融の担保や債権回収の一環として行う場合、二重に譲渡されたりする可能性もあり、極めて面倒な事になるので、上記手続きは譲渡の話が浮上したらすぐさま準備・実行をする必要があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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