00474_就業中に従業員が死傷した場合の企業としてのリスク:安全配慮義務違反

雇用契約というものは、労働力の提供とこれに対する賃金を支払うことを内容とする契約ですが、労働者と使用者の関係は、売買の場合の売り主と買い主のように、ある程度、継続するものなので、単純に
「労働力を提供する」
「賃金を支払う」
というだけの関係で終わるものではありません。

例えば、使用者は、従業員が安全に労働できるような諸条件を整えたりしなければならないのです。

この点、雇用契約について定める民法には、特に規定はありませんが、判例は、古くから使用者に課せられる安全配慮義務というものを認めてきました。

例えば、最高裁判所1984年4月10日判決は、宿直勤務中の従業員が侵入してきた強盗に殺害された事故について、
「会社が、夜間においても、その社屋に高価な反物、毛皮等を多数開放的に陳列保管していながら、右社屋の夜間出入口にのぞき窓やインターホンを設けていないため、(中略)そのため来訪者が無理に押し入ることができる状態となり、盗賊が侵入して宿直員に危害を加えることのあるのを予見しえたにもかかわらず、のぞき窓、インターホン、防犯チェーン等の盗賊防止のための物的設備を施さず、また、宿直員を新入社員1人としないで適宜増員するなどの措置を講じなかった場合において、宿直勤務の従業員がその勤務中にくぐり戸から押し入った盗賊に殺害されたときは、会社は、右事故につき、安全配慮義務に違背したものとして損害賠償責任を負う」
と判断し、従業員の死亡についての責任を負わせています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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