会社法では、会社分割のうち、既存の会社が、新たに設立される会社に、事業に関する権利義務を包括的に承継させる制度を
「新設分割」
と規定しています。
新設分割にあたり、旧会社は、新会社に対し、資産や負債の一部を承継させ、新会社から、資産に見合った株式を譲り受けます。
その際、承継させる負債は、旧会社の選択によって、旧会社に残る債権者と、新会社に移る債権者とに振り分けられ、好調な事業は新会社に承継させ、不振事業は旧会社に残すという振り分け方も可能になります。
しかし、旧会社には目ぼしい資産や有望な事業は残っておらず、対価として取得したのが換価可能性がほとんどない株式(非上場で譲渡制限が付いている)であれば、抜け殻状態の旧会社にしか請求できない旧会社の債権者が自己の債権の満足を図ることは困難です。
会社分割を行う上では、異議を述べた債権者が弁済や担保提供を受けられる債権者保護手続きが必要な場合があります。
しかし、前述のような旧会社の債権者は、新設分割後も、旧会社に対し、債務の履行を求めることができるため、債権者保護手続きの対象ではなく、異議を述べる機会はありません(会社法810条1項2号)。
このように、抜け殻方式による会社分割は、旧会社に残った債権者にとって、濫用的なものとなるのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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